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弁護士はなぜ文章に「、」ではなく「,」を使いたがる? 弁護士39人の見解割れる

弁護士ドットコム 2016/10/20(木) 9:26配信

弁護士の書く文章の読点は,なぜ「、」でなく「,」なのかーー。ある弁護士が書いた、そんなタイトルのブログ記事が話題となった。

ブログによると、一般の人からそうした質問を受けたことがきっかけだったそうだ。記事では、行政文書のガイドラインや日弁連のガイドライン、裁判所の判決文が「,」を使用していることなどをあげながら、文章において「、」ではなく「,」を使用する理由をわかりやすく解説している。

このブログは「はてなブックマーク」などで話題となり、「実は気になっていた」「わかりやすかった」など多くの反響が寄せられた。弁護士たちは「、」と「,」どう使い分けているのか。弁護士ドットコムに登録する弁護士たちに意見を聞いた。

●すべて「,」とすべて「、」で分かれる意見

以下の4つの選択肢から回答を求めたところ、39人の弁護士から回答が寄せられた。

1.訴状など法律文書に限らず、作成する文章は全て「,」を使用する → 14票

2.法律文書に限り「,」を使用し、その他については「、」を使用する → 6票

3.法律文書も含め、作成する文章は全て「、」を使用する → 17票

4.その他 → 2票

回答は、<法律文書も含め、作成する文章は全て「、」を使用する>が17票で最も多く、ついで、<訴状など法律文書に限らず、作成する文章は全て「,」を使用する>が14票、<法律文書に限り「,」を使用し、その他については「、」を使用する>が6票、<その他>が2票と続いた。

「,」に統一しているという弁護士には、「裁判所の判決の表記に合わせている」という理由が目立った。「、」で統一している理由としては、「日本語として自然」という理由が目立った。「、」を使用していたが、「修習の時、指導にあたった裁判官に徹底的に(『,』に)直された」と振り返る弁護士もいた。

今回の回答のうち、自由記述欄で意見を表明した弁護士25人のコメント(全文)を以下に紹介する。(掲載順は、<作成文書は全て「,」を使用>→<作成文書は全て「、」を使用>→<「,」と「、」を使い分ける>→<その他>の順)

●作成する文章は全て「,」を使用

【秋山 直人弁護士】元々は裁判所の判決などの表記にあわせて「,」を使用していましたが,そのうちに,「,」でないと落ち着かなくなって,裁判所用文書以外でも「,」を使っています。日本語としては「、」「。」の組み合わせの方が自然な気はしますが,すっかり「,」「。」の組み合わせに慣れてしまっているので,いまでは,他の人が書いた準備書面等で「、」が使われていると,ちょっとイラっとします。

【石井 康晶弁護士】裁判所に提出する文書で「,」を使うことから、普段から「,」に統一することで癖を体に染み込ませています。なぜ日本語の文書で「,」を使うのかは正直良くわかりませんが、「形式とはそういうもので理由などないのだ」と受け止めて深く考えておりません。どちらでも良いとは思いますが。なお、このコメントでは「、」を使っていますが、句読点は「、」にせよとの注意書きがあったためです。

【中村 伸子弁護士】以前は,あまり意識しておりませんでした。子どもが小学生の頃,国語の教科書に,横書きでは「,」を使用しましょうと指導されていること,また,裁判所作成の横書きの文書が,すべて「,」とされていることに気づいてからは,意識的に,全ての文章で「,」を使用するようになりました。もちろん,弁護団などで共同して書面を作成する場合などでは,弁護団の方針に従います。

【山元 浩弁護士】裁判文書等公文書の作成方法として公表されているものが「,」ですから、公表されてからは私は横書きはそれに従っています。「、」は縦書きには用いていますが、慣れると横書き文書に「、」は形が悪いと感じて気になるようになりました。形式的なことなので、公表された形式があればそれに従っていく方が良いと思い、私は複数の弁護士と文書を作成する際は,置き換え機能で全部「,」に統一しています。

【浅野 正久弁護士】裁判所提出文書についてはA4横書き変更に際し最高裁から「,」使用との規準が示された。官公庁提出文書は文部省や事務次官会同の示した公用文書き表し方の規準が「,」としていた。ワープロソフトでは「,」に設定すると「、」を打つのが面倒になる。縦書き時代「、」に慣れているが,元々日本語の句読点の決まり自体がそれほど明確なものでもないので,「,」に統一している。

