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「もう戻るところがない」働くがん患者が抱える恐怖

AbemaTIMES 1/12(木) 14:35配信

(C)AbemaTV

 新たに「がん」と診断される人の数は年々増加傾向にあり、1985年には33万1485人だったのが、2012年には86万5238人にも上っている。

 そんな中、難病やがんの患者が働きやすくなるための制度が動き始めた。東京都は7日に行われた新年度の予算査定で、難病やがん患者の復職支援や通院休暇制度を導入する企業への助成制度を全国の都道府県に先がけて導入する方針を固めた。予算案には2億円が計上される見通しだ。

  小池都知事は「がん患者や難病の方は、抗がん剤治療などで急に休まなくてはいけなくなることがある。そうなった時に会社をクビになってしまうとダブルショックになる」と話し、助成制度の必要性を強調した。

 実際に、がん患者が発症前と同じように働くということは困難なのが実情だ。

 東京都の松崎匡さん(47)は、7年前に肝細胞がんが発覚。診断後、すぐに会社を退職したが、今ではその判断を後悔しているという。

 当時、福祉関係の専門学校で講師として働いていた松崎さんは、「卒業式までは休まず勤務したかったが、回復は無理だと思い、学生に対しても無責任だから辞めるしかないなと。今となっては“治らない“と思い込んでいたのがもったいなかったなと思います」と振り返る。

 無職になることを覚悟した松崎さんだったが、入院時に一番辛かったことは、どこにも所属していない、ということだったという。退院後に戻る場所として思い浮かべたのは職場。「でも戻るところはもうない。どうしたらいいんだろう」と、目の前が真っ暗になったという。

 退院後、一度は社会復帰したものの1年後に再発。それを機に、新たなチャレンジを始めた。「リスクは高い」と思いながらも「“がんになって手術した私を雇ってください“と面接に行くのと同じくらいのハードルなんじゃないか。理想の福祉事業所を作ってみよう」と起業に踏み切ったのだ。

 しかしそれから1年、事業が軌道に乗り始めた矢先、またしても悲劇が訪れる。

 2012年11月、ステージ4のガンが再発。松崎さん曰く「最後の段階のがん」だったという。担当医に「一年は持って欲しい」と話すと、「(余命は)半年です」と宣告された。手術の結果、退院はできたものの、別の会社を起業し、福祉事業所のコンサルタントや研修講師、病室でもできる執筆の仕事を行っている。

 松崎さんにとって、“働くことの意義“とはなんだろうか。

 「自分がこの世の中に、いていいんだと認めてもらえる場所。何もないところを一度味わった人間としては、何か社会のお役に立てているかと問いかけることができるのが仕事」。

 がん患者の就労問題に取り組んでいる一般社団法人CSRプロジェクト代表理事であり、自身も乳がんの経験がある桜井なおみさんは「現行法はがん患者の雇用の継続を企業などに求めているが、これはあくまで努力目標。中小企業など資金的に厳しい企業は企業側のメリットになる内容が法律に定められれば環境改善もされるのではないか」と、がんの治療と仕事の両立に必要なポイントを指摘する。

 自身もがん闘病の経験があり、政府の「働き方改革実現会議」委員で女優の生稲晃子さんは「主治医、会社、心理カウンセラーなど、患者に関わるプロが連携をとれるシステムが必要になってくるだろう」と語る。

 がん患者は病気への恐怖だけでなく、自分が戻る場所が社会にないという恐怖も抱えている。今後、いかにして患者たちが働きやすい社会を構築するのか。東京都の取り組みの成果が注目される。

最終更新:1/12(木) 14:49

AbemaTIMES