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なぜ人の寿命は122歳までなのか

ギズモード・ジャパン 10/20(木) 8:10配信

医療 vs 自然の限界。これからどうなるんでしょうか?

これまで1番長く生きた人の年齢は122歳。しかも20年前に到達したまま破られていない長寿の記録です。最新の世界人口統計学の分析によると122歳というのは人間が到達できるリミットで、これ以上生きることは恐らく不可能であるということがわかったそうです。

アルベルト・アインシュタイン医学校の分子遺伝学者Jan Vijgさんと彼のチームによる新しい研究が科学誌Natureで発表されました。研究によると人間の寿命には上限があり、それを超えることは恐らくできないだろうということです。過去100年でこれだけ医療が進歩し、平均寿命はコンスタントに伸びているにも関わらず、最高寿命には自然界の限界があってそれを超えられないというのはちょっと驚きです。どれだけ健康的に長生きしても寿命は寿命。ある年齢に達すると人間の体も期限が切れてしまうのです。


これまでの最長寿命である122歳と164日まで生きたのはジャンヌ・カルマンさんという女性。カルマンさんは1997年に亡くなっています。100歳という垣根を越える人の数は増加にあり、それに伴って平均寿命も伸び続けてきたこともあって、科学者たちはカルマンさんの最長寿命はすぐに塗り替えられてしまうと考えていました。でもこの20年間、全く塗り替えられないまま。ここで気をつけたいのは、「平均寿命」と「最長寿命」には大きな違いがあるということです。「平均寿命」は一人の人間がどれくらい生きられるかを意味し、「最長寿命」はある種に属する個体が到達する最高年齢を意味します。

Vijgさんチームが国際死亡データを分析した結果、1980年以降、最長寿命はずっと横ばいだったそう。続いて先進国であるアメリカ、イギリス、フランス、日本のデータが含まれる国際長寿データベースを分析すると、1997年以降の最高齢はカルマンさんで、それ以上の年齢まで誰も生きていませんでした。長寿には限界があるということがわかったのです。

研究者によって作成されたモデルケースによると、やはり寿命の上限を超えて生きる可能性は低いんだそうです。「1万人いるとして、125歳まで生きられるのはたった1人という計算。1万分の1の確率ということになります。ほとんど起こりえないということです」とVijgさんは説明しています。

シカゴ大学の社会学者であり老年学者でもあるS. Jay Olshanskyさんも今回の研究には同意を示していて、近年の医療技術によってさらに寿命が延びていくという間違った考えを持っている人が多いとも指摘しています。

Olshanskyさんは、「研究者たちはこの最長寿命との戦いは収穫逓減の法則を生み出すだろうと言っています。でもこれ以上絶対に無理だという意味ではありません。まだ寿命を延ばす手立てはあります。例えば、タバコや肥満などの有害なリスクを減らすこと。そして格差の減少などが寿命を延ばすことにつながります」と語っています。しかし、これらで大きく寿命が延びるということはないとも話しています。

Olshanskyさんは今回の発見に関して対して驚きはなかったそうです。実は彼は1990年に同じことをすでに予想していたとか。しかし、Olshanskyさんは人間の寿命に「自然の限界」があるというコンセプトには反論しています。一方、Vijgさんは、この限界は自然の力によって発生した遺伝的形質であり、寿命は進化的適応なのかもしれないと考えています。

Vijgさんの提唱する「生まれながらに老化の過程がDNAにプログラムされている説」というのは、遺伝子学的に寿命が決まっていて体の消耗によるものではないという考え方。鳥を例に見てみましょう。ある種類の鳥は2、3年で死んでしまうのに、50年も生きる種類だっています。なので、種類によって寿命はすでに遺伝子学的に決まっているんじゃないかという考え方です。

