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努力はどう報われるか-人は、どのように成長していくのか?

ZUU online 1/12(木) 18:55配信

多くの人が、日々、学問や仕事など、様々なことに努力している。注いだ努力が、すべて成果に結びつけばいいのだが、そう簡単にはいかない。たくさん勉強や訓練をしたからといって、必ず成功するとは限らない。ただ一方、あるとき、突然、勉強した分野の理解が深まったり、仕事のスキルが飛躍的に向上するといった、突き抜け感を味わうこともある。

これは、傾けた努力が、比例的には成果に結びつかないことを表すものと考えられる。このような努力と成果の関係を表す、有名な算式がある。薬学の分野で、「シグモイド関数」と呼ばれるもので、服用する薬の用量と、それによる作用の関係を表している。その算式を、グラフにする。

この関係を見ると、薬の用量と作用の関係は、単純な比例関係にはないことがわかる。薬が少量のうちは、少しぐらい用量を増やしても作用はそれほど増えない。しかし、薬がある量に達したら、作用は急激に増える。そして、その後は用量を増やし続けても、作用の伸びは小さい。

このように、シグモイド関数は、S字をしているため、S字曲線とも呼ばれている。薬学では、医薬品の作用や副作用について、この関数を用いて薬の毒性や飲み合わせ等の研究が行われている。

このS字曲線は、薬学以外でも見ることができる。例えば、感染症が、それに対する免疫を持たない社会の中で拡大していく様子もS字曲線だ。ヒトからヒトにうつる新しい感染症にかかった人がいたとする。まず、その人の家族とか、友人とか、周囲の人たちに、感染が拡大する。この段階では、全体のうち、感染症にかかった人の割合はまだ少ない。しかし、2次感染、3次感染、…と進むうちに、感染者の数は、急激に増加する。その後、多くの人が感染して、この病気に対する免疫を持つようになると、感染者数は、それほど増えなくなる。

これは、新製品の普及などにもあてはまる。例えば、家電製品や、情報端末などは、その典型と言える。日本では、昭和40年代のカラーテレビの普及をはじめ、平成年代以降のパソコンの普及、そして近年のスマートフォンの普及など、いずれも、このS字曲線となっている。このように、S次曲線は、病気の感染や、製品の普及の様子を表しているため、成長曲線とも呼ばれる。

実は、S字曲線は、多くの人が日常的に経験している。通勤や通学の際の、電車を考えてみよう。電車が、駅と駅の間を進むときのスピードは、一定ではない。駅を出発すると、電車が徐々にスピードを上げていき、一定の速度に達する。その後、暫く、その速度のまま進む。そして次の駅に近づいてきたら、徐々にスピードを落としていく。最後は、静かに停車する。車の運転も、同様だろう。

時間を横軸に、進行距離を縦軸にとって、S字曲線を描くように進むことで、スムーズで効果的に加速や、減速を、行うことができ、乗り心地の良さが実現できる。このように、S字曲線を理解し、それをうまく使うことで、効率よく、スマートな行動を行うことができる。

はじめの話に戻ろう。今度は、スポーツを例にとって、努力を横軸、成果を縦軸に置いてみる。初心者のうちは、少しぐらい練習しても、なかなか試合や競技大会で、成果に結びつかない。しかし、努力は決してムダではない。努力を重ねた結果、ある状態に達すると、飛躍的に上手になり、試合等で結果を出せるようになる。これは、よく言われる「一皮むけた状態」を示す。そして、更に高みを目指して、努力を続ける。しかし、なかなか完璧なプレーには至らない…。スポーツ選手は、正に、この曲線のように、成長していくと言えよう。

それでは、S次曲線をどう活用したらいいだろうか。例えば、新製品のマーケティング担当者は、市場への浸透具合が、S字曲線のどの辺りにあるかを、常に意識していると言われる。同様に、勉強をする受験生・学生や、練習をするスポーツ選手などは、S次曲線を意識付けに活用することができる。「いまは、努力の割に、なかなか芽が出ない。でも、それは、自分がS字曲線のこの辺りにいるからで、この努力を続けていけば、この部分に達して、一気に実力が伸びるはず…」など、と。

努力をしているのに、なかなかうまくいかない。そんなときには、S字曲線を眺めて、自分の現在の位置を確かめてみることも、有益ではないかと思われるが、いかがだろうか。

篠原拓也(しのはら たくや)
ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

最終更新:1/12(木) 18:55

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