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【インタビュー】ジ・アンサー「ダークなものをポジティヴに。人生で最も大切で価値のあること」

BARKS 2016/10/30(日) 16:48配信

英連邦・北アイルランド出身の4人組ジ・アンサーの通算6作目のアルバム『SOLAS』が完成した。今回は1970年代の英米のブルーズ・ハード・ロック・バンド達からの影響をベースとするサウンドからかなり距離を置いて、以前のアルバムでも部分的に披露してきたアイルランド音楽の要素をよりいっそう押し広げるような作風を採っている。言わば実験的とも言える仕上がりであるが、ゲール語で“光”を意味する単語“solas”をタイトルに掲げたこの新作について、ギタリストであるポール・マホンが語ってくれた。

◆ジ・アンサー画像

――新作『SOLAS』が完成しました。過去の5枚とはかなり印象の異なる仕上がりですが、アルバム制作前に「異なるものを作ろう」と明確に意識していたようですね。

ポール・マホン:2015年の夏、ホワイトスネイクとのアメリカ・ツアー終了後にこっちへ戻って来た時、バンドとして岐路に立っているような気がした。まず、俺達のアルバムはどれもが違うサウンドだし、実際アルバムに取り組む度にそれ以前にやったこととは異なるものをやろうとしてきた。それでも、熱心なリスナーでなければその違いがさほどわからない程度だったかもしれない。しかし今回は、過去5枚のアルバムを聴いてサウンド的に同じだと感じていた人達にも、「違うサウンドになっているな」「今回違うものを作ったな」と感じてもらえるような作品を作ろうというのが、今回の俺達の目標のひとつだった。それでいて、言うまでもなく、ジ・アンサーらしい作品を作りたかった。ああ、だから、違ったことをやろうというのが俺達の今回の目標のひとつだったのは確かだ。

――ヘヴィでハードなロック、ギター・リフ主導のロックから離れた曲が多く、そういった曲にはアイリッシュ音楽の要素が強く出ています。

ポール・マホン:ああ。

――色々な経験やその時の感情を経た結果、人生や自分自身、故郷というものを強く意識するようになったそうですが、やはり大きかったのはコーマック(ニーソン/Vo)の辛い経験と彼がそれを乗り越えたことが大きかったのでしょうか? 彼と彼の奥さんに長男が生まれたそうですが、生まれてすぐ心臓に問題があることがわかり、手術を受けなければならなかったのだとか。

