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申請期限迫る!経産省の中小企業向け「IT導入補助金」はサービス業の生産性を向上させるか?

2/26(日) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 常日頃から低い低いと言われている日本のサービス業の生産性。経済産業省の「通商白書 2013年版」における「労働生産性及びTFPの国際比較」を見ると、“各国の労働生産性を対米比で比較してみると、1990年代後半以降、対米格差が拡大傾向にあった製造業とは異なり、非製造業については同期間中も格差を縮小させている。ただし