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「死にたい」と思うほど仕事でストレスを抱えたときに――最も大切なのは、あなた

@IT 10/19(水) 12:44配信

 社会人になって間もないビジネスパーソンが自ら命を絶ったという報道を目にしました。

【誰か助けて! ボク、つらいんだ!】

 私は今、左胸の辺りが締め付けられるような感覚を抱いています。それは、自分の体験と重ねることで出てくる痛みなのかもしれません。悲しさと、切なさと、何とかできなかったものかという無念さと、いろいろな感情が一緒くたになっています。「何で死んでしまったんだ!」という、やるせない感情も湧いています。

 このような報道があるたびにニュースサイトなどのタイトルに踊るのは「長時間労働」や「過労」という言葉です。過度な長時間労働を擁護するつもりはもちろんありません。けれども、自身の体験と重ねてみると、「労働時間を短くすれば、解決するのか?」とも思います。

 重いストレスを抱えたときは、「こうすればいいんです」という表面的なノウハウで解決できるほど簡単ではないし、「これが正解」という答えがないことも心得ています。また、私は「死」という言葉を簡単に使いたくありません。しかし「死にたい」……とまではいかなくとも、過度なストレスやゆううつ感は、誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。

 そこで今回は、「死にたいと思うほど仕事のストレスを抱えたときにはどうすればよいのか」を、私の経験を踏まえて考えてみます。

●私が「死にたい」と思った2つの出来事

 私は仕事上の悩みで「死にたい」と思った経験が2回あります。行動にこそ移せませんでしたが、職場があったビルの屋上で、「今、ここから飛び降りたら楽になれるかな」……と思ったのは事実です。

 1回目は、29歳のときです。パートナー企業に頼んでいたシステム開発の仕事が、フタを空けてみたら全然進んでいないことが発覚。顧客への納期は2カ月後に迫っていました。仕方がないので私が開発を引き受けることになりました。他に助けてくれる人は誰もいません。他の仕事を全てキャンセルし、会社に寝袋を持ち込んで、寝泊まりしながらプログラムを作りました。

 2回目は、32歳で転職したときです。客先に常駐してシステム開発をする仕事で、威圧的なマネジメント、ギスギスした人間関係、失敗が許されない緊張感で、心身共に疲弊し、心が折れそうになってしまいました。

●「精神的なツラさ」はホント苦しい

 1回目の体験は「肉体的なツラさ」でした。

 毎日遅くまで仕事をして、「あー、もう嫌だ! 逃げたい!」と何度も思いました。けれども、とにかくやらなければなりません。納期に対する精神的なプレッシャーも多少はありました。けれども、同僚や上司にいい人が多く、精神的な負担が少なかったのが救いでした。

 また、1回目のときは「ゴール」がありました。本当にきつかったけれど、「これさえ乗り切れば何とかなる」というゴールの存在が、ツラさを乗り越えさせてくれました。

 2回目の体験は「精神的なツラさ」でした。

 1回目のときに比べると労働時間はそれほど多くはありませんでした。けれども、人間関係がギスギスした職場に逃げ場はないし、「あなたにはスキルがない」と人格否定されたあの苦しさといったらなかったです。

 2回目は「ゴールがない」「先が見えない」というのも、苦しさに拍車を掛けました。「これがずーっと続くのか……」と思うと、本当に苦しかった。すぐに辞めるわけにもいきませんでしたし。結婚してすぐでしたし。

 今でこそ、「あれはいい経験だった」と思えますが、渦中にいるときは、本当につらかったなぁ……。私のこの経験からすると、仕事の負荷は「長時間でなければいい」とは一概には言えないようです。

 「精神的なツラさ」はホント、苦しいです。

●薬を飲めばストレスは減るのか

 近年、労働者のストレスが社会問題として捉えられています。2015年12月、厚生労働省は50人以上の事業所を対象に「ストレスチェック制度」を施行しました。

 ストレスチェックは、「職場環境の改善などにより心理的負担を軽減させること(職場環境改善)」と、「労働者のストレスマネジメントの向上を促すこと」が目的で、精神的疾病を抱えた人を早期に見つけることではないそうです。とはいえ一般的には、「ストレスを抱えていたら、早期発見、早期治療」と言われています。

 けれども、医療機関にかかれば、それだけでストレスが減るのか……というと、そうでもないだろうと個人的には思います。なぜなら、ストレスの根本原因は過度な仕事や職場の人間関係、物事の捉え方にあるからです。しかし、仕事内容や職場の人間関係の問題は、医療では解決できません。

 精神科専門医の千村晃氏は、著書「これからはメンタル美人―内から輝くあなたへ」(カナリア書房)の中で、次のように書いています。

 心の医療に従事してきて、心の不調の最後の決め手は人間関係だ! といつも感じてきました。 もちろん、一時的な見かけは薬で治るでしょうが、根本的解決になっていないことがほとんどです。いろんなメディアを通じて薬の医療情報が膨大に流されるため、多くのみなさんがそれを目にして薬で魔法のように全てが解決するとお考えになります。でも、それだけで解決するほど人間の心と体は単純ではありません。

