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被災地で「防災」テーマにゲーム作り! プログラミングで「こどもの創造性」育てるデジタル時代の教育論

ReadWrite Japan 10/19(水) 22:30配信

あるNPO法人が、宮城県石巻市や仙台市、気仙沼市に住む小学生向けにプログラミングワークショップを実施している。

現在も東北に限らずさまざまな場所でプログラミングを通じて、子どもたちが自分の考えやアイディア、ひらめきをカタチにしていくことを応援するNPO法人CANVAS。今回は、なぜこのような取り組みを始めたのか、その想いや考え方についてディレクターの熊井晃史(くまい・あきふみ)氏に話を伺った。

NPO法人CANVASは、2012年の11月30日から小学生を対象とした『プログラミングワークショップin東北』を開催している。この取り組みに賛同したGoogleが後援しているという。まずその概要をお伝えしたうえで、インタビューの様子をお伝えしたいと思う。


■プログラミングワークショップin東北とは

さまざまなワークショップを行っているCANVASだが、そのなかでも今回取り上げるものは『プログラミングワークショップin東北』である。

2012年11月からスタートしたこのワークショップは、被災地である宮城県の石巻市、亘理郡、仙台市、多賀城市などで開催された。子ども向けプログラミング言語である「Scratch(スクラッチ)」を使って、「防災」をテーマとしたオリジナルゲームを作るというワークショップ内容になっている。

その様子や取り組みに興味のある方は、一度NPO法人CANVASのホームページに訪れみてほしい。子どもの創造性を表現するための取り組みが多く紹介されているだけでなく、大人が見てもワクワクするようなデザインを楽しめるだろう。


■プログラミング教室のインタビュー

熊井晃史氏(NPO法人CANVAS ディレクター)
こども向けワークショップや各種キッズイベントの企画・プロデュース、デジタルコンテンツ・教材開発などさまざまなプロジェクトを通じて子どもたちが自ら創造し表現する環境づくりを行っている。2009年より慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科研究員を兼務。ワークショップデザイナー育成プログラム講師(青山学院大学・大阪大学)。


-プログラミングを教えるワークショップを開催したきっかけを教えてください。

熊井氏:CANVASでは、もともと「子どものクリエイティビティ(創造性)」をキーワードに、造形・映像・音楽・サイエンス・身体表現など、さまざまなテーマのワークショップを展開していますが、そのなかでも「デジタル時代における子どもたちの教育」については、2002年の設立以来、重要なテーマとして捉えています。

コンピュータやインターネットは、安心・安全に活用するうえで、もちろん気をつけなければいけないこと、身に付けなければいけないルールやマナーもたくさんあるかと思いますが、きちんと使っていくことで子どもたちの可能性を育む素晴らしい道具にもなります。

子どもたちとデジタルがよりよい出会い方をしていくことは非常に重要です。デジタルのメリットの1つに、表現の敷居を下げることがあると思います。そして、表現したものを世界中に発信することができるのもメリットの1つです。

プログラミングを通じて、いつも遊んでいるゲームを今度は自分でつくるという体験は、子どもたちがデジタルの良い面に触れられるだけでなく、自分で考えてアイディアを形にしていく本質的な力を身に着けていくことにつながるのではないか。そのような想いからプログラミングワークショップを展開しています。


-今回のワークショップが、東日本大震災の被災地である東北で開催されることになった理由はなんですか?

熊井氏:当初は全国でワークショップを実施していく予定でしたが、つながりのある東北の被災地の大人の方々から、「地域の人材を育成していくことがひいては被災地の復興につながっていくので、ぜひ被災地で重点的に開催してほしい」というご意見をいただき、実施エリアを絞りました。

ただし、単発的なイベントとして終わってしまわないように、地域のプログラマの方や教育系団体、教育委員会等と連携したり、ワークショップのパッケージングをおこなったりして、このような試みが地域に根付き、継続的な教育環境の実現につながっていくような進め方ができるようにしました。

夏から開催を続けて、これまでトータルで約560名のこどもたちが参加してくれました。


-どのような場所でワークショップを開催しているのでしょうか? また、どんな人が講師をしているのでしょうか?