しかしOlshanskyさんは「Nature News and Views」にて、それは不可能だと反論しています。

進化の産物として老化や死のタイミングがDNAにプログラムされているということは、ありえません。どんな種でも普通に生きてそれを超える年齢になると死ぬというのが最終的な結果だからです。DNAにいつ死ぬかが刻まれているというのは、自動車メーカーが車が百万マイル走行したら時限爆弾が爆発するように設計しておくというのと同じことです。どんな車だってそんな距離を走ることはできません。だから時限爆弾を仕掛けておくなんて意味のないことなのです
Olshanskyさんは「自然の限界」は破ることができると信じています。しかし、現在のテクノロジーでは不可能で、たとえ不治の病の治療方法を見つけたとしても限界を破ることはまだできないと話しています。「最長寿命の現在の壁を乗り越えるには、加齢を遅らせる根本的に異なる何かを見つけなければいけません。私たちが生きている間にその何かを見つけられると私は信じています。」と力強く米Gizmodoに語ってくれました。

そして人間の寿命の延長を明るく見ているもう一人の人物は、人間の寿命の延長を研究する機関SENS Research FoundationのAubrey de Greyさん。寿命の延長は、現在ある限界をどのように変えるのかという質問に対してde Greyさんは、「限界はとてもシンプルな3つの要素のせいで存在しているだけ。老化は全部自分が招いたダメージの蓄積で起こるものなのです」と話しています。

3つの要素とは、タバコを吸っていたとか不摂生なものを食べていたかなどの若い時にしたことが、どのくらい体にダメージを与えるか。そのダメージがどれだけ早く進行するか。そして、そのダメージに対してどれだけ体が持ちこたえることができるか、なんだそうです。現代の医療でこれらを少しは改善することはできますが、体が受けたダメージがひどいと、更なるダメージを防ぐことも難しくなるとde Greyさんは説明していますが、それに対抗できる可能性はあるとも述べています。

むこう10年に開発される新薬でこのフィードバック・ループを断絶することができるでしょう。いろいろな再生薬でダメージの修繕をすることで、進行中のダメージが更にダメージを生み拡大することや、それを起こす病理を阻止することに繋がります
de Greyさんが開発を願うダメージ修繕療法や将来開発されるであろう新薬などの登場は、Vijgさんの提唱する「寿命は決まっている」という説とは相反しています。de Greyさんの説の実現には、CRISPRのようなゲノム編集技術を使った人類遺伝学の劇的な革新や加齢による病気をなくす染色体の導入といった将来的な発展が必要とされます。さらには分子ナノテクノロジーや人工頭脳学の進歩、そしてヒト生物学を変化させるような再生薬なども必要になります。

今回Nature誌に発表された寿命の限界についての研究は、医療技術の状態に関連した現状を想定した規範分析です。しかしde Greyさんや寿命延長可能説を支持する人たちが正しければ、人間がこの先どれだけ生きられるかということに限界はありません。de Greyさんは人間はいつか「不老不死」のような段階に達するだろうと予想しています。

しかし、寿命の限界を破ることができると信じているOlshanksyさんも、ここでは異論を唱えます。

「こういう不老不死が可能になるという話は2千年も昔から今日に至るまでずっと言われてきていることですが、寿命が延びるとしても今までの寿命とそんなに変わらないくらいだと思いますよ」と語っています。

Olshanksyさんは健康的な生活をするという真の目的から意識をそらさないことが重要だと話しています。長く生きられることはボーナスのようなもので、そして健康である場合のみだということです。

「限界があることは認識しなくてはいけません。でも、限界があるからといって健康的な人生を送るための新しい方法を探すことをやめてはいけないと思います。この地球で健康的な人生を送ることは1番有意義で不可欠なことです。努力をやめてはいけません」と説明しています。

もちろん今回の寿命限界説を唱えた著者も、科学者たちはさらなる健康寿命のための介入を発展させていく必要があると強調しています。もし不老不死可能説が現実化されたら、どんな世界になっていくんでしょうか。

images by Sam Woolley/Gizmodo, Dong et al., 2016/Nature

Source: Nature, wikipedia

George Dvorsky - Gizmodo US[原文]

(岩田リョウコ)

最終更新:10/20(木) 8:10

ギズモード・ジャパン