ここから本文です

失業、貧困、引きこもり…生活困窮、「心の健康」と連動

読売新聞(ヨミドクター) 2/17(金) 12:14配信

 失業、貧困、引きこもりなどで、福祉の相談窓口を訪れる人の中には、心理面のケアが必要な人が少なくない――。そんな問題意識から、京都大学こころの未来研究センターと千葉市の自立相談支援機関が、生活困窮者の実態を調査し、その傾向を分析する共同研究に取り組んでいる。

 「福祉の専門家と心理学・精神医療の専門家は従来、育成過程も相談窓口も別々だった。しかし、現代社会で生活に行き詰まる人の問題の多くは、両方の領域にまたがり、切り離しては対応できないと感じる」

 研究代表者を務める京都大学教授の広井良典さん(前千葉大学教授)は、こう言う。

 例えば、引きこもり問題。典型的なのは学生時代に不登校になり、そのまま中高年に至るケースだが、最近は、不況で就職先が見つけられず、大学を卒業してから、こもり始める例もあるという。いずれにしろ、親が高齢になって収入が減ったり、亡くなったりすると生活が成り立たない。

 「少年期からの心の問題の要素にせよ、社会経済情勢の影響にせよ、複合的な要因が関わっており、心理的ケアや就労支援、住宅支援などを含む包括的な対応が必要になっている」と広井さん。有効な支援策を考えるために、生活困窮者の重複する課題の傾向を分析しようと昨年4月から、千葉市の自立相談支援機関である「生活自立・仕事相談センター稲毛」と共同研究を始めた。

 まだ研究途中だが、昨年4~6月に相談を受けた78人の抱える課題(複数回答)を集計すると、「経済的困窮」「住まい(家賃など)」「就職」「心の健康」「病気」「家族関係」などが多かった。約7割が、三つ以上の課題を抱えていた。

 配偶者や恋人からの暴力(DV)なども含め、「家族関係」に問題を持つ20人のうち、18人は「心の健康」にも課題があった。「就職」問題を抱える26人でも、約半数の12人は「心の健康」にも課題があった。

 集計した同センター長の菊地謙さん(精神保健福祉士)は「元々の生活保護、就労支援などの公的福祉の対応は、法律・制度で守備範囲を限定してきた面がある。現実に相談に来る人にはコミュニケーション力や行動力が弱い人も多く、縦割り的な対応では済まないことが多い」と話す。

 浪費癖があり借金がかさんで相談に来た60歳男性は、社会福祉協議会の通帳管理サービスを利用することにして家計が安定した。同時に、うつ病も抱えていたため、精神科受診についても菊地さんと話し合った。「支援制度だけでなく、メンタル面の相談にも親身に乗ってもらえてとても助かった」と男性は話す。

 就労などの相談で来た人でも、心の問題を抱えているとみられる場合は、臨床心理士の無料相談会につないだりすることもあるという。

 広井さんは「心理的なケアのようなことは、かつては家族や職場、地域の中で対応されていた。しかし、家族の多様化、都市化、不況、雇用環境の悪化などの流れの中で、その支えが弱まり、『心のケアの社会保障制度』が求められるようになっている。さらに研究を進め、効果的な支援策のあり方を提案したい」と話している。

自立相談支援機関

 失業や病気などで生活に困る人を、生活保護を受ける手前で支える相談窓口。2015年4月に始まった生活困窮者自立支援制度に伴い、福祉事務所のある902自治体に設置されている。一人一人の状況に応じた支援プランを作る。(高橋圭史)

最終更新:2/17(金) 12:14

読売新聞(ヨミドクター)