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【月刊『WiLL』(3月号)より】もんじゅ――その「人と技術」を殺してなるものか

WiLL 2/1(水) 9:01配信

「もんじゅ」の独創技術

櫻井 「もんじゅ」の技術は、純粋に日本の技術ですね。でも、多くの人々はこの日本の技術のどこが優れているのか、どのような意義があるのかをよく知りません。なんと言っても、そのような情報が伝えられていないのですから、無理もありません。
 そこで奈良林さん、他国の事例と比べながら、もんじゅの技術の優秀さを解説していただけますか。
奈良林 ロシアも含めて、現在、世界各国で開発が進められている高速炉は「タンク型炉」と呼ばれる原子炉です。大型のタンクに液体金属ナトリウムを満たし、そのなかに炉心や熱交換器、ナトリウム循環ポンプなどを収容するタイプ。しかし、このタイプはいろいろな機器を固定するのは苦手です。また、多量のナトリウムをタンク内に入れておかなければならないため、点検の際には機器を抜き出さなければなりません。
 日本の場合、点検は「分解点検主義」を採用しているため、点検する箇所のナトリウムを抜き、機器に炭酸ガスや水蒸気をかけて、ナトリウムを全部除去しなければならない。
櫻井 とても手のかかる作業が必要なわけですね。日本政府が、ポスト「もんじゅ」の高速炉の開発で頼ろうとしているのがこのタイプの高速炉、つまり、フランスが開発中の「ASTRID(アストリッド)」なわけですね。なぜ点検の難しいとされるタンク型の高速炉を他国は進めているのですか。
奈良林 世界各国が採用している点検方式は、運転中にいろいろな情報をキャッチして、機器が正常かどうかを調べる「状態監視保全」という技術を活用する方向に向かっています。いわば走っている人の血圧や脈拍、疲労の度合いをモニターして異常がないかを調べるやり方で、異常があれば新品の部品と交換します。紐が緩んだ靴を履き替えるようなものです。体調管理をしながら万全の体制で試合を続けることができるのです。しかし、日本の規制は、旧態依然たる「分解点検主義」で、心臓麻痺で倒れた人も、生きてる人もベットに寝かせて超音波で検査したり、体を解剖して、多数の診断書を作ることを強要しています。江戸時代の悪代官と民衆の関係のような制度が続いています。海外では規制側と事業者が対等の関係で、安全性を高めることを究極の目標にしています。
 そこでは、規制者と事業者が共に働く「共働」の精神が生きている。「人と環境を放射能から守る」ことは規制側も事業者も同じ使命だからです。
櫻井 江戸時代の悪代官が21世紀の今日まではびこっているのは、本当に困りますね(笑)。「もんじゅ」の話に戻りますが、「タンク型炉」と全く異なる「ループ型炉」がもんじゅですね。そのほうが地震に強いからだと思いますが、ループ型の特徴をご説明下さいますか。
奈良林 「ループ型炉」は、炉心を収納した原子炉容器と熱交換器、ナトリウム循環ポンプがそれぞれ別個になっていて、支持金具で拘束した配管で相互につなぐ方式です。耐震設計上では「タンク型炉」よりも強靭な原子炉です。機器の点検も個別にできるため、点検時にその都度、多量のナトリウムを抜き出す必要もありません。
 さらに、「もんじゅ」は状態監視保全ができるような原子力発電所になっています。これを廃炉にするのは、あまりにもったいない。

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最終更新:4/27(木) 15:53

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