熊井氏:地域の小学校や公民館や文化センター、ショッピングセンターなど、さまざまな場所で開催しています。学校では授業の一環として受け入れていただいて、先生方と一緒にワークショップを進めました。

講師は、Scratch(スクラッチ)を普及されている第一人者でありCANVASのフェローでもある阿部和広さんにサポートをいただき、CANVASのメンバーを中心に、地域の教育関係者やプログラマ、ボランティアの方々、学生など、さまざまな方が指導にあたっています。


-後援になっているGoogleとはどのような関係を築いていますか?

熊井氏:資金的な援助もさることながら、プロジェクトの進め方のアドバイスから人材・機材等のリソースの提供など、さまざまな支援をいただいています。

YouTubeにも動画をアップしていますが、Googleのプログラマの方々から子どもたちへのビデオメッセージもいただきました。野球好きな子どもがプロ野球選手に出会うことが大きな出来事であるのと同様に、プロのプログラマと子どもたちが触れ合うことも重要です。


-参加した子どもたちの反応はいかがですか?

熊井氏:プログラミングというと難しい印象をもたれることが多いのですが、子どもたちは目を輝かせながら自分だけのゲーム作りにチャレンジしています。

最初は恐る恐るの参加ながらも、次第に「キャラクターをこうしたい」「音楽をつけたい」「ゲームオーバーを工夫したい」「スコアをつけたい」など、自分で工夫したい! という気持ちがわいてくるようです。

誰かにやらされるのではなく、自分たちのやりたいという気持ちから創意工夫が生まれていく様子に、学校では担任の先生方からも驚かれることがありました。いつもの授業もこんなふうにしてくれればいいのに、と。

また、自分で工夫すると友達の工夫したポイントがわかるようで、よく参加者の子どもたち同士で遊びあってコメントしあっている様子もほほえましいものがあります。

ゲーム作りだけでなく、子どもたちにはさまざまなことにチャレンジしてもらいたいと考えていますが、そのための1つの成功体験になればと願っています。


-保護者や学校の反応はいかがでしょうか?

熊井氏:子どもだけでなく、大人の方からもよい反応をいただいています。

ワークショップの撤収も保護者の方々が手伝ってくださったり、お客さんというよりは“共に場をつくっていく支援者”として参加してくださる方が多く、非常にありがたく感じています。

たとえば、地域の文化センターを舞台に開催していた夏のワークショップに参加した子どもの保護者の方が、ワークショップの内容に感動されて「ぜひうちの学校にきてほしい」ということで、校長先生やPTAと交渉し招いてくださったことが1回ではなく、複数ありました。

学校の先生方からは、「子どもたちのこのような笑顔を久しぶりに見た」といったことを聞き、胸を熱くするとともに気を引き締める思いでした。


-今後の展開についてはどうお考えですか?

熊井氏:今回の実施エリアを中心として、さまざまな地域でプログラミングワークショップが自律的に継続され、展開されていくことが最終的な目標です。そのために、地域の実践者の方々との協働・支援体制の拡充や、ワークショップのパッケージングにも力をいれていく予定です。

それらの成果はすべて公式サイトで公開をしていく予定なので、全国のさまざまな関係団体と協力もしながら活動を深め広げていきたいと考えています。関心のある方にはぜひご連絡いただきたいですね。


-ありがとうございました。


実際に確認した子どもや一緒に取り組んだ先生たちのアンケートからも、大変満足している様子が伺えた。用紙にびっしりと書かれた喜々とした感想に目を通しながら、我々もワクワクとした気持ちになる。CANVASのこれからに注目したい。(写真提供:CANVAS)

※これは2013年2月3日に書かれた記事(Tech Academy)の転載である。

ReadWrite[日本版]編集部

最終更新:10/19(水) 22:30

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