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ジャーナリスト・江川紹子が美濃加茂市長収賄容疑、衝撃の“逆転有罪判決”の謎に迫る!

週プレNEWS 2016/12/16(金) 6:00配信

2013年6月に全国最年少市長(当時28歳)として就任した岐阜県美濃加茂市・藤井浩人市長が、その1年後に逮捕された。同市議時代に災害用浄水プラントの導入をめぐり、計30万円の賄賂を受け取ったとする収賄容疑だ。

藤井市長は一貫して疑惑を否定し、現金授受の現場とされる2回の会食に同席していた人物も「金の受け渡しは見ていない」と明言したが、名古屋地検は「賄賂を渡した」という浄水設備販売会社・中林正善社長の証言を頼りに市長を起訴。

警察の取り調べでは、取調官から「早く自白しないと、美濃加茂市を焼け野原にする」などの発言があったと藤井市長は語っている。

藤井市長の弁護団は、別件で中林社長が計4億円もの融資詐欺を働いていながら、当初そのうちわずか2100万円分しか起訴されなかったことを指摘。「詐欺の立件を最小限にすることの代わりに、本当は存在しない藤井市長への贈賄供述が引き出されたのではないか」と、検察と中林社長との“ヤミ司法取引”を疑うなど、裁判は全面対決となったが、昨年3月、名古屋地裁は無罪判決を下した。

しかし、検察側は控訴。そして今年11月28日、二審判決が出たのだが…その結果は驚くべきものだった。裁判の経緯を取材してきた、ジャーナリストの江川紹子氏が『週刊プレイボーイ』52号に寄せてくれたルポの一部を紹介する。

* * *

一審は無罪だった藤井市長に、名古屋高裁(村山浩昭裁判長、大村泰平裁判官、赤松亨太裁判官)は一転して有罪を言い渡した。法廷での審理の様子から、逆転判決もありうるとは思っていたが、それでも判決理由を聞いて驚いた。

有罪か無罪かは、要するに贈賄を認めていた中林社長と、現金の授受を否定する藤井市長のどちらの話を信用するかに尽きる。

一審の名古屋地裁は、中林証言は「現金授受の核心的な場面について具体的で臨場感および迫真性を伴う供述がなされていない上、不自然かつ不合理な点がある」「虚偽供述をする理由・動機が存在した可能性がある」などとして、藤井市長に軍配を上げた。

これに対し高裁は、中林証言について「具体的かつ詳細で、その内容に特に不合理な点は見当たらない」とまったく逆の評価をした。虚偽供述の可能性も否定した。

この判断をするに当たり、高裁は中林社長の証人尋問を行なった。検察も弁護人も請求していないのに、裁判所が「聞いてみたい」と言いだし、詐欺と贈賄で懲役4年の判決が確定して服役中の彼を、わざわざ職権で呼び出したのだ。

しかし、裁判官の中林証人への質問は、自白したきっかけや捜査段階の供述が変遷した理由を確かめることに重点が置かれ、一審での中林証言をなぞるような内容に終始した。本音を聞き出そうとか、新たな事実を掘り起こそうなどという熱意や迫力は、みじんも感じられなかった。

私が、高裁は逆転判決を出そうとしているのかもしれないと思ったのは、この対応からである。

おそらく高裁は、この証人尋問の時点で逆転有罪を決めていたと思う。一審とは百八十度異なる判断をするに当たって、「慎重な審理を行なった体裁」を整えるために、中林証人の話や供述態度を直接確かめたという形が必要だっただけなのではないか。

中林証人は、証言前に自分の調書や藤井市長に対する一審判決を取り寄せている。高裁判決は、中林証言が銀行口座の金の出し入れや藤井市長とのメールのやりとりなどの証拠と整合すると評価したが、一審では検察官と連日長時間にわたる打ち合わせを行い、控訴審でも書面で予習した上での証言なのだから、検察側の証拠とつじつまが合うのは当たり前だ。

判決で驚いたのは、中林証言を信用する根拠として、その友人AとBの一審での証言を重視していたことだ。Aは中林社長から「渡すもん渡した」と藤井市長への賄賂提供をうかがわせる言葉を聞いたと述べ、Bは中林社長から「藤井さんに金を渡すから貸して欲しい」と頼まれて50万円を貸したと語っていた。ふたりの証言は信用でき、それに符合する中林証言は信用できる、と高裁は言う。

では、このふたりと中林社長はどういう関係だったのか。一審の証人尋問で次のようなことが明らかになっている。

中林社長は、かつて事務長として勤務していた病院で約1億5000万円を使い込んだ。それが発覚した際、彼はAに「2000万円ほど貸してほしい」と相談。Aが貸し手としてBを紹介した。Bはその後も何度も多額の金を中林社長に貸した。

中林社長が会社を設立した際は、Bは発起人となり5000万円の資本金を提供したが、これはいわゆる「見せ金」で、すぐに引き揚げた。この行為は法に触れる可能性がある。

またBは、名古屋市の病院に浄水設備を売り込んでいた中林社長から「市の役人に渡すから」と頼まれて、300万円を貸したこともある。Bが中林社長に貸した金は、一時は1億円を超えた。

会社には販売実績はなかったが、中林社長は架空の契約書や役所の公印をでっち上げ、金融機関を騙して4億円近い融資を引き出した。その金はBにも流れている。またAも、Bほど多額ではないようだが、中林社長には頻繁に金を貸していた。

融資詐欺について、Bは「知らなかった」と述べているが、公務員への賄賂用の金を貸すなど、彼らの規範意識は善良な一般市民のそれとはかなり異質である。もっと率直に言えば、かなりいかがわしい。彼らは、中林社長とは金銭を媒介した利害関係人であり、背景は闇に包まれている。

ふたりの証言を直接聞いた一審はこれを重視しなかったが、高裁はその速記録を読んで、いとも簡単に信用した。

さらに明らかになる、名古屋高裁の“推定無罪の原則”を無視した振る舞いの数々。衝撃の裁判ルポ全文は発売中の『週刊プレイボーイ』52号で是非ご覧いただきたい。

■週刊プレイボーイ52号「名古屋高裁に棲む『魔物』の正体」より

最終更新:2016/12/16(金) 6:00

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