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自然体のセキュリティ女子3人が語る「就活に王道なし」

@IT 10/18(火) 8:10配信

 近年不足が叫ばれるIT人材。とりわけセキュリティ分野は人手不足が顕著といわれるが、「ホワイトハッカー」「トップガン」のように優れた技術を持った人以外は入りにくい、という印象を持つ人も少なくない。サイバー犯罪と正面から向き合うことから、「何だか怖い」というイメージもあるようだ。

【とっても仲良しの3人(左から順に、平野良子さん、森由恵さん、元林里絵さん)】

 しかし「セキュリティは決して怖いものではないし、身近な課題から入っていけば難しいものでもない」と、「NECソリューションイノベータ」でセキュリティ業務に携わる3人の「セキュリティ女子」たちは口をそろえる。彼女らはいずれも、技術を理解した上で業務企画やコーディネーションを進める役割を担っている。

 今回は、それぞれ違う立場でセキュリティ業務に携わる平野良子さん(NECソリューションイノベータ パブリックセーフティソリューション事業部 サイバーセキュリティグループ)、森由恵さん(同パブリックセーフティソリューション事業部 サイバーセキュリティグループ)、元林里絵さん(同北陸支社 セキュリティグループ)に、学生時代に取り組んできたこと、振り返ってみてやり足りなかったことなどを尋ねた。

●コードを書かないエンジニアにもできることがある

 平野さんは、お茶の水女子大学文教育学部を卒業し、英語・フランス語の教員免許も取得しながら、今はセキュリティ畑で活躍しているという、やや変わった経歴の持ち主だ。「大学時代は言語文化を専攻していました。その中で、コンピュータの言語と人間の言語に共通点があるのではないかという思いを抱いたことをきっかけに、この業界を目指しました」と言う。

 学生時代はHTMLを使ってWebページを作成する程度の知識はあったが、入社後の技術研修では苦労したそうだ。「入社後の研修で、いきなりJavaを学ぶことになって。フランス語からコンピュータ言語への切り替えは思った以上に難しかったです」

 たまたま配属された部署がセキュリティ関連だったことが、その後の平野さんのキャリアを広げていく。大学時代にフランスへの留学経験を持つ平野さんに、海外へのアレルギーはなかった。

 「米国やイスラエルなど、海外のサイバーセキュリティ先進国の技術をウォッチして紹介したり、新しい海外製品を検証するといった分野ならば、コードを書いたことがなくても役に立てる、自分でもできることがあると実感しました」という。時には、いきなり「ちょっと韓国に行って製品のデモしてきて」「明日台湾に行ってくれない?」とムチャぶりされることもあったというが、「やる気があれば、年齢や年次に関係なく仕事を任せてくれることがむしろうれしかった」と振り返る。

 こうしてキャリアを積む中で、2015年にNECソリューションイノベータが肝いりで立ち上げた「セキュリティイノベーションセンター」の設立に関わることになった。2014年に設けられたサイバーセキュリティグループに属していた平野さんは、「当初の目的はマルウェア解析やフォレンジックのためのラボを作りたい、というものでしたが、ただの研究施設ではつまらない。そこで、『この先サイバー空間の安全を守るためどんな技術が必要で、どんなビジネスを展開すべきか』を企画から立て、センターのレイアウト設計から機器・家具類の調達に至るまで手掛けました」という。

 「この時、トップに対して、自分の言葉で企画を説明し、その必要性を理解してもらう体験をしたことで、『この先やっていける』という自信をつかみました」

●1年かけて取り組んだプロジェクトで自信を培う

 専修大学情報ネットワーク学部を卒業後、2008年に入社した森さんは、ITへの関心はもともと高かった。「家族が新しい物好きで、自宅にもWindows 95のPCがあってパソコン通信などもしていました。大学も、『入学したら自作PCをそのままもらえる』と聞いたことが決め手で選びました」という。

 特にサークルなどにも所属していなかった森さん。授業と休日のアルバイトでスケジュールが詰まっていたためか、若さ故か、時間があれば「寝ていた」とのことだが、「3年時に1年かけてやり通したプロジェクトが自信になりました。8~9人のグループで『起業ゲームを作ろう』というテーマで議論し、経営シミュレーションゲームを企画して作成するというもので、この経験を通して、今の仕事に必要なコミュニケーション能力や調整力が身に付いたと思います」という。

 森さんは就職時からセキュリティ関連の業務に関心を抱いていた。「システムエンジニアになりたかった、というよりは、当時はやっていた非接触型ICカード関連の仕事をしたいと思っていました。ICチップの仕組みはどうなっているのか、どのように管理されるのかに興味があったのです。そこで、統合IDや認証基盤、ICカードといった業務をやっているNECソリューションイノベータを選びました」

 就職活動を進める中で、SPI試験やいわゆる「社会マナー」にも気を付けたというが、「就職時の面接では、3年時のプロジェクトのことをアピールしました」という森さん。晴れて入社し、希望通り認証基盤の構築や設計に関する業務で5年ほど経験を積んだ。

 「ごりごりのプログラマーではありませんが、お客さまと調整しながらシステム基盤を構築するという仕事が本当に楽しくて、性に合っていました」と振り返る。今は平野さん同様、サイバーセキュリティグループでCSIRT訓練業務などに携わっている。

●コミュ障だとばかり思い込んでいた自分、実は?

