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新潟知事に反原発派 原油価格に下押し圧力

ニュースソクラ 10/17(月) 18:00配信

国内では原発不稼働のドミノ

 16日に投開票された新潟県知事選は急遽立候補した米山隆一氏(49)=共産、社民、自由推薦=が終盤の驚異的な追い上げで、自民党、公明党が推薦した前長岡市長の森民夫氏(67)に逆転勝利した。米山氏は東京電力の柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に慎重で、泉田裕彦前知事の路線を踏襲する形。

 本命と言われた森氏は安倍晋三政権の意向を汲んで原発再稼働に積極的な立場をとっており、県民は柏崎刈羽原発再稼働に「ノー」と表明したことになる。この結果は東電や自民党、安倍政権に大きな衝撃を与えただけでなく、日本の中長期的なエネルギー戦略を揺さぶり、さらに世界の石油市場にも影響を与えるのは確実だ。

 東電は原油価格の下落もあって、収支が改善しており、数年前の存続が危ぶまれる状況は脱している。が、今年4月からの電力小売り全面自由化による、東京ガス、JXエネルギーなどの新規参入でシェアを着実に浸食されている。

 反転攻勢の最大の武器になるのが、発電コストで化石燃料に対し、優位性を持つ原発だった。1サイトとして世界最大の原発である柏崎刈羽原発には1~7号機があり、5~7号機は最新鋭の改良沸騰水型軽水炉(ABWR)。

 このうちABWRを中心に2~3基が稼働すれば、コストメリットは年間3000億円を超えるといわれる。火力発電の新規参入者に対し、一気に優位に立てる。

 東電にとって、再稼働の最大のネックとなっていた泉田前知事の突然の4選不出馬は「宝くじに当たったみたい」と幹部が漏らすほどのいいニュースだった。

 その時点では森氏は準備万端で、原発再稼働反対派は候補者すら決められていなかったからだ。だが、安倍政権と東電の慢心が県民の反発を招き、どんでん返しとなった。

 昨年9月の九州電力川内原発1号機の再稼働に続き、同2号機、関西電力高浜原発3、4号機、四国電力伊方3号機が再稼働した。高浜原発は大津地裁が運転差し止めの仮処分を認めたため、現在は停止しているが、原発再稼働への流れは次第に勢いを増しつつあった。

 ただ、再稼働したのはすべて加圧水型軽水炉(PWR)だったため、BWRの中国電力島根3号機と柏崎刈羽原発に稼働、再稼働の期待がかかっていた。

 米山氏が原発再稼働に反対することで選挙に勝った以上、柏崎刈羽の再稼働は2~3年はないとみるべき。1期目の4年間も困難かもしれない。

 東電にとって大きな痛手であるだけでない。島根原発3号機と北陸電力志賀原発2号機、東北電力女川2号機、東通原発の再稼働も遠のく可能性が高い。

 新潟県民の意志を電力業界も安倍政権も無視して進めれば世論の逆襲を受けかねないからだ。石油、天然ガスなどエネルギーコストが低迷を続けるなかでは、経済的理由で世論を変えるのは難しい。

 二酸化炭素排出削減の義務は昨年12月のCOP21で改めて大きな課題になっているが、日本の生産活動低迷で、排出削減目標も達成できており、原発再稼働を推進する材料にはならない。

 原発再稼働が川内、高浜、伊方で止まってしまえば、2030年に電源比率で原子力20~22%という政府の長期エネルギー需給見通しは達成不能になる。一方、電力各社の発電コストは下がらず、新規参入者との泥沼の顧客獲得競争で経営はますます疲弊する。

 米山氏の勝利は産油国には朗報だ。柏崎刈羽が動けば、液化天然ガス(LNG)や夏場の石油火力向けの原油、重油の需要を下押しするからだ。

 試算すれば原発10基の稼働で、日本は化石燃料の需要が原油換算で日量30万~40万バレル減る。数十万バレルのバランスで価格が大きく変動する原油先物市場では「米山当選」は「買い」の材料になる。

 石油輸出国機構(OPEC)の減産決定で持ち直し始めた原油価格にとっては強い上昇気流になるだろう。1990年代から原油先物市場では「東電」は世界最大のLNG購入者として、マーケット関係者は注目していた。

 かつてほどのインパクトはなくとも、東電の柏崎刈羽が数年は動かないというニュースは市場関係者の動きを誘うのは間違いない。週明けの原油市場に注目すべきだ。

 外為市場では日本の一般のFX参加者の総称である「ミセス・ワタナベ」が世界に知られるが、世界のエネルギー市場では「ミスター・ヨネヤマ」のインパクトが無視できないものになりそうだ。

■五十嵐 渉(ジャーナリスト)
大手新聞記者を30年、アジア特派員など務める。経済にも強い。

最終更新:10/17(月) 18:00

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