【徳永 賢太郎弁護士】習慣です。どちらでも良いとは思いますが、「、」と「,」が混在する文書になってしまうと体裁が悪いかなと感じますので、そのようなことがないようにいずれかに統一した結果、私は「,」を常用しています。使用する書式如何によっては「、」が使用されているものもありますから、そういった場合には置換機能を利用して統一しています。

【夏目 邦彦弁護士】個人的にはどちらでもいいのではと思います。どちらでも特に違和感は感じませんし。しかし、うろ覚えなのですが、たしか、公的な文章作成には,句読点の使用法として、コンマと丸を使用した方がいいというようなそのような指針が作成させており、そのやり方にしたがっても特に負担ではないので、コンマを使用しております。

【川面 武弁護士】左横書き公文書(戦前は右横書きが多用されていたようです。)において「,」を使うことは,昭和27年の内閣官房長官依命通知で示されたルールです。一部で勘違いされているような,公文書が縦書きから横書きに変更された際に,急遽決められたものではありません。なぜ60年以上前から決められているルールにあえて従わないのか全く理解できません。パソコンの設定も「,」にしているので,本サイトが定めているおかしな注意書きにも従っていません。日本語として「、」が自然との意見は,縦書き文書においてのみ妥当する話です。

●作成する文章は全て「、」を使用

【今西 隆彦弁護士】公式文書は、縦書きが横書きになったことを契機に、句読点をカンマやピリオドに変更したようですが、縦書きが横書きにと様式が変わったとしても、日本語は日本語ですから、それが突然変わるのはおかしいと個人的には思っています。他の方が利用されるのは一向にかまいませんが、私は公用語が英語にでもならない限り、カンマとピリオドを日本語の文章に使おうとは思いません。

【菅 一雄弁護士】単純に、テンの方が読みやすいと思うので。裁判所向け文書に関しては、裁判官がどう感じておられるのかは気になります。裁判官はカンマの世界で過ごしておられるわけですから、「カンマの方が読みやすい」「カンマの方が美しい」「裁判所の流儀に従わないヤツはけしからん」などともし思われているようなら、カンマに変えますよ。

【武山 茂樹弁護士】私は、日本語であるということと、依頼者の方にとって読みやすいという理由で「、」を使っています。しかし、文書は内容なので、形式にこだわらなくていいじゃないか、どちらでもよいじゃないかというのが私の本音です。裁判官がどう考えているはわかりませんが。ただ、「、」「,」の混在は読みにくい文章になってしまいますので、そこは気を付けています。

【佐々木 光嗣弁護士】裁判所法74条「裁判所では、日本語を用いる。」公用文のルールでは「,」となっているかもしれませんが、上記法の建前に合致するのは「、」であろうと思います。「、」こそが日本語に由来する文字です。裁判官・検察官であれば公用文のルールに従うのもやむを得ないのかもしれませんが、弁護士は右ならえではなく、自己の信念と法に根拠のあるところに従うのが正しいと考えております。

【伊藤 勇人弁護士】句読点なのですから「、」が正しいですね。これも日本語の乱れなのではないかと思います。私は、慣れの問題だと思いますが、起案がきちんとしている弁護士の法律書面は「、」の方が自然に頭に入ってきますね。他方でチェックをつけながら読む場合は「,」の方がしっくりくるような気もしない気もしないといったところでしょうか。公用文書といっても、市町村は税務署では「、」を使っているものもあります。

【中尾田 隆弁護士】役所の文書は、多数の職員により多数の文書が作成されます。そのため表記がバラバラだと見づらいという問題があります。弁護士も文書を分業で作成する場合には、ルールを決めた方が良いでしょうが、個人ですべて作成する場合は「、」も「,」も好みだと思います。私は「、」を使っていますが、なんとなく日本語らしいから、という情緒的な理由です。

【川島 英雄弁護士】日本語として「、」の方が違和感がないという理由と、一般の方に馴染みのある用法の方がよいと思うので使用しています。裁判所では「,」が通常であることも知っていますが、「、」も許されるということも知っているので、特に問題ないと考えています。裁判所は、ただでさえ一般の方から縁遠い存在だと思われています。こういう言葉の使い方から一般の方に近付こうとしなければ、ずっと縁遠いままになってしまうのではないでしょうか。

