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社説[配偶者控除]「壁」残り、理念かすむ

沖縄タイムス 10/19(水) 9:00配信

 「働き方改革」の目玉として来年度税制改正の焦点となっていた配偶者控除をめぐり、政府は抜本的見直しには踏み込まず、年収要件の引き上げにかじを切った。

 共働きが主流となる中、配偶者の働き方を問わない「中立的な税制」は、またもや見送られる公算だ。

 所得税の配偶者控除は、専業主婦やパートで働く妻など年収が103万円以下の配偶者がいる場合、夫の税負担が軽くなる制度である。

 「103万円の壁」と呼ばれる控除を意識した働き方が、女性の就労拡大を阻んでいるとし、廃止を求める声が強まっていた。

 共同通信社が先月実施した世論調査では、全体の過半数が見直しを支持。29歳以下の若い世代では6割以上が新たな制度へ期待感を強めていた。

 当初、政府税制調査会も専業主婦に有利な現行控除を廃止し、共働き世帯にも恩恵が及ぶ「夫婦控除」の仕組みを模索していた。だが対象が広がる分、所得制限が必要となることから、税負担が増える世帯の反発が避けられないとし、導入は困難と判断した。

 中立的な税制を探ろうと始まった議論なのに矛盾している。

 年明け早々の衆院の解散・総選挙がささやかれ始め、与党内で「増税では世論がもたない」との懸念がもれているのだという。選挙に不利になるからというのが本音なのだろう。

 選挙対策で配偶者控除見直しは看板倒れとなり、改革の理念はぼやけてしまった。 

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 抜本的見直しを諦める代わりに、政府が提起するのは配偶者の年収要件を150万円程に引き上げ、控除対象を拡大する案である。

 その分、労働時間が増える余地はあるが、効果は限定的である。破られた壁の少し上にもう一つ壁ができただけという、その場しのぎの政策ではないか。

 女性の就労拡大を阻む壁は配偶者控除だけではない。

 年収が130万円未満ならサラリーマンの夫の扶養家族となり年金や健康保険料負担が生じない社会保険の「130万円の壁」もある。

 今月から厚生年金と健康保険の加入対象が広がり、大企業では「106万円の壁」となったものの、保険料の支払いで減収となる可能性があるため、仕事時間を短くするか、増収になるまで働くか、悩んでいる人は多い。

 そもそもたくさん働いた人が損をするという制度が、女性の働き方をゆがめている。

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 配偶者控除の見直しは、「女性の活躍」を成長戦略の柱に掲げる安倍政権が力を入れる政策の一つだった。

 しかし先細る労働力の一翼を担ってもらおうと、経済政策の文脈で女性の活躍が語られることに違和感を持つ人は多い。

 働く女性の6割を占める非正規労働者の待遇改善、家事・育児負担を強める長時間労働の是正、待機児童の解消などが一向に進まないからだ。

 女性の就労を本気で後押ししようという政権の意志が見えない。

最終更新:10/19(水) 9:00

沖縄タイムス