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【月刊『WiLL』(3月号)より】もんじゅ――その「人と技術」を殺してなるものか

WiLL 2/1(水) 9:01配信

「もんじゅ」の廃炉問題

── 「もんじゅ」お葬式みたいな報道しか出ていませんが、そんな軽々しい議論ではないですよね。
奈良林 地元である福井県の西川一誠知事は納得していません。
櫻井 「もんじゅ」の問題を考えるとき、政治と世論の関係の難しさを感じます。科学者や専門家から見ると、「もんじゅ」をめぐる20年間の運転・開発禁止は不合理、非科学の極みと言ってよい歴史ですね。政治が世論を反映しなければならないという事情はよくよくわかりますが、世論を説得して導いていくのも政治の役割です。
 そのとき、一番大事になってくるのが専門家の所見です。専門家の皆さん方の中には、「もんじゅ」なんてもう潰せという意見もあるにはありますが、より多くの研究者たちは「もんじゅ」の原理、技術はとても優れていると評価しています。
 ただし、もんじゅの運営、マネジメントに問題があったのは事実です。事故を起こしたときに情報を隠したことなどは十分に責められるべきですが、そのことをもってして約20年間も実際の運転を止めさせて、事実上、何もさせなかったことは、日本では科学の発展に必要な試行錯誤は認めないということです。これでは科学立国の名が泣きます。
 非科学的思考で失敗した悪しき前例として、私たちは原子力船「むつ」の開発断念(1992年原子炉停止)を体験しています。あの体験をなぜ、政治は生かせないのかと強く感じます。国や国民生活の発展に科学はどう貢献できるのか。科学を貢献させないで、国の知恵や力を発揮していくことは難しい。こうした認識から、私は政府の「もんじゅ」廃炉方針決定は残念でなりません。
奈良林 2015年11月、原子力規制委員会の田中俊一委員長は「もんじゅ」を所管する馳浩文部科学相(当時)に対して、運営主体を日本原子力研究開発機構から代えるように勧告しました。この勧告が出された直後、私は福井県に行き、配管の下も含めて「もんじゅ」をじっくりと視察し、非常に高度な技術で設計された設備であると感じました。
 でも、規制委が問題にしたのは設備とか技術のレベルでなく、点検とか保守に関する書類作成についてです。日本の原子力規制では、書類がうまくできていないとすぐに問題にされてしまう。監視用テレビカメラが故障していたとか、訂正印で保全計画が訂正されていたなどがほとんど。それが積み上がって、「約1万件の機器点検漏れ」と指摘され、田中委員長は「安全に運転する資質がない」と結論づけたわけです。
 原子力発電所の保守点検というのは、安全性が重視されるものから順番に手当てしていくべきものです。しかし、書類チェック優先の方針ですから、重要度というよりも書類が規定に達しているかに力点が置かれ、達成できないと「保安規定違反」の烙印を押されてしまう。つまり、安全重要度によるランク付けをした規制になっていないために「規定違反」が乱発されるようなものです。
 2016年1月、国際原子力機関(IAEA)の専門家チームが来日して、総合規制評価を実施しました。その詳細な報告書が四月に公開されましたが、書き出し部分は「福島事故後、すぐに安全対策を講じてよくやっている」と書かれていますが、そのあとは「人的資源、マネジメントシステム及び特にその組織文化において初期段階にある」と酷評されています。

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最終更新:4/27(木) 15:53

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