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【月刊『WiLL』(3月号)より】もんじゅ――その「人と技術」を殺してなるものか

WiLL 2/1(水) 9:01配信

壮大なボタンの掛け違い

── 政府は2016年12月21日の原子力関係閣僚会議(座長・菅義偉官房長官)で「もんじゅ」廃炉方針を決めました。しかし、福井県の西川知事は「拙速な決定で、地元に大きな混乱を生む」と政府方針を厳しく批判。今後も協議を続けていく見通しですが、まだ、曲折がありそうですか。
櫻井 福井県は、原子力発電全般にとても協力してきた自治体です。西川知事は「もんじゅ」の抱える問題を非常によく理解している人です。つまり、「もんじゅ」本体が問題なのではなく、点検のあり方や書類の作成などマネジメント面、さらには規制委の対応が問題であることを、現場を踏んで理解していると感じます。
 あれほど「もんじゅ」も含めた原子力発電についてきちんと理解している地方自治体の首長は珍しい。
 メディアは地元の雇用など地域経済への影響についても詳しく報道しますが、西川知事の頭の中には、日本のエネルギーの将来に対する問題意識があるのではないでしょうか。「納得できない」と強い表現で問題提起した。知事のこの言葉を、国、政府は最大限尊重しないといけません。
奈良林 そうですね。本当はもっと時間をかけて地元と相談するべきだし、田中委員長の勧告は「組織体制をしっかりせよ」という内容ですから、政府が力を込めて、しっかりした組織を作ればいいわけです。
 現在、商用炉として運転している何十基もの軽水炉の場合、何十年間も運転してきていますから、電力会社はどこをどのように点検すればいいかがわかっていて、点検要領書をしっかり書けるわけです。
 ところが、高速炉の「もんじゅ」は一基しかないのに、検査制度が変わった時点でいきなり点検要領書を作れと言われたため、それで、慌てて書類を作成したのが実情のようです。それがケチの付けはじめになってしまい、一万件の機器点検漏れにつながってしまった。
櫻井 壮大なボタンの掛け違いですね。どうしてこんなバカげたことで、1兆円のお金を費やした国家プロジェクトがダメになるのかわかりません。
奈良林 政府として、どこまで実態を把握しているか、私もわかりません。マスコミ、とくに朝日新聞などが田中委員長の勧告が出された時点で、「もんじゅの廃炉が現実味を帯びてきた」という記事を書いている。
 今回の政府方針決定は、自民党も含めて朝日新聞に敗北したともいえます。
櫻井 1万件の点検漏れとか新聞に書かれると、「もんじゅ」の研究開発を続けるべきだと思う私でさえ、どういうことだろうと一瞬考えますから。規制委やメディアが強調する1万件の点検漏れが一体どんな中身なのか、それがどれほど、無理な内容であるかをきちんと公表できていない。
奈良林 配管支持金具だけで7500個あり、1万件の点検不備という数字の独り歩きだけが進行してしまった。本来、何が、どのように違反であったのかをしっかりと解明して、問題の内容も理解した上で、判断するべきです。
櫻井 悲劇としか言いようのないボタンの掛け違いで「もんじゅ」廃炉が決定されたわけです。廃炉についてはこれまで懸命に貢献してきた地元自治体も納得しない。
 一方、政府の廃炉決定には、合理的、科学的な正当な理由がない。なのに、政府はフランスの「アストリッド計画」に研究協力という形で、日本の高速炉の未来を託そうとしている。何千億円か何兆円になるかわかりませんが、フランスに日本国民の税金が投入されていく。そこに一体、どういう未来展望があるのでしょうか。

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最終更新:4/27(木) 15:53

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