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米国の大富豪が「多額の寄付」をする本当の理由

ZUU online 10/18(火) 21:36配信

米国のリサーチ会社が調査した、2015年度の米国大富豪による寄付金ランキングが発表されている。それによると、1位はウォーレン・バフェット氏で28億4000万ドルを寄付、2位がビル&メリンダ夫婦で14億ドルを、3位がジョージ・ソロス氏で6億5400万ドル……と続く。いずれにせよ、われわれからすれば、想像もつかないような金額であることは間違いない。

この記事を見て、一般人が感じることとは、「こんな大金を寄付するなんて、本心からやっていることなのか?」ということだろう。これについて考えてみよう。

■ 大富豪たちが寄付をする3つの理由

大富豪が多額の寄付をする要因として、筆者が考える理由は3つある。

それは、
(1)寄付が文化として根づいている
(2)節税対策
(3)いいことと悪いことのバランスをとるため
の3つである。これについて、見ていくことにしよう。

まず、彼らの思想的背景には、キリスト教がある。彼らにとっては、寄付や募金、ボランティア活動などをすることは日常の一部なのである。

OECD(経済協力開発機構)が2011年に発表した各国の幸福度調査よると、米国はOECD諸国の中でも、ボランティア活動に参加する人がもっとも多く、1ヶ月の間に「募金活動や何らかのボランティア活動に従事した」と答えた人が60%にものぼっている(日本人は26%)。

ところで、米国人にとって、寄付とは必ずしもお金を出す行為だけを指しているわけではない。たとえば米国には、不要になった家具や日用品、洋服などをまとめて引きとってくれるスリフトショップというリサイクル店がある。お店は主に慈善団体が運営しており、そこへ品物を持っていくと、品物の代金相当の寄付をしたという明細書を書いてくれるようになっている。

そんな明細書を何に使うのかというと、米国では、個人が税務申請を行うようになっているため、その明細書を持っていくと、税控除の対象として認められるのである。

■ カラクリは「ふるさと納税」と同じ

このように、そもそも米国は日本に比べて、寄付に対する税制が整っている。つまり、大富豪たちが寄付をするのはそれなりの理由があり、結局は得をしているということになる。

もし、あなたが会社をやっている人ならわかるだろうが、経費の中で税金が占める割合は、決して小さくない。だから寄付することによって節税ができるというのは、彼らにとっては大きなインセンティブなのである。

ここで、「やっぱり金持ちは理に聡い」と感じた人は、日本で行なわれている「ふるさと納税」を思い起こしてみて欲しい。

ふるさと納税に出資している人は、おそらく寄付をしたくてしているわけではない。自分とは縁もゆかりもない地域に、何の理由もなくお金を投じる人などいないし、地方の物品が欲しいだけなら、通販で十分である。

ふるさと納税の利用者も、多くはそれで得られるメリットが目的で出資しているわけだが、それで文句をいう人などいない。出資をすると、自然とその地域に興味がわいて、やがて旅行にいく気になったり、物産展で買うようになるかもしれない。理由はどうあれ、まずは形から入ることが大切なのである。

■ それでも、寄付には節税以上の意味がある

では、大富豪たちが、ただ単に節税目的だけで多額の寄付をしているのかというと、そうとは限らない。ビル・ゲイツ氏は、数年前のテレビのインタビューで、多額の寄付をすることについて聞かれ、このようなコメントをしたことがある。

「消費には限度があり、本当に自分が価値があると思えるものが何なのかを、考えなくてはいけない」彼らにとって、寄付には節税以上の意味があることを、この言葉が示しているのではないだろうか。

■悪いことが起きたときにどう対処するか?

(3)について異論のある人はいないだろう。不慮の事故や災難など、人生には、さまざまな予期せぬできごとが起きるものだ。

人生の起伏について語った例え話に、中国の故事で「塞翁が馬(さいおうがうま)」というのがある。塞翁に悪いことが起こり、近所の人がお悔やみをいうと、それがよい結果をもたらし、それに対して周りがお祝いをいうと、今度はそれが悪いことに転じる、という話である。

この故事の肝とは、塞翁が、悪いことが起きる度に「次はよいことが起きる」と思い、よいことが起きると「次は悪いことが起きるぞ」と心構えをする点にある。この話は一般に、「人生の幸不幸はわからない」という意味で使われるが、それよりは、「ものごとは捉え方が大事」なのだということを、教えているのだと筆者は考えている。

■悪いことを事前に回避する方法

世の中で起こっているできごとの多くは、自分ではコントロールできない。よいことと悪いことというのは、まるで振り子のように、振れ幅があるものである。それならいっそ、悪いことがくるのを待たずに、先に「悪いこと」を「よいこと」で相殺してしまおうという手がある。その相殺する方法のひとつが「寄付」であるとする考え方である。

筆者が想像するに、大富豪が多額の寄付をする心理として、2つの意図が働いているのではないかと思う。ひとつは「世間に対するアピール」であり、もうひとつは「自分に対する戒め」である。

人は成功すると、とかく他人の恨みや妬みを買いやすいものである。だが、寄付をすることによって、その分、世間の評価を受けやすくなり、味方も増える。要は「自分は成功しても、これだけ社会に還元している」という、大義名分を手にできるのである。

■「成功した後」が肝心

寄付をする2つ目の意図について、なぜこれが自分自身への戒めになるのかというと、寄付とは一種の「痛み」だからである。たとえ大富豪であろうとも、本来なら、自分が苦労して稼いだお金を、他人に差し出したいとは思わないはずである。

大富豪が成功するまでには、人知れぬ苦労があったはずで、そうやって手にした成功を失いたくないからこそ、あえて自ら痛い思いをして、バランスを保とうとしているのではないだろうか。

たとえば日本語にも、「調子に乗る」という言葉があり、これは本来、よい意味で使われる言葉である。ところが、この言葉を他人が自分に対して使ったときには、「図に乗っている」というような意味に変わる。

つまり、自分が波に乗っているときほど、他人からしたらやっかみたくなるような状態だから、気をつけなければいけないという、戒めの言葉だとも解釈できるのである。

■まずは、目の前のことから始める

2015年のアメリカ大富豪寄付金ランキングで1位になったウォーレン・バフェット氏は、かつてこのような発言をしたことがある。

「幸運な1%として生まれた者は、残りの99%の人間のことを考える義務がある」

これを聞くと、一般人にはなじみの薄い、スケールが大きい言葉のように聞こえる。やはり、彼らは特別な人間なのだろうか?

筆者が思うに、「99%の人間のことを考えろ」というのは、目の前のひとりの向こう側と世界がつながっているということ。バフェット氏がいいたかったのは、「まずは自分の見えている範囲の人に、喜んでもらえることを考えよう」ということなのだと思う。目の前の人を喜ばせれば、その人が口コミをしてくれたり、その人自身が別の人を喜ばせたりして、波紋のようにその影響が広がっていくからである。

才能は天からので授かり物。才能を授かったこと自体に本人の努力はない。無観客試合で心の充足は満たせないし、世の中は進歩しないからだ。人と人とはどこかでつながっている。だからすべては、目の前のたったひとりの人を満足させることから始まるのである。

俣野成敏(またの なるとし)http://www.matano.asia/
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。

最終更新:10/18(火) 21:36

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