【山本 毅弁護士】日本語の文章には、カンマは全く合いません。句読点を正しく使用すべきは、当然のことです。カンマを読点代わりに使用するのは、最高裁の事務総局が横書きの判決文の作成方法として定めたのだろうと思いますが、およそ日本語を大切に扱う配慮に欠けています。それを弁護士が無批判に使用するのは、とても情けないことであると考えます。依頼者にとっても違和感を抱かせるのではないかと考えます。

【杉山 伸也弁護士】新人のころはイキがって「,」を使ってたけど(笑)、今は「、」です。特に深い理由はなく、単にその方が日本語の作法として自然だから。読点にどちらを使っても裁判の結果に影響が生じるわけではありません。件のblog記事の先生の気持ちはもちろん分かりますが、迷信程度にしか思えません。私の感覚では、些細なこととはいえ、そこまで裁判所に対し卑屈な意識を持つことは、むしろ弁護士として何か大事なものを置き去りにしているとすら感じられます。

【古家野 彰平弁護士】弁護士が作成する書面は、公用文ではありませんので、「、」を用いています。依頼者にとっても、その方が違和感なく読んでいただけますし。なお、裁判所から文書データの提供を求められた場合には、「、」を「,」に一斉変換すればいいだけのことです。逆に、「,」を「、」に一斉変換する場合には、数字の「,」まで「、」になってしまい面倒なので、「,」は使いません。

【荻埜 敬大弁護士】裁判所が「(全角コンマ)」を使うのは承知の上です。しかし、日本語としては「(全角読点)」が正しいと考えます。日本語として正しい表現で、書面を作成すべきです。また、弁護士は裁判所や役所と時には対峙する仕事です。そのため、表現においても必ずしも迎合すべきでないとの弁護士としての姿勢を示す意味もあります。したがって、私は「(全角読点)」を使用しています。

【中村 晃基弁護士】既に他の方が指摘されているように、公式文書は、縦書きが横書きになったことを契機に、句読点をカンマやピリオドに変更したようです。ただ、世の中で出回っている横書きの文章の大部分は「、」になっていると思いますし、縦書きと横書きで区別すべき理由も無いと思いますので、全く躊躇無く準備書面等でも「、」を使っています。判決を引用するときは、原文が「,」ならばそのままにしています。当然ながら修習生時代は、裁判所・検察庁のルールに従って「,」を使っていました。

●法律文書に限り「,」を使用し、その他については「、」を使用

【岡田 晃朝弁護士】基本的に、日本語として「,」はおかしいと思いますので、「、」を使います。もっとも、法律書面では「,」を使うことが多いので、一応はあわせております。「,」はカンマであって、句読点ではないので、日本語としておかしな表現であるとは思いますが、多数の法律書面が「,」で書かれているので、殊更に表現方法で他の法律書面と違う表記にすることによるリスクを避けようと考えております。

【濵門 俊也弁護士】オピニオンをみますと、いろいろなお考えがあるのだなと痛感します。日本語は難しいです。当職が「,」と「、」の区別を意識させられたのは修習生の時です。修習生の当時はあまり意識することなく使用していたのですが、裁判修習(とくに民裁)の時、ご指導していただいた裁判官に徹底的に直されました。それ以来、法律文書には「、」ではなく、「,」を使用しています。相手方の書面に「、」が使用されていますとやはり気持ち悪いですね。

【徳永 祐一弁護士】「郷に入れば郷に従え。」で、法律文書では「,」「。」を使います。ただ、一般的には「、」「。」の方が違和感がないと思われますので、その他については「、」「。」を使います。なお、理系の論文などでは「,」「.」が使われますね。色々な「郷」のルールがあって面白いところです。「、」「.」を使う業界は見たことがありませんが。

●その他

【清水 陽平弁護士】デフォルトの設定は「,」(カンマ)であり、基本的にはこれを用いますが、ファーストドラフトを勤務弁護士が行った場合、「、」(読点)が使われいることが多いため、それに併せて「、」を用います。このように元から使われていたものをそのまま使う形です。なお、ネット上に投稿するものについては、「,」だと違和感が非常にあるため、「、」を用いています。

【垣鍔 晶弁護士】法律文書を裁判所書式に合わせるため,読点については,デフォルトの設定を「,」(カンマ)にしています。そのため,基本的には他の文書についてもカンマを用いています。しかし,代理人弁護士名ではなく,敢えて依頼者本人名義で内容証明等を出すというケースにおいては,素人っぽさを出すために,カンマを使わず「、」を使うように心がけています。

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:2016/10/20(木) 9:26

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