ポール・マホン:そうなんだよ。

――息子さんは4ヵ月も集中治療室で闘っていたと聞いています。

ポール・マホン:そうだな、ひとつひとつ順番に説明するね。まずは、全ての出発点はとにかくさっきも触れたように、「異なるサウンドのものを作ること」だった。そして、それに加えて、これは言うまでもないことだけど個々のメンバーの家族の状況があり、それもまたこのアルバムの曲、曲作りやそのマテリアルなどに影響を与えていった。だから言うまでもなく、コーマックが経験していたこともまた、今回影響しているのは確かだ。彼の息子ダーヴォックは、予定日よりも3ヵ月早く誕生し4ヵ月ほど病院にいた。それもあってコーマックはその後、ビッグでラージでロックなアルバムを作る気分には、すぐにはなれなかったんだと思う。だから、それもまた今回のアルバムに影響している。それから君の指摘したアイリッシュ音楽の要素についてだけど、「ケルティック・ミュージックをもっと探求しよう」とこれまでにも何度も話し合ってはいたし、実際過去に何度か少し取り組んでもいる。例えばセカンド・アルバム『EVERYDAY DEMONS』(2009年)のセッション時に「Lost」という曲を作ったんだが、最終的にはアルバムに収録されることはなかった。ちょっとケルティック・タイプのものだったが、あのアルバムの他の曲とはどうも合わない気がして、それで結局棚上げになってしまった。でも、いつかまたそういうものを探求したいと思っていて、今回そうするのにちょうど良い時期だと感じた。というのも、バンドの置かれていた状況が、これは繰り返しになってしまうけど、俺達はツアー終了後いつも音楽やお互いから離れる時期を少し設けていてね、ちょうどその頃ミッキー(ウォーターズ/B)のところにも女の子が誕生して、それで、何て言うんだろう…バンド結成後初めてと言ってもいいほど、バンドよりも大事なことがメンバー中の数人に起こってしまった。それで、いつもよりも長い間メンバー同士お互いに離れていたんだ。そして結局、作曲のセッションはコーマックと俺の2人で週に一度かニ度会って書く、という感じから始まったんだけど、今回の作業はこれは彼にとってはセラピーのようなものだったと思う。自分が経験していた辛い日々から離れてリラックスできたんだ。そして、ケルティック・ミュージックは彼にとって心地好いものだったんだと思う。今回の作曲セッションは2人で「楽しむために」始めたようなものであり、「さあ、今日からニュー・アルバムを作ろう」なんて言うこともなく締め切りも設けなかった。お互いにどんなアイディアを持っているかを見せ合って楽しむために集まり、そしてレコーディングしてみただけ、という感覚だったね。俺達とアコースティック・ギターだけでアレンジしていき、そこにマンドリンを足してみて、それが上手くいきそうだったのでそのまま使うことにして…という感じだった。そうやりながらどんどん作り上げていったんだ。音楽面でジ・アンサーらしいアルバムを作ろうとか、ヘヴィでなければならないとかブルーズでなければならないとか、そういった先入観は持っていなく、何でもやってやろうというアティテュードで取り組んでいたし、コーマックがアイリッシュで歌ってみたいというので、それもまた「オーケー、やってみよう」ということになり、それで俺はマンドリンやブズーキを使ってアコースティック・ベースのものをやってみた。エレクトリック・ギターをプレイしている時もラウドなプレイはしなかったし、1分もの長さのギター・ソロを全ての曲に入れる必要はないと思ったし、とにかくエレクトリック・ギターをプレイする時も異なるアプローチを採ったんだ。異なるタイプのディレイやトレモロを採り入れながら、より多くのテクスチャーを足してみた。その結果、アプローチがよりアトモスフェアリックでシネマティックになった。音作りもこれまでとは違っている。過去のジ・アンサー作品はもっと生々しくて、メンバー全員で部屋に集まってライヴでプレイし、オーヴァーダブも最小限に抑えて、とにかくライヴ・バンドらしいサウンドを生み出すことに集中していた。でも、今回それは問題視しなかった。俺達全員が1つの部屋にいてプレイしているような、生なサウンドを出さなくてもいいと思っていた。実際、作っている時の大部分の時間は一緒にはいなかったしね。それに、そう、俺達は過去5枚のアルバムを出していて、それだけ多くの経験を積んでいる。数多くの素晴らしい人達と仕事していて、その彼らから様々なことを学んできていて、その知識を使うことができているので、今ではそれだけより良いプロダクションを生み出すことができるとも思っている。

――コーマックの息子さんは、今はすっかり元気なのでしょうか?

ポール・マホン:ああ、非常に安定した状態にある。開胸手術も成功し、7~8ヵ月ほど前に退院して今は非常に元気だ。ああ、ダーヴォックはとても元気にしているよ。

――とても良かったです。あなた方も喜んだでしょうね。

ポール・マホン:ああ、言うまでもなく。バンドの雰囲気は今ではずっと穏やかだよ。

――アルバム・タイトルの『SOLAS』はゲール語で“光”を意味する単語で、アートワークも光を表わすケルトの象徴なのだとか。闇から抜けて光をまた感じている、ということを表わしているのですね。

ポール・マホン:ああ、そのとおり、あれは光を表わすケルトのシンボルだ。そして今言われたような、“トンネルの向こうの光”のようなものも表わしている。

――「Tunnel」という曲もありますね。辛い体験をトンネルに見立てて、そこから脱け出したからこその“今”があるのではないかと。

ポール・マホン:ああ、まさにそのとおりだよ。そして『SOLAS』のタイトル・トラックについてだけど、元々ジェイムズ(ヒートリー/Dr)が持ってきたアイディアから始まっていて、前作で取り組んでみたものの、どういうわけかその時は結局アルバムにはあまり上手くフィットしないように感じた。その時にはメロディも歌詞も未完成だったんだけど、そのデモにはその後もずっと取り組み続けていた。少しずつ書き足したりしていたね。曲の二番に入っている“solas”というくだりを繰り返すというアイディアも彼のものなんだけど、彼はアイルランドの文化に非常に詳しくて、コーマックと同じくゲール語も少し話せる。だからこの「Solas」という曲に完璧なフィーリングを加えることができたし、これをアルバム全体のシンボルのようにも感じていた。今回のアルバム作りには俺達が経験したことや思い、それに自分達のルーツが込められているけど、この作品にまつわるものにはこの“solas”という単語が相応しいと感じたんだ。

――「Beautiful World」はマッシブ・アタックのコラボレーターとして知られるプロデューサー/ソングライターのニール・デイヴィッジも作曲に関与していますね。彼との共同作業はどのようなきっかけで行なわれたのでしょうか?

