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<医薬品>買い取り時、身分確認…卸売業者に義務化

毎日新聞 2/16(木) 20:01配信

 ◇偽肝炎薬問題受け

 高額なC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が見つかった問題を受け、厚生労働省は16日、医薬品の卸売業者に買い取りの際の身分確認と連絡先などの記録を義務付ける通知を出した。今後、罰則のある医薬品医療機器法の改正も検討する。こうした規制強化で、今回の問題発覚前から確立されていた出所が不透明な薬が売り買いされる「裏ルート」の一掃を図る。

 薬機法は薬局開設者と医薬品販売許可を受けた者以外の医薬品の販売を禁じ、違反には懲役3年以下または罰金300万円以下の罰則があるが、買うことを禁じる直接の規定はない。また同法施行規則は、卸売業者や薬局に取引相手の氏名の記録を義務付けているものの、身分確認までは求めていない。こうした法令の隙間(すきま)を縫って、販売許可を持たない医師や患者ら個人から薬を「秘密厳守」で安価で買い取り、市場に乗せて利ざやを稼ぐ商売が成り立っていた。

 15本見つかっているハーボニーの偽造品も、医薬品を即金で買い取る「現金問屋」と呼ばれる卸売業者が初めての取引相手から仕入れ、相手が名乗る名前を台帳にそのまま記入していた。本名でなかったとみられ、警視庁などが店舗に持ち込んだ複数の男女の行方を追っている。厚労省の通知は、継続した取引実績のある相手以外から買い取る際、(1)身分証明書の提示を求めて本人確認する(2)販売業の許可番号や連絡先なども記録に残す(3)添付文書や包装を確認し、異常のある場合は処方しない--ことを求めた。「秘密厳守」などをうたったネット広告の規制や、個人から買った側の罰則などは、今後法改正を含めた議論の中で検討する。【熊谷豪、山田泰蔵】

 ◇業界の自律性も課題…解説

 医薬品の卸売業者に買い取り時の身分確認を義務付ける厚生労働省の規制強化は、長年続いていた現金問屋を介した違法取引を排除するための効果的な対策と言える。だが、これだけで医薬品の流通の透明化を徹底できるわけではない。

 秘密厳守で薬を買い取る現金問屋は、医師の横流しによる医療機関の裏金作りの温床になっていると指摘されてきた。ハーボニーと同じC型肝炎薬ソバルディを巡っては、生活保護受給者が自己負担ゼロで処方された薬を現金問屋に売り飛ばす詐欺事件も起きている。医師や患者が薬を売るのは違法で、身分確認でこうした不正は発覚しやすくなる。

 一方で、店舗販売の許可を持った薬局が余剰在庫を転売するのは違法とは言えず、今後も続くとみられる。特に1本約153万円と超高額なハーボニーは薬局が在庫を抱える負担が大きく、だからこそ偽造品が出回る前から現金問屋による買い取り広告がネットに広がっていた。多様な商売はあっていいが、薬価より割安で、メーカーや大手卸が追跡できない薬の流通は、粗悪品や偽造品が紛れ込む素地にもなる。

 医薬品流通に詳しい三村優美子・青山学院大教授は「高額薬は、一定の要件を満たした薬局に優先して卸すのも一案」と指摘。医薬品の流通の健全化は、安全確保と並んで、公定の薬価に反映される市場価格の適正化につながる。由来不詳の薬を絶対に扱わない業界の自律性も必要だ。【熊谷豪】

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 ◇C型肝炎治療薬の偽造品流通問題

 1月に奈良県の薬局から購入した患者が申し出たのを皮切りに、C型肝炎薬「ハーボニー」の偽造品のボトルが同県と東京都内で計15本見つかった。中身はビタミンのサプリメントや漢方の風邪薬などで、ボトルは大半が正規品。健康被害はなかった。何者かが金銭目的で中身をすり替えて卸売業者に持ち込んだとみて、警視庁などが調べている。

最終更新:2/17(金) 0:28

毎日新聞