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【月刊『WiLL』(3月号)より】もんじゅ――その「人と技術」を殺してなるものか

2/1(水) 9:01配信

WiLL

エネルギーの将来を左右する

櫻井 あのような報告書が出されたことについて、規制委は大いに恥じ入るべきですし、日本の政治家、とりわけ与党の自民党と公明党は自分たちが依拠している規制委はとどの詰まり、この程度の組織なのであるということをしっかり認識すべきです。
 IAEAの報告書は規制委に対して「あなた方の行っている規制は国際的な基準に達していない。極めて不十分であり、改善しなさい、そのためにもっと専門家を入れなさい」と勧告しているわけです。
 その規制委が「もんじゅ」に対して厳しい勧告書を出した。政治がその規制委の文言を十分に理解することもなく、世論やメディアの意思に押し流されながら、政治的に決断した。この決定によって、高速炉技術を将来、日本は失っていくことになります。国益に反することになります。
奈良林 「もんじゅ」を廃炉にしてしまったら、10年後、20年後に「何ともったいないことをしたのだ」と指摘されると思います。
 政府は、新しい高速炉を造りますと言っていますが、これから設計、建設していたら短くても10年はかかるでしょう。その時点で運転できる技術者が残っているか、育っているかですね。
櫻井 10年間のブランクが生じるとして、10年後に技術者が必要なときに、日本はどの国から学ぶのでしょうか? 現在、高速炉に必死に取り組んでいるのは、ロシアと中国です。彼らから学ぶというのでしょうか。
奈良林 ロシアは1980年代から本格的に高速炉を運転し続けています。トラブルはありましたが、すでに稼働率は70%を超えています。
 いま、「BN-800」という出力88万キロワットの実証炉を運転しており、2025年ごろには商用炉となる「BN-1200」(出力122万キロワット)の運転開始を目指しています。ですから、世界で高速炉技術が一番進んでいるのはロシア。すでに、フランスを抜いてしまっていて、そのロシアの技術を積極導入しているのが中国なのです。
櫻井 民主主義の国であるわが国とは価値観を異にする国々の技術に依存しなければならない事態が生まれるということですね。そのときに日本と中国の関係がどうなっているか。現在、安倍首相がロシアのプーチン大統領との関係構築に力を入れていますが、日ロも基本的な体制が違う国ですから予測できない面があります。
 エネルギー、しかも高速炉という将来におけるエネルギーの太い柱になる分野で、心もとない。国益を害する状況が生まれかねない。
奈良林 そうですね。ロシアとか中国のように、一党独裁体制というか、強いリーダーシップで動く国のほうが長期的、国家的な技術開発には有利じゃないかなと、最近そう感じるようになっています。
櫻井 技術開発だけでなくて、政治的にもそうかもしれません。中国やロシアのように、社会の底辺の人たちへの目配りが不十分で、大きな不満がたまっている状況は、民主主義では許されない。すぐに政治交替が起きます。
 ロシアも中国も国民の不満を抑えて、本来ならより手厚い福祉や医療、あるいは教育にかかる費用を軍事力増強や海外の途上国を味方に引き入れるためのODA(政府開発援助)に回せるわけです。
 民主主義の国は、どんなときもやはり民意を大事にしなければならない。イギリスの国益にとって正しいとは思えないEU離脱を導き出した国民投票も、結果が出てしまえば決まり、その方向で物事が動いていく。民主主義のシステムはそれに代わるものがないというだけの話で、多くの欠点を抱えているわけです。
 日本のように国民に対して科学的な広報、情報の伝達が不十分な国では、エネルギーの将来を左右する高速炉問題であるにもかかわらず、非常に浅い理解に基づいて世論が形成され、政策が決められていきます。

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最終更新:4/27(木) 15:53
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