ポール・マホン:ニールとはマネージメントが同じということもあり、数年前からの知り合いで何度か会ってきたんだ。何年か前、彼が確かコンピューター・ゲームの仕事をしている頃だったかな、その時、彼が当時取り組んでいた映画音楽でコーマックに歌わないかという話を持ちかけてきた。それでアイディアをいくつか送ってきてくれたんだけど、それが最終的に今回のアルバムの「Beautiful World」になったんだ。だから、最初はサウンドトラック用のアイディアだったんだけど、それをアコースティックであちこち少し変えたり足したりしながら、作り変えながら再構築していった。沢山のコード・チェンジがあったので、メロディを上手く作り上げるのは非常にチャレンジングな作業だった。特に前半部分は、アルバムに収録されているあの形にするまでは、非常に大変だったね。アンディ・ブラッドフィールドがミキシング作業に加わってくれて本当に良かったと思う。彼は過去にニールと仕事をしたことがあり、彼の音楽の幾つかをミックスしてきたし、俺達とも仕事をしたこともあるからね。エレクトロニック・ミュージックとサウンドトラックのことをよく理解している上に、非常にラウドでヘヴィなロック・バンドにも精通しているユニークな存在であり、今回この2つのアプローチを上手く繋ぎ合わせる手助けをしてくれたんだ。

――「Battle Cry」ではコーマックはとても晴れやかな声で歌っており、曲終盤のアイリッシュなギター・アレンジも軽快です。完成までに色々と手をかけたようにも聞こえますが、実際のところいかがでしょうか?

ポール・マホン:ああ、そのとおり。あれは本当に大変な労力を要した曲だった。ちょっとやり好きではないかと思うこともあったくらいに、様々なプロダクションに色々と異なるアイディアなどを採り入れながら…。でもミキシングを行なった時、全てが見事に結びついたのを実感したのを覚えている。実は『REVIVAL』(2011年発表の3rdアルバム)の時にこれをレコーディングしたんだけど、その時はもっとファストでもっとロックで、シン・リジー・タイプの雰囲気が少々あった。それにこうして再び取り組んだわけだけど、今回キーを少し変えたりした。アイリッシュの影響を受けているけど、同時にラテンっぽさも少々ある。最初のヴァージョンでは、あまりにも多くの影響を盛り込み過ぎてしまった感じだったが、完成されたヴァージョンでは、全てをひとつに上手くまとめることができた。それに、異なるギターのテクスチャーが沢山含まれている。アコースティックのところもあればバンジョーのようなタイプのギター・プレイもある。こういうのが出て来るのは俺達のレコードとしては初めてだね。実際はバンジョーではなく、俺がディレイで作ったものなんだけどね。それに今回はストラトキャスターを全て曲で使用している。過去5枚のアルバムではストラトキャスターは確か2曲でしか使ってこなかったけど、レスポールとはまるで異なるトーンを出すから、今回はそれを色々と探求してみた。この「Battle Cry」では間違いなく、そういった色々な面、色々な実験を聴くことができるだろう。

――それらの曲をはじめポジティヴな曲が多いです。先程あなたは確か“セラピー”と表現しましたが、コーマックにとってこの新作を作るという行ないは、ある種の浄化という過程だったかもしれません。

ポール・マホン:ああ、まさに。彼には今回、直面しなければならないことが数多くあり、それをクリエイティヴな方法で実行に移すことができたんじゃないかな。ダークなものをポジティヴなものに変えたりしてね。それは人生の中で出来る、最も大切で最も価値のあることのひとつだと思う。だから、彼は全てを終えた現在、これまでになくポジティヴな気持ちでいると思うよ。

取材・文:奥野高久/BURRN!
Photo by Charlie Gray

ジ・アンサー『ソーラス』
2016年10月26日日本先行発売
【CD】¥2,500+税
※歌詞対訳付き/日本語解説書封入
1.ソーラス
2.ビューティフル・ワールド
3.バトル・クライ
4.アントゥルー・カラー
5.イン・ディス・ランド
6.シーフ・オブ・ライト
7.ビーイング・ビガッテン
8.レフト・ミー・スタンディング
9.ディーモン・ドリヴェン・マン
10.リアル・ライフ・ドリーマーズ
11.トンネル
《ボーナストラック》
12.イン・ディス・ランド(アコースティック)
13.ライト・イン・ダークネス(デモ)
14.マネー(カヴァー)
【メンバー】
コーマック・ニーソン(ヴォーカル)
ポール・マホーン(ギター)
マイケル・ウォータース(ベース)
ジェームス・ヒートレー(ドラムス)

最終更新:2016/10/30(日) 16:48

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