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新聞・テレビが全く報じない「もんじゅ」と「規制委員会」の真実【金子熊夫×奈良林直×櫻井よしこ】

WiLL 2015/12/21(月) 12:00配信

日本では何でもかんでも「大事故」に

金子 こうした問題点はメディアでは書かれず、単に「一万件のチェック漏れ」と報じられ「とんでもない杜撰な組織だ」という印象だけが広く流布して定着してしまうわけです。一九九五年十二月八日に起きた「ナトリウム漏れ事故」も本来ならトラブル程度で済む話でした。

奈良林 フランスの実験炉では約三十年間に三十回ぐらいのナトリウム漏れ事故を起こしていますが、その間も安全を確保しながら動かし、改良を重ね技術革新を図りその知見を国際会議で発表しています。こうした事実はメディアで全くと言っていいほど報じられません。

金子 そもそももんじゅは実験炉、原型炉、実証炉、実用炉という四段階の二番目の段階のもので、普通の原発のような完成した実用炉(商業炉)とは異なるという視点が日本では完全に抜け落ちています。機器の不具合などを実験で確認し、トラブルがあればその都度改良を重ねていくための炉なのです。いわば、失敗があって当たり前なんです。
 ところがそれが「大事故」になったのは「事故隠し」を行なってしまったからですね。ナトリウム漏れ事故の現場を映したビデオから事故状況が映っている場面を意図的に削除したことなどが判明し、大きな批判を受けました。

櫻井 その点は厳しく責められてしかるべきと考えます。新しい技術開発で、しかも実験炉なら問題が発生するということは国民は理解できると思います。それを情報公開し、きちんと技術的に乗り越えれば理解も得られます。しかし、情報隠しをしてしまえば信頼の土台が崩れます。

金子 もちろんです。ただ海外ではナトリウム漏れぐらいでは大きな問題視はされません。日本はちょっとしたトラブルでも新聞に書かれて「大事故」にされ、予算が削減されてしまう。世界の基準に照らしても大したことはないと関係者の誰もが分かっていましたから、できれば小さなトラブルで済ませたい、との思いがどうしてもあったのでしょう。

奈良林 「事故隠し」は褒められたことではありませんが、ナトリウム漏れ火災を受けて、もんじゅでは温度計を改良したり、漏えい検知器を設置したり、受け皿を設けるなど徹底的な改善策を一年以内に講じています。また、万が一電源が喪失してもナトリウムの自然対流で炉を冷却する空気冷却系も設置している。もんじゅを視察すればすぐわかることで、そうした点もメディアは公平に報じるべきではないでしょうか。
 ちなみに「もんじゅ」の原子炉設置許可無効を求めて住民が起こした裁判で、二〇〇五年五月に最高裁は「見過ごすことのできないミスや欠落はない」として住民側の敗訴が確定しています。

櫻井 現場をよくご存知のお二人のお話しを聞いて、事情がよりよく分かりました。あまりにも厳しい重箱の隅をつつくような批判が現場を委縮させている、正面から問題に向き合うことを避けようとする空気を作ってしまっていると思います。これは報道の質の問題につながっていきますね。

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最終更新:2015/12/22(火) 12:31

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