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社説[生前退位の有識者会議]新たな天皇像の議論を

沖縄タイムス 10/18(火) 13:00配信

 天皇陛下がビデオメッセージで、生前退位の意向を強くにじませた「お気持ち」を表明してから2カ月余り。生前退位などを巡り、政府が新たに設置した有識者会議の初会合が開かれた。

 「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」が正式名称で、メンバーは経団連の今井敬名誉会長ら6人。憲法における天皇の役割や退位の制度化の是非などについて専門家から意見を聞き、論点を整理した上で、年明けにも公表する。与野党の意見を踏まえ、春ごろ最終的な提言をまとめる構えだ。

 メッセージ公表後の世論調査では、天皇の生前退位容認は86・6%を占め、国民の間に理解が広がっている。一方、今後の議論の進め方については50%超が迅速な対応を求め、慎重派も40%超と意見は分かれている。

 安倍晋三首相は有識者会議の初会合で「予断を持つことなく十分にご審議いただきたい」と要望した。ただ、政府は、皇室典範に規定のない生前退位を実現するために、一代限りの特別法の制定を軸に検討したい意向だとみられる。

 82歳という年齢を考慮すれば、時間的制約があるのは理解できる。だからといって「一代限りの退位」の結論ありきで議論を進めてはならない。

 憲法は、天皇を国民統合の象徴とし、その地位は国民の総意に基づく、と定めている。ならば、会議の在り方も国民に開かれたものとすべきだ。議論の進め方を明確に示し、幅広い視点での丁寧な議論を望みたい。

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 即位以来、象徴の役割を問い続けてきた天皇は、メッセージで「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくこと」を念じていると明かした。

 しかし、そのための課題は生前退位の問題にとどまらない。現在の皇室の構成をみる限り、皇位継承を「男系男子」としたままでは、皇族の数が減少し、皇室の活動が厳しくなるのは否めない。

 過去の政権が検討した女性・女系天皇や「女性宮家」創設をいま一度、議論する時期に来ているが、安倍首相のこれまでの発言をみると、いずれも否定的だ。

 生前退位だけでも、特別法か皇室典範改正か、退位後の身分や活動の在り方をどうするかなど検討すべき点は多い。であれば、まず生前退位を優先し、引き続き女性天皇など皇室制度全般について議論する、という2段階論で進める考え方が現実的だろう。

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 生前退位の意向を天皇が周囲に示唆するようになったのは、6年ほど前だったという。首相官邸にも伝わっていたようだが、強い意向とは受け止められていなかったとみられる。今回、それが公になってメッセージにつながった。

 意向を示すこと自体が「政治的発言」とする考え方もある。天皇の政治関与を禁じた憲法との整合性を鑑みれば、政治の側が主体的に議論を始めるべきだった。政治の不作為と言わざるを得ない。

 遅すぎたスタートとなったが、時代の変化に応じた象徴天皇の在り方について国民的な議論の契機としてほしい。

最終更新:10/19(水) 14:50

沖縄タイムス