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非常時に電車を素早く止めろ! 在来線で縮めた大きな“4秒” -JR東日本の挑戦

日刊工業新聞電子版 10/17(月) 13:45配信

在来線運行リスク軽減

 JR東日本は、2011年3月11日に発生した東日本大震災で沿岸の路線を中心に大きな被害を受けた。現在も運転再開ができない路線がある中で、地上設備や構造物の耐震化など、地震対策に取り組んできた。多岐にわたる地震対策の取り組みの一つに、在来線における地震観測値の高速伝送化がある。地震を素早く把握して列車の運行を止めることで、被害を最小限にとどめるなど、震災から得た教訓を生かす。

■運転士が判断
 震災前、JR東日本の在来線における地震観測は、地震計と雨量計、風速計の観測値を、同一のアナログ回線で伝送するシステムとなっていた。複数のデータを同一回線で送信していたため、地震発生後、防災情報システムを経て、列車にデータが伝送されるまでの所要時間は、約5秒かかっていた。

 在来線はATS(自動列車停止装置)により、列車が停止信号に接近すると、列車を自動的に停止させる仕組みになっている。しかし、発車や停止、速度の調整などは基本的に運転士が判断し、操作しており、ここが新幹線との大きな違いとなっている。このような在来線の仕組みにより、地震発生から列車が停止するまでのタイムラグを縮めるには、伝送の時間を縮める必要があった。

地震計の専用回線化

 JR東日本は、震災を受け、このタイムラグを縮小すべく、伝送方法の検討に着手。この結果、複数のデータを伝送している回線から、地震計を取り出して専用回線化し、さらに回線そのものをアナログから、光ケーブルにすることで、高速化した。これにより、伝送にかかる時間を、従来の5秒から1秒台に短縮した。

 短縮したと言っても、その差はわずか4秒だ。素人目には効果が分かりにくいが、列車は時速80キロメートルで走行していた場合、5秒もあれば、数十メートル進んでしまう。岡本直樹電気ネットワーク部副課長は「運行の安全上、数十メートルの停止距離の短縮は非常に大きく、脱線などのリスクを軽減できる」と話す。

 JR東日本は、管内196カ所に地震計の専用回線の設置する計画で工事を進めている。15年2月までに東京、千葉、埼玉を含む、南関東エリアの58カ所に施工を終えており、利用者が多い都心では、すでに1秒台での伝送を実現している。残り138カ所を18年3月までに設置する計画で、コストは約18億円となる見込みだ。

■バッテリー増強
 このほか東日本大震災では、広範囲で長時間にわたって停電が発生し、通信設備が使用不可能となったことで、列車の運行に支障が出た。こうした反省に立ち、地震計の専用ネットワーク構築と合わせて、通信機器室のバッテリーの増強も図っている。震災前は約8時間だったバッテリーの使用可能時間を、6倍となる48時間に拡大した。

 JR東日本は、地震計による観測値の高速伝送化と合わせて、地上設備や構造物の耐震補強などを進めている。16年度末までに、全体計画の約8割を完了させる見通しで、今後想定される首都直下地震に備える。

最終更新:10/17(月) 13:45

日刊工業新聞電子版