 元林さんのキャリアは、平野さんや森さんとはちょっと異なる。「地元が好き」という元林さんは石川県出身。地元の工業高校の情報科を卒業した後、金沢工業大学に進学した。

 理系が得意だったというわけではないが、「モノの仕組み、動く仕掛けに興味があった」という元林さん。入学後は「情報工学に必要な数学も含め、今までの人生の中で1番頑張って勉強しました。割とまじめに学校にいって、ちゃんと勉強していたと思います」と言う。

 その後、当時は別会社だった北陸日本電気ソフトウェア(現在はNECソリューションイノベータ 北陸支社)に「地元で、情報関連の仕事ができるところだから」という理由で就職した元林さん。しかしその後、東京で行われるプロジェクトでリスク分析や脅威分析といった業務に携わることになり、ホテル住まいが続くことになった。「生活基盤を整えたくて、東京への異動願いを出して今に至ります」という。

 現在元林さんが関わるプロジェクトは、他社からも多くの技術者が参加して進められている大規模なものだ。そのチームに加わって仕事を進める中で、自分の思い込みとは異なる「適正」に気付いたという。

 「入社以来ずっとプログラミング業務に携わってきて、自分はプログラミングが得意で、人と接するのは苦手だとばかり思い込んでいました。けれど今のプロジェクトに関わり、全く違う会社の人も含めいろいろな人と話してみると、『意外と自分は話ができるじゃないか』ってことに最近になって気付きました(笑)」という元林さん。

 社内のスポーツ大会のような催し物にも、昔は抵抗感があったそうだが、「今となってはそのこだわりは何だったんだろうと思います。いろんな人と会ってコミュニケーションを取るのが楽しいですね」という。

●就職活動に「コツ」はない?

 平野さん、森さん、それに元林さんのキャリアを聞いていて痛感するのは、奇をてらうことなく、まじめな学生生活を送ってきたということだ。3人とも、ことさらアピールするまでもなく、自然に学業に力を入れてきた経験を振り返り、「もう少し遊んでおけばよかった」(平野さん)という。

 もちろん就職活動に当たっては、「リクナビ」を見たり、「みんなの就職活動」を参照したりと、それなりに情報収集・情報交換は行ったそうだが、それに頼り過ぎることなく試験や面接に臨んだそうだ。「就職試験ではグループディスカッションがとても楽しかった記憶があります。ワイワイ話していて、気付いたら受かっていたという感じです」(元林さん)

 「面接は練習して何とかなるものではありませんが、アルバイトや学外活動でいろいろな人と話をする場数を踏んでおくことは大事だと思います」(平野さん)

 「質問するとき、何がどのように分からないのかが分からなければ教える側も困りますよね。『なぜなぜ分析』ではないですが、なぜ分からないのか、何が分からないのかを尋ねるやり方を理解しておくと、人と接するとき楽になると思います」(森さん)

 就職先探しの「コツ」を聞いたところ、3人とも首をかしげてしまった。最近ではインターンシップが当たり前のようになっているが、それを「必須」と捉えるのはどうも窮屈に感じるとも話す。インターンは社会人生活への助走ではなく「社会経験」の1つとして捉えるべきではないかとのことだ。実際、3人ともインターンは経験しておらず、アルバイトは「私、お肉屋さん!」「私は私立高校の制服販売!」と、いたって普通だ。

 就職時にはあまり深く考えていなかったが、今になってみればしっかりチェックしておけばよかったという事柄が「福利厚生」、特に「産休」に関する制度だ。

 平野さんは2児の、また森さんは1児の母親として、仕事と家庭を両立させている。「1年8カ月の産休・育休後に復帰して、今は時短勤務ですが、復帰を快く受け入れてくれる社風や制度が整っているのはうれしいです」(森さん)。平野さんも、「就職活動の当時はあまり意識しませんでしたが、出産後も働き続けたいならば、この種の制度は気にした方がいいですね」という。

 大手企業にはこうした良さがある一方で、「規模が大きいと、何事にしても手続きや承認に時間がかかるという側面もあります。ベンチャー企業はこうした動きがとても早いですよね」と平野さん。

 そして、就職先や職種を探す際には、「自分はこうだ」とこだわり過ぎないことが大切、というのが3人共通の意見だ。

 人と接するのが苦手だと思っていたら、いつの間にかプロジェクトの中で各所の調整やスケジュール管理に携わることになった元林さんも、産育休から帰ってきてサイバーセキュリティグループに配属され、「自分では基盤構築業務が性に合っていると思っていたが、これはこれで楽しい」と言える森さんも、できないと思っていたこと、できると思うことにこだわり過ぎることなく、自然に合わせ、楽しんでいる。

 セキュリティというとどうも怖そう、難しそうというイメージを持たれがちだが、「攻撃や漏えいというとハードルが高そうですが、身近な問題から入っていけば理解してもらいやすいのではないでしょうか」(森さん)、「セキュリティに関わる業務といっても必ずしもCTF(※)などに出ないとだめ、というわけではありません。私たちの仕事は、普段のシステムインテグレーション業務の延長線上にあると思います」(元林さん)という。

※CTF(Capture The Flag:旗取りゲーム)情報セキュリティの技術を競う競技・ゲーム

最終更新:10/18(火) 8:10

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