ここから本文です

「イングランド銀行を潰した」伝説の投資家、ジョージ・ソロス氏の伝記から読み解く「神通力」

2/22(水) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 米紙「ウォールストリート・ジャーナル」(電子版)は2月12日、著名投資家ジョージ・ソロス氏が、アメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ氏勝利後の株式相場急騰を読み損ね、10億ドル(約1140億円)近い損失を出したと報じました。

 ジョージ・ソロス氏は、1992年のポンド危機に際して10億ドル以上の利益を得たことで、「イングランド銀行を潰した男」の異名を取る、伝説的な投資家として知られています。「フォーブス」の世界長者番付によれば、彼は2016年時点で、世界で23番目の資産家だそうです。

 トランプ相場は見誤ったものの、依然として世界有数の大富豪であり、そして、世界でもっとも影響のある投資家の一人として君臨するジョージ・ソロス氏。その成功の秘密を彼の伝記『ソロス』(マイケル・T・カウフマン/著 金子宣子/訳)から紐解いていきたいと思います。

◆成功の秘訣① ピンチをチャンスに変える

 1930年にハンガリーのブタペストのユダヤ人家系に生まれたソロス氏は、ナチス・ドイツの占領下を生き延び、1947年、17歳でイギリスに渡ります。そこでケンティッシュタウン科学技術専門大学に入学しますが、哲学や経済学を志向していた彼にとっては退屈で仕方なく、しかも貧乏だったために学費の確保にも苦しみ、おまけに女性にもまったくモテず、絶望の日々だったと述懐しています。

 そんな中、彼は当時イギリスでも指折りの開放的で国際的な学問府であったLSE(ロンドン・オブ・エコノミクス)に憧れを抱き、やがてケンティッシュタウン大学の講義をサボってLSEの講義をこっそり聴講するようになります。当時LSEの講義の中には、イギリス労働党の元中央委員長で名物教授だったハロルド・ラスキ教授のイギリス憲政史を始め、ソロス氏にとって刺激的な授業が多かったようです。

 ところが、そんなある日、LSEとケンティッシュタウン大学、両校で講義を持っていた教授に見つかって、LSEの講義を無断で受けていることを通報されてしまいます。そしてケンティッシュタウン大学の学長に呼ばれ、彼は放校されることになるのです。しかし、この危機に対してソロス氏はかえって一念発起します。彼はそれから猛勉強をして1949年、大学入学資格試験をパスし、今度は正式にLSEに入学を許されるのです。

 ただし、LSEに入学してからも貧困の問題は解決せず、いつも学費の捻出に苦労する中で彼は、ある日駅のポーターでアルバイト中、荷台に片足がはまり込んで片足を骨折してしまいます。

 ただでさえお金に困っていた彼はこのピンチに対して、労災や補償金の仕組みを調べ、公的機関からの労災補償と、ユダヤ人救援委員会という2つの機関から補償金の「二重取り」を企み、これに成功します。さらにはクエーカー教徒のある団体からも支援の申し出があり、これらの補償金・支援金により学費の問題を一気に解決したのです。ピンチをピンチのままとせず、むしろそれを利用してチャンスに変える、彼らしいエピソードと言えます。

◆成功の秘訣② 利益を出しながら学ぶ仕組みを作る

 同校を卒業後、彼はアメリカに渡って、投資銀行に入ります。そしてヨーロッパ企業の動向を探って投資先を見つける、欧州株専門のアナリストとなった彼は徐々にその才能を開花させ始めます。

 彼は投資先企業の株自体よりも、その企業が保有している他社の株式などに目をつけるという独自の分析法で、ドレスナー銀行、アリアンツ保険など有望で割安な投資先を次々と発掘し、大成功をおさめます。

 しかし、1963年、ケネディ大統領が外国証券の取引に課税する法案を議会に提出すると、欧州株はその価値が急激に下がり、ソロス氏はアンフォールド&S・ブレイシュローダー社で閑職へと追いやられます。そして2年の間、自身の大好きな哲学の研究などをして過ごしたそうです。

