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稲垣吾郎の楽屋を一人で訪れた放送作家が驚いた、思いがけない一言とは

週刊女性PRIME 2/13(月) 16:03配信

古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、TV業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。勝手に称えまくって表彰していきます。第15回は樋口卓治が担当します。

稲垣吾郎 様

 今回、私が勝手に表彰するのは、稲垣吾郎である。

 芸能界に殩然(さんぜん)と輝いていた星座は、今、五つの星となり、それぞれ新たな光を放っている。その中で今、稲垣吾郎の瞬きに魅せられる。

 かつて、自分の中では「Mr.マイペース」とか「ドライヤーの風に吹かれて」というイメージが先行していたが、最近、あの雰囲気に憧れるのだ。

 稲垣吾郎の良さがわかる年頃になったのだ。

 例えば、深夜TBSでやっている『ゴロウ・デラックス』は癒される。

 毎回、課題図書をしっかりと読み込み、司会者が目立つことをせず、ゲストに気持ちよく話をさせるスタイルを貫いている。

 日々朝から晩まで会議を渡り歩き、ど深夜に小説を書くというブラック個人商店を営んでいる私にとって、あのゴディバのチョコのような甘い声の朗読はアロマ効果がある。あれによって著者は報われ、視聴者は癒される。

 以前、私が原作者として番組にお邪魔させてもらったとき、根も葉もない妄想トークをしようということで、『もし、この番組が打ち切りになったらどうします?』という質問をした。

 バラエティとしては、「なんてこと言うんですか⁉︎」と慌てふためく司会者を想定していたのだが、稲垣吾郎は動じることなく、真摯にそのテーマに付き合ってくれた。

 そして、この番組がとても大事で大好きであると語った。今、その言葉の意味がとてもわかる。画面から番組に対する優しい愛情が滲(にじ)み出ているからだ。

 2015年、稲垣吾郎主演の舞台『NO.9ー不滅の旋律ー』が上演された時のことだ。どうしても観たい衝動にかられた私は、チケット入手を試みたが、前売りは完売。あきらめられず粘ったところ、北九州公演のチケットを1枚手に入れることができた。しかも、千秋楽。

 こんなに執着したのは初めてのことで、まるで愛する女性を追いかけるように、朝一番の便で北九州に飛んだ。

 舞台は想像を遥(はる)かに越え、面白く、心をゆさぶられた。稲垣吾郎しか演じられないはまり役だと思った。

 千秋楽ということもあり上演後、拍手は鳴りやまず、スタンディングオベーション、喝采の嵐だった。

 観劇後、ご挨拶しに楽屋へと向かう。きっと俳優とスタッフが興奮冷めやらぬ様子だろう……。こんな時に楽屋に行くのは正直気が引けた。パッと挨拶をしてすぐに帰ろう……。

 しかし、北九州公演ということで、東京から来た人は私一人。すなわち、楽屋を訪ねたのも私一人だった……。

 このタイミングでお邪魔するのは、新興宗教の勧誘並みの鬱陶(うっとう)しさがある。

 うつろな気持ちで、楽屋の前で待っていた。そこにメイクを落とした稲垣吾郎が現れた。

 素直に感想を伝え、すぐにおいとましようと、口を開いたとき、「ゴロウ・デラックス、あのテーマ面白かったですね」と稲垣吾郎が先に口を開いた。

 パードゥン? なんでこのタイミングで番組の話なんだ? 

 座長として、たった今、千秋楽を終えたばかりなのに……。

 そんな我が道をゆく、稲垣吾郎という星の瞬きに心底、憧れる。

【プロフィール】
◎樋口卓治(ひぐち・たくじ)
古舘プロジェクト所属。『中居正広の金曜のスマイルたちへ』『ぴったんこカン・カン』『Qさま!!』『ぶっちゃけ寺』『池上彰のニュースそうだったのか!!』などのバラエティー番組を手がける。また『ボクの妻と結婚してください。』など小説も上梓。9月15日に4作目『ファミリーラブストーリー』(講談社文庫)が発売。映画『ボクの妻と結婚してください。』が全国東宝系で公開。

文/樋口卓治【連載第15回】

最終更新:2/14(火) 18:00

週刊女性PRIME

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