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新聞・テレビが全く報じない「もんじゅ」と「規制委員会」の真実【金子熊夫×奈良林直×櫻井よしこ】

2015/12/21(月) 12:00配信

WiLL

規制委の手法は世界的に見てもおかしい

櫻井 そうした事情を機構側が規制委に主張しても受け入れられないという状況が見えてくるような事例です。もんじゅの地元の敦賀市や福井県には、規制委のコミュニケーション不足に対する不満があると「福井新聞」が伝えています。渕上隆信市長は「適切な指導があれば、勧告を出すような事態にはならなかったのではないかと述べていますし、西川一誠知事も「これまでの(規制委の)助言に親切さが欠けている」とさえ言っています(「福井新聞」一五年十一月十七日)。
 たしかにもんじゅを扱う機構にも問題があるのでしょうが、規制委の手法は世界的に見てもおかしいのです。

奈良林 一切聞く耳を持ってもらえないと機構の人は嘆いていました。悪意すら感じると。しかも、検査では膨大な資料が要求されます。例えば物差しで寸法を測るにも市販された物差しで測ってはならず、メートル原器で精度が保証されたものを使わなければならない。そのために「この物差しはメートル原器で精度が保証されています」という証明書を作るところからまず始めるのです。
 私が、ある発電所の傍にある駐在検査官の事務所を訪ねると、十万ページ、十メートルの書類が山積みになっていました。

櫻井 厚さ十センチのキングファイル百五十冊分。この電子化の時代、紙書類としては正気かしらと思う量です。

奈良林 その書類も品質保証の対象となりますから、仮に百万字のなかから誤字脱字が一個所でも見つかると、全ての書類が「不良品」「チェック漏れ」で突き返される。いま各原子力発電所でこの書類審査が行われているのですが、規制委はそれと同じことをもんじゅでも要求しているのです。発電所では数十人が品質保証の書類作りに専念していますが、もんじゅでは人手が足らない。そのなかで短期間のうちに膨大な書類作りと確認に追われ、機器の点検も「全てやれ」と言われてしまっている状況です。

櫻井 厚さ十センチのキングファイル百五十冊分は、審査する規制委にとっても大変な分量のはずです。規制委による原発再稼働に向けた審査が大幅に遅れているのも当然です。つまり現状では、審査する側もされる側も十分に対応できていない。規制委も含めて双方が「能力を有していない」状況に追い込まれてしまっている。

奈良林 ある駐在検査官が「私たちは上司にしかられるので、誤字脱字も見逃さないよう、毎日厳しく書類をチェックしていますが、これで原子力発電所の安全性が高まるとは到底思えません」と嘆いていました。アメリカでは検査項目などが全て電子化されていて、パソコンで閲覧が可能です。検査官は抜き打ちで発電所に行きその場で電子ファイルを見て、「この機器を動かして下さい」「あのシステムはどうなっていますか」と現場で実際に見て動かして確かめているのですが、日本では書類を清書することが第一になっている。必ず紙の資料も提出しなければならないのです。

櫻井 それにしても日本の規制委はなぜこのような非合理の極みのような検査法をとっているのですか。

奈良林 なにかトラブルがあった際に紙の資料を証拠として提出するためなのですが……こんなことをやっているのは先進国の中で日本だけです。世界の規制と比べて日本がどれほど遅れているかという事実を国民も知らないし、政府も認識していない。
 私が会長を拝命している日本保全学会のなかにも、「もんじゅの保守点検について機構にアドバイスを続けているけれど、何を言っても対応してくれない」との不満を言う人がいますが、保全計画をまとめて、規制庁と交渉したり、保全計画を整備する中間管理層の人材が機構に不足しているのも大きな要因です。
 軽水炉の再稼働の審査対応では、電力会社では数百人の人が書類作りをしたり、東京に詰めて、規制庁対応をしています。これらのことをできる人が機構には払底しているのです。

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最終更新:2015/12/22(火) 12:31
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