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日本文学研究者のキーンさん 恩師・角田柳作の思い出、業績語る 高崎

上毛新聞 10/17(月) 6:00配信

◎愛された「センセイ」

 日本文学研究者のドナルド・キーンさん(94)が16日、群馬県高崎市保渡田町の県立土屋文明記念文学館で講演した。津久田村(現渋川市)出身の角田柳作(1877~1964年)から米コロンビア大で教えを受け、多くの著作、翻訳を通して日本文学を世界に広めたキーンさん。「先生」と題し、時折ユーモアを交えながら角田の業績や思い出を語った。

 キーンさんが最初に触れた日本文学は18歳のときにニューヨークの書店で購入した英訳の「源氏物語」だった。「買った理由は非常に安かったから」と来場者を笑わせたが、「最初のページから素晴らしく、原文を読みたいと思った」という。

 コロンビア大の先輩から角田のクラスで学ぶよう勧められ、研究室を訪ねたところ、生徒は他におらず、1人だけだった。「何も知らない私だけのために貴重な時間を費やすことはないと考え、『やめましょう』と言ったが、先生は『1人の学生で十分です』と返事なさった。その言葉に感激した」と振り返った。日本人と山、川との関係などについて講義した角田について、「私のために毎週準備してくれたに違いない。年とともに先生への感謝が多くなっていく」としみじみ語った。

 太平洋戦争中、敵性外国人として抑留された角田が、裁判で自身の米国に対する義務を立派に述べたため、裁判長が深い感銘を受け、「あなたは詩人です」と言ってすぐに釈放したエピソードも紹介した。

 「学生たちは例外なしに角田先生を愛し、他の先生は何々先生と呼んだが、角田先生はただ、『センセイ』だった」と結んだ。

 講演は同館の開館20周年を記念した企画展「角田柳作とドナルド・キーン 群馬から世界へ」の一環。約250人がキーンさんの語る「角田像」に聞き入った。キーンさんの著作集の編集を担当している新潮社編集委員の堤伸輔さんとの対談も行われ、三島由紀夫や安部公房ら、キーンさんがこれまで出会った作家の作品について語った。

角田柳作

 1877(明治10)年1月生まれ。東京専門学校(現早稲田大)文学科卒。1903~09年福島県立福島中学校と宮城県立仙台第一中学校で英語と修身を教える。09年本願寺ハワイ中学校長。17年にニューヨークに移り、28年コロンビア大に「日本文化研究所」を設立。60年勲三等瑞宝章。62年コロンビア大から名誉文学博士号。64年11月、ハワイ・ホノルルで急性肺炎のため87歳で死去。

最終更新:10/17(月) 6:00

上毛新聞