 そして、1965年、再びギアチェンジした彼はアメリカの証券について1から学ぶことを決意します。そして彼が行なったことは、各所から資金を調達し、16のモデル口座を作ることでした。

 この16のモデル口座に対して、彼はそれぞれのユニットごとに自分が有望だと考えた株を買い付けて、ポートフォリオを作りました。これによって、さまざまな分野に投資してその投資リスクや成長率、収益率を比較するという「利益を出しながら学ぶ仕組み」を作ったという訳です。この16分割したユニットのうち4ユニットを使って陸運関連企業に投資し、再び成功をおさめることになります。

 このモデル口座が大きな利益を生み出すことがわかった同社は口座を独立させて「ファースト・イーグル・ファンド」を設立します。これが後の伝説的ヘッジファンド「クォンタム・ファンド」の元になるのは言うまでもありません。これもまた「学習」と「実利」のどちらも重視する、ジョージ・ソロス氏らしいエピソードです。

◆成功の秘訣③ 直感に従う

 そして彼の最も有名なエピソードは、ポンド危機の伝説的な空売りのエピソードでしょう。

 1990年代初頭のイギリスは、欧州為替相場メカニズム(ERM)参加後に失業率が悪化し、景気は大きく後退していました。そして、1990年に東西ドイツが統一されると、旧東ドイツへの投資が増加し、欧州の金利は高目に推移していき、ERMによって欧州通貨と連動したポンドもまた、次第に過大評価されていくことになりました。

 そしてこの時、イギリスのポンド相場が実態より高止まりしていると考えた彼は、ポンドを売り浴びせることを決意します。

 その際、彼の部下だったスタンレー・ドラッケンミラー氏(彼自身、後に世界的に著名なヘッドファンドマネージャーとして知られるようになり、トランプ相場ではソロス氏と逆に株価上昇を見込んで利益を得た)は、20億~30億ドル程度の売りを進言したところ「君がそう直感しているなら、なぜその程度の額で抑えるんだ?」と言い放ち、大胆にも100億ドル相当の空売りを行なって、1日で約10億ドル以上の利益を得たと言われています。

 このように、彼が投資判断を行なう最終的な鍵は、「直感を信じる」ことにあるようです。直感とは特に超科学的なものではなく、経験則に基づいて素早く意識にのぼる知的な判断と考えることができます。

 そして、彼自身、「私がやっていたのは、直感による部分も多くてね。数字を見ると、何かが閃くんだ」と述べており、自らの「直感」を全面的に信頼し、それに従うことで、莫大な利益を上げて一気に世界で最も影響力のある投資家になったと考えられるのです。

 以上、今回は伝説の投資家、ジョージ・ソロス氏のエピソードと3つの成功の秘訣に迫ってみました。

次回も世界の成功者たちや大富豪をピックアップし、彼らの成功哲学をご紹介したいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。

【高田晋一】

成功データアナリスト。大手広告代理店グループにて市場調査やデータ分析を担当し、年間数10本のプロジェクトを運用。成功や幸福に関する文献・データを集め分析することをライフワークとし、これまでに1000冊以上の自己啓発本・成功本などを読破。その分析結果を書籍、各種セミナー、雑誌やWebの記事などを通じて発表、その普及に努めている。著書に『「人生成功」の統計学 自己啓発の名著50冊に共通する8つの成功法則』(ぱる出版)、『自己啓発の名著から学ぶ 世界一カンタンな人生の変え方』、『大富豪の伝記で見つけた 1億稼ぐ50の教え』(ともにサンクチュアリ出版)がある。

HP:「成功データ研究所」

http://successful-data.com/

メルマガ:「今日の成功データ」

http://www.successful-data.com/2017/01/11/mailmagazine/

Facebook

https://facebook.com/shinichi.exp

Twitter

@shinichi_exp 

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:2/23(木) 10:58
HARBOR BUSINESS Online