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重工大手2社、未来への決断はいつ実る?

ニュースイッチ 10/19(水) 11:40配信

 陸海空そして宇宙と多様な事業を持つ大手重工メーカーはまさに機械のデパートだ。一方でグローバル化の進展といったパラダイムシフトとともに、事業の選択と集中を加速してきた。

 IHIは2016年度からの3年間で約100億円を投じ、車用ターボチャージャー(過給器)の開発機能を刷新する。部品試作に3Dプリンターを導入して、試作期間を現状比で半減。製品の性能試験に用いるテストシステムも高度化する。車メーカーは開発期間を短縮する傾向にあり、過給器も高性能化が進む。開発体制の強化で高付加価値品を増やし、2020年に同事業で約2割増売上高2000億円超を目指す。

 IHI横浜事業所内にあるテクニカルセンター(横浜市磯子区)の設備を順次増強。部品試作の一部を、鋳造から3Dプリンターに切り替える。試作は客先と何回も仕様を詰める作業が必要で時間がかかっていた。すでに小型部品を造形できるプリンターを導入。今後、台数を増やす。

 過給器の性能試験向けテストベンチでは、コンプレッサーによる圧縮空気か燃焼器による燃焼ガスを使う手法と、実際のエンジンに搭載して試験する手法がある。それぞれのシステムの機能を高め、燃焼ガスの排気システムなどを増強する計画だ。

 IHIの車両過給器は大半の日系メーカー、独フォルクスワーゲンやアウディ、ダイムラーなどに供給する。電動コンプレッサーを搭載した機種や燃料電池車向けなど高付加価値品と、ボリュームゾーンとの両輪で市場を深耕し、20年に現在20%の世界シェアを25%程度まで引き上げる考えだ。

 一方、大型客船事業を凍結する方針を明らかにした三菱重工業。大型客船の受注を当面取りやめ、現有人員で対応可能な中小型客船に絞る。液化天然ガス(LNG)運搬船を主力とする商船事業では、営業や設計などを手がける事業統括部門を新設。今治造船(愛媛県今治市)など専業大手との協業を進める。事業統括部門は分社や協業先との資本提携も視野に入れる。18日に会見した宮永俊一社長は「大型客船全体の建造は、コスト面からも当面できない」と説明した。

 三菱重工は2011年に欧アイーダ・クルーズ向け大型客船2隻を受注。相次ぐ工事の混乱などで、15年度末までに合計2408億円の損失を計上した。こうした反省を踏まえ、客船はクルーズフェリーや中小型客船に特化する。

 カーフェリーなどを手がける下関造船所(山口県下関市)の設計・建造能力と、大型客船で得た長崎造船所(長崎市)の大規模内装工事などのノウハウを融合。船舶のエンジニアリング業務を強化し、競合と差別化する。

 商船事業は大型LNG船などを手がける長崎造船所香焼工場が、今治造船や名村造船所と建造業務で提携。下関造船所は今治造船グループの新笠戸ドック(山口県下松市)などと連続建造で組む。専業大手が受注した商船の設計も支援する。船舶事業を統括する鯨井洋一副社長は各社との連携について「技術開発や共同購買などでも提携を検討。詳細は本年度内に結論を出す」と話した。

 合わせて宮永社長は「(当社全体の)事業を伸ばしていくには、新たな挑戦も必要。その中で事業リスクマネジメントの強化を実施していく」と強調。ここ10年で年平均600億円の特損を出してきたが、これを18年度以降に半減する考えだ。

 客船・商船事業の抜本的改革を加速するとともに、案件のリスク管理は全社を挙げて進める方針。その中で、グループで手がける小型ジェット旅客機「MRJ」事業への関与のあり方も検討していく。

最終更新:10/19(水) 11:40

ニュースイッチ