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大企業「相談役」「顧問」は老害か

文春オンライン 2/13(月) 7:00配信

 安倍首相は、1月27日の未来投資会議にて、「退任した経営トップの不透明な影響を払拭し、果断な経営判断が行われるようにしていく」と発言した。さらに居並ぶ関係閣僚に対して、コーポレート・ガバナンスの確立に向けた制度整備を指示する姿がニュース映像として流れた。

「退任した経営トップ」とは、日本企業独特の制度である相談役と顧問を指している。相談役は顧問より格上で、社長・会長経験者が退任後に就くポジションであり、顧問は副社長以下の経験者が就任するケースが多い。

 あくまで社内の慣例として置かれているポジションだが、厚遇が約束される。報酬は会社によってまちまちだが、平均的には年収2000~3000万円。専用車、個室、秘書の「三点セット」が提供され、接待費も自由に使える場合が多い。

 経産省の「コーポレート・ガバナンス・システム研究会」(CGS研究会)で委員を務める経営共創基盤の冨山和彦CEOは、カネボウやダイエーなどを再生支援した経験からこう指摘する。

「相談役や顧問が経営の役に立っていたケースは一つもない。百害あって一利なしだ。日本企業の中で何十年も続く先輩後輩の関係は、ある意味で血縁以上に濃い。自分を社長にしてくれた先輩OBには逆らえない。OBは良かれと思ってアドバイスするかもしれないが、自分が死んだ後のことまでは考えられない。百歩譲ってOBのアドバイスが『会社のためになる』と言うのなら、彼らに払っている報酬と、秘書、車、個室にかけるコストを全て開示し、『対価に見合う価値がある』と合理的な説明を株主にすべきだ」

 山之内製薬と藤沢薬品工業の合併(2005年)で誕生したアステラス製薬には、相談役も顧問もいない。初代社長(山之内出身)で当時会長の竹中登一氏と、二代目社長で藤沢出身の野木森雅郁氏が、相談役制度を廃止したのだ。御代川善朗副社長が、当時の決断に込められた思いを語る。

「経営者としての経験を活かして、製薬業界にこだわらず、さまざまな企業にアドバイスしたいと考えたのです。現在、社外取締役のニーズは高まっていますが、企業経営をしていた人材は不足しています。しかも、相談役を経てから社外取締役になると年齢的にも70代。貴重な経験者を社内に閉じ込めない方が社会貢献になるはずです」

 安倍首相の発言は、こうした議論を踏まえた上でのものだ。

 相談役・顧問は、本人が意図しなくても、結果的に老害になっているケースも多い。また、日本企業のガバナンスの特殊性は、海外からの投資を妨げ、企業価値がほとんど伸びていない要因の一つにもなっている。

 ジャーナリストの大西康之氏と『文藝春秋』編集部は、日本を代表する大企業64社に対して相談役・顧問制度に関するアンケート調査を実施した。

 その結果、総合商社や大手自動車メーカーなど、意外な企業に最多で50名もの相談役・顧問がいることが判明した。「相談役・顧問は廃止した」と回答しながらも、「特別顧問」「名誉顧問」と名を変えて存続させている企業もある。

 各企業の回答ならびに本誌の独自調査にもとづく相談役・顧問のリストは、『文藝春秋』3月号に掲載されている。

「文藝春秋」編集部

最終更新:2/14(火) 21:45

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