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北陸新幹線延伸、くすぶる火種 ルート案で敗れ…京都・滋賀に残った不満

産経新聞 1/11(水) 8:30配信

 北陸新幹線で未着工の福井県・敦賀-新大阪の「大阪延伸」ルートは昨年末、3案あったが与党内の審議で福井県・小浜から南下して京都を経由する「小浜京都ルート」に決着した。ただ「舞鶴ルート」を推してきた京都府、「米原ルート」を主張していた滋賀県それぞれから強い反発を受ける。小浜京都ルート建設には両府県の負担が必要なだけに、敗者とはいえ、ないがしろにはできない。

 「沿線自治体への配慮が必要」

 「地元の自治体の皆さんに理解をいただくため、どうしたらいいかということの検討が必要だと思う」

 昨年12月20日、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)の会合終了後、座長を務める茂木敏充・自民党政調会長は、敗れた地域への配慮をみせ、自治体間で激しい綱引きがあったことをうかがわせた。PTの下部組織で北陸新幹線延伸ルートを議論してきた敦賀・大阪間整備検討委員会は、京都府選出の西田昌司・参院議員(自民)が委員長を務める。

 西田氏は将来の「山陰新幹線」の実現への布石として、京都・舞鶴を経由する舞鶴ルートを提唱していた。しかし検討委で「我田引鉄といわれないよう、公平に議論を進めてきた」とする。それでも各自治体の誘致合戦は熱を帯びたものになっていた。

 候補となった3ルートを比較するため、国土交通省が昨年11月11日に出した試算では舞鶴ルートの費用対効果は投資に見合うとされる「1」を下回り、この時点で敗色濃厚となった。しかし同ルートを推す京都府は同月30日、地域の将来性を踏まえた「地域経済効果」という独自の試算を持ち出し、投資に見合うとの結論を発表するなど抵抗。西田氏が「検討する価値がある」と持ち上げる場面もあった。

 一方、滋賀県は昨年9月、米原駅(滋賀)で東海道新幹線に乗り換える米原ルートが、最も費用対効果が高いとする試算を独自に発表。さらに三日月大造知事は、石井啓一国土交通相、菅義偉官房長官を訪問し、ルートの優位性を説くなど“積極外交”を繰り返してきた。

 小浜京都ルートが適切と結論づけた与党検討委の中間報告では、舞鶴を通る「山陰新幹線」、滋賀県を通る「北陸・中京新幹線」計画の検討着手が「必要」と明記。敗れた京都府、滋賀県の顔を立てる配慮がなされた。敗れたとはいえ、両府県が無関係になるわけではないからだ。

 滋賀県は小浜京都ルート建設に伴う「並行在来線」問題のカギを握る。北陸新幹線などの整備新幹線では、ルートと似た区間を走る在来線の経営はJRから切り離され、自治体が出資する第3セクターに移すのが一般的だ。小浜京都ルートでは、滋賀県西部を走るJR湖西線が対象と想定されている。しかし、新幹線は滋賀県を通らず恩恵がないのに、経営負担だけを押しつけられることに対する県内の反発は大きい。

 PTでは、同意を得る具体的な手法について今後検討を進めるとしている。西田氏は、JR西が小浜京都ルートを提唱していたことを踏まえ「JRに勝手に決められないようにしたい」とクギを刺す。京都府は費用負担を問題視する。小浜京都ルートは主に山間部を走るため府が受ける恩恵は少ないが、現行制度では走行距離に応じた負担を強いられる。山田啓二知事は「府民に生じる便益に従った負担が筋」と主張。負担のあり方は今後の議論の対象となる可能性がある。

 全線開通の効果を最大限発揮するため、関係者は「早期の着工が必要」と口を揃える。今後ルートの詳細な調査に2年、環境影響評価に4年がかかる。その間与党では2兆700億円にのぼる建設費確保についての議論を進めるが、まずは「地域の同意」取り付けという難題に着手する必要がある。

最終更新:1/11(水) 10:23

産経新聞