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中国、金正男氏見捨てた? 護衛チーム機能せず

産経新聞 2/16(木) 7:55配信

 弟の金正恩氏との後継者争いに敗れた金正男氏が、中国の庇護(ひご)下に入ったのは2000年ごろだ。中国当局から守られながら、北京、マカオと東南アジアを行き来する生活を送っていた。3カ所にはそれぞれ女性と子供がおり、中国政府の息がかかった企業から生活費の一部も提供されていたといわれる。

 中国にとって正男氏は対北朝鮮外交の重要な切り札だった。父親の金正日氏が健在だった時代には“人質”的な側面があり、正恩氏の時代になってからは朝鮮半島での有事や中朝対立に備えるため、「いつでも首をすげ替えられるトップ候補」ともいうべき存在となった。しかし、正男氏を庇護していることは正恩氏の対中不信を募らせ、中朝関係悪化の一因ともなった。

 正男氏は中国国内で行動するときは比較的自由だが、シンガポールやマレーシアなど東南アジアで移動する際には、中国は護衛チームを送り、万全の態勢を敷いてきたといわれる。韓国の情報機関、国家情報院も「正男氏と家族の身辺は中国が保護している」との認識を示してきた。

 しかし、中国当局の護衛チームは今回、なぜ機能しなかったのか。

 マレーシアメディアが掲載した殺害当時の空港内の写真には、警護要員らしき人物は見当たらなかった。中国当局にとって正男氏を守る意味が小さくなり、警備が手薄になったのか。暗殺情報を知りながら、中国が北朝鮮との関係修復のため正男氏を見捨てた可能性さえ否定できない。

 北京で取材した中国の北朝鮮問題専門家に「金正恩氏の訪中実現には2つの障害物を取り除かなければならない」といわれたことがある。一つは北朝鮮が核実験をしばらく実施しないこと、もう一つは正男氏に消えてもらうことだった。

 米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国への配備決定で、昨年から中韓関係が悪化し、中国共産党内で北朝鮮との関係修復を求める声が高まっている。このタイミングで起きた正男氏暗殺は偶然なのか。年内に正恩氏の訪中が実現するか注目したい。(外信部編集委員 矢板明夫)

最終更新:2/17(金) 10:33

産経新聞