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迫り来る電力・ガス産業の構造変化、経営リスクと成長ポテンシャルが交錯

スマートジャパン 10/19(水) 9:25配信

 注目すべき「電力・ガス基本政策小委員会」の第1回会合が10月18日に開かれた。電力とガスの小売全面自由化の進展状況などを確認した最後に、電力・ガス産業の将来像の検討に着手する方針を打ち出した。2020年代の初めに完了する電力・ガスシステム改革の次の産業構造を描くことが目的だ。

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 なぜ2030年に向けた産業構造の将来像を検討する必要があるのか。そこには政府の強い危機感が表れている。長年にわたって規制に守られてきた電力・ガス市場の改革を進める中で、想定以上の構造変化が起こり始めたからだ。需要の減少が続く一方、供給面では再生可能エネルギーの拡大と化石燃料の価格下落が急速に進んでいる。

 政府が2015年4月に策定した2030年度の電力需給構造の見通しは早くも修正を迫られている。経済成長に合わせて長期的に需要が増えていく予測を立てたものの、現実には省エネ技術の進展や企業・家庭の節電対策によって減少していく可能性が大きくなった。

 供給面では電源構成の見直しが避けられない。需要が減少すれば2030年度の発電量も少なくて済む。再生可能エネルギーの比率が想定を上回って、原子力の比率が大幅に下がることは確実な状況だ。

 さらに電源構成に入っていないガスコージェネレーション(熱電併給)や燃料電池の普及が見込まれる。再生可能エネルギーによる電源と合わせて、電力会社に依存しない分散型の電源が2030年度には30%以上に達している可能性が大きい。

 そうなると、大規模な火力発電所や原子力発電所を事業基盤に据える電力会社の経営は厳しくなるばかりだ。同様に需要の伸び悩みと自由化による市場競争にさらされるガス会社の経営環境も大きく変化していく。政府が電力・ガス産業の将来に不安を抱くのは当然である。

先端技術で海外市場を開拓できるか

 これから始まる将来像の検討の中で、重要なポイントは2つある。1つは海外を含めて成長のポテンシャルがある新市場の開拓、もう1つは電力市場を形成する発電・送配電・小売の枠組みが抜本的に変わる可能性だ。国内のみならず海外と結ぶ送配電ネットワークの拡大も現実味を帯びていく。

 現在のところ電力会社とガス会社の海外事業は限定的である。電力会社10社が海外で展開する発電設備の容量は各社とも1割に満たない。ガス3社の海外販売比率も同様だ。ヨーロッパの大手電力・ガス会社では国外事業の比率が50%を超えるところが多い。各国が陸地でつながっているとはいえ、北米や南米にも事業範囲を拡大している。

 日本の電力・ガス会社は先端技術を生かして海外に進出できる可能性を秘めている。その1つがIoT(Internet of Things、モノのインターネット)を活用した新しいサービスだ。すでに東京電力グループと三菱日立グループが共同で、火力発電所の運転支援サービスを海外に展開する計画を発表した。

 送配電ネットワークの領域でも海外展開が始まる。ソフトバンクグループが2011年に発表した「アジアスーパーグリッド構想」は日本と中国・韓国・ロシアを海底ケーブルで結び、インドやモンゴルまで含むアジア全域に電力を供給する壮大なプロジェクトである。

 一見すると夢物語のように思えるが、着々と準備が進んでいる。2016年3月には、ソフトバンクグループと中国の国家電網公司、韓国電力公社、ロシア・グリッドの4者が国際間の送配電ネットワークを連系するための調査・企画立案で合意した。ソフトバンクグループの孫正義社長は2020年の東京オリンピック・パラリンピックをめどに計画を推進させる意向を示している。

 そうした海外展開の一方で、国内では地域密着型の小売電気事業者が広がってきた。特に目を引くのは、各地域の企業が自治体の出資を受けて電力の小売事業に乗り出すケースだ。地元の資源を生かして再生可能エネルギーの地産地消を拡大しながら、地域で使えるポイントプログラムなどを組み合わせて利用者を増やしている。

 ガスの市場では小売全面自由化が始まる前から、全国で200社を超える会社が都市ガスを販売してきた。今後は電力と都市ガスを組み合わせて地域密着型のサービスを展開していく。もはや大手の電力会社とガス会社は従来の事業構造のままで将来を生き抜くことはむずかしくなった。

 2030年に向けて海外に進出するか、地域の事業者と連携するか、あるいは大手同士で事業を統合してスケールメリットで勝負するか。長期の戦略を早く打ち出して、スピーディに構造改革を進めるターニングポイントが近づいている。政府の委員会は2016年度内に、電力・ガス産業の将来像をまとめる予定だ。

最終更新:10/19(水) 9:25

スマートジャパン