 ここでいう「人間関係」には、「周囲との関係」に加えて「自分との関係」も含まれると、私は考えます。

 そこで、「死にたい」と思うほど仕事でストレスを抱えたときの対処について、経験を踏まえて考えてみます。

●「死にたい」と思うほど、仕事でストレスを抱えたときに

会社を辞めてもいいし、逃げてもいい

 仕事のトラブルに見舞われたときに、自責感が強いと、「私ってだめだな」「最後までやり遂げなきゃ」と自分を責めたり、追い込んだりしてしまいがちです。もちろん、仕事をする上で自責感は大切ですし、つらい体験は、乗り越えればいい経験になる場合もあるでしょう。

 けれども、「死にたい」と思うほどつらいなら、会社を辞めてもいいし、逃げたっていいんです。自分を犠牲にしてまで、会社や上司、顧客のために頑張る必要はありません。

 ちなみに、私が精神的につらかったとき、「独立する」という名目で会社を辞めました。すぐには食えなかったので、契約形態を会社員から個人事業主に変えて、しばらく同じ仕事を続けましたが、それでも、会社を辞めたことによって「よし、この状況から早く抜け出すぞ!」という気持ちが芽生えて、かなり楽になりました。

 また、私が会社を辞められたのは、「そんなにつらいなら、会社、辞めてもいいよ」と言ってくれた奥さんの影響も大きかったです。追い込まれていると「辞める」ということまで頭が回らないことがあります。実際に辞めるかはさておき、「辞める」という選択肢があることが分かるだけでも楽になれます。

 周りの一言が背中を押すきっかけになってくれることがあります。覚えておきましょう。

とにかく話す

 「死にたい」と思うほどつらいなら、とにかく周りの誰かに話してみてください。自責的な人の中には、「そんなの、周りの人に申し訳なくてできません」という人もいますが、私の経験では、「大切なことの相談相手に選んでくれてありがとう」と言われたことの方が多いです。

 もし、周りの人に話がしづらかったら、人事や労務の担当者、直属ではない上司などに話を聞いてもらうのもよいでしょう。それでも話しづらかったら、厚生労働省や地方自治体が開設している「専門相談機関・相談窓口」なども利用できます。

 私が精神的につらかったときは、仕事に直接関わりのない上司に話を聞いてもらいました。愚痴もずいぶん言いましたが、自分の状況を分かってくれる人がいるだけで、少し楽になれました。

周りの人の協力を仰ぐ

 自責感の強い人は、「人には言えません」と、弱みを見せたがらないことがままあります。けれども、いっぱいいっぱいでつらいなら、周りの人に頼んで協力をあおいでみませんか。

 実は、私も人に頼んで協力を仰ぐのが苦手です。「迷惑なんじゃないか」「嫌われるんじゃないか」と思ってしまうのですよね。これは、私自身の課題でもあります。

きっぱり断る

 「限度を超えているな」と思ったら、断る勇気を持つことも必要でしょう。

 自責感が強いと、「みんな引き受けなきゃ」と思うし、特に若いうちは、「上司に頼まれたことは断っちゃいけない」と思うかもしれません。また、相手が威圧的なタイプなら、断りにくい場合もあります。

 けれども、本当に大変なときは、断らないと自身を犠牲にしてしまいます。もし、直接言いづらければ、周りの人に助けを求めてみましょう。

●最も大切なのは、あなた

 私の経験を踏まえてまとめてみましたが、何となく、当たり前のことばかりになってしまったような気もします。「それができないから困っているんじゃないか」と思われるかもしれません。

 でも、苦しかった当時の自分にアドバイスするなら、やっぱりこういった話をすると思いますし、まずは、話を聞いてあげたいと思うのです。また、「1人でそんなに背負うことないよ。身体を壊すほど悩んでいるのなら、もう、会社辞めなよ」と言ってあげたいとも思います。

 困難を乗り越える力は、とても大切ですし、責任感が強いのは悪いことではありません。この連載も、どちらかといえば「乗り越える力」をテーマにすることが多かったです。

 けれども、「死にたい」と思うほど苦しいときは、相手のことよりも、まずはあなた自身のことを大切にしてください。苦しい感情をシャットダウンせずに、逃げる、断る勇気を出してください。理不尽な会社や人のせいで、あなたが犠牲になる必要はありません。

 最後に……人が死にたいと思うのは、「死んだ方が楽だ」という考えがどこかしらにあるからなのかもしれません。私はあの世に行ったことがないので分かりませんが、本当に楽になれるのかなぁ。

 でも、あなたが死んだら、あなたの大切な人が、それを背負って生きなきゃいけなくなるのだけは事実です。それは、本当に苦しいことです。ですから……

 生きてください。

●今回のワーク

 大切なのは、「なるほどね」で終わらせないことです。静かな場所に行って、コーヒーでも飲みながら、紙とペンを取り出して考えてみてください。

「死にたい」と思うほど悩んでいたら、取りあえず話せそうな人を1人、選びましょう。話す人がいなければ、専門の窓口でもいいです「逃げる」「断る」など、悩みの原因となる環境から離れられないか検討してみましょう

最終更新:10/19(水) 12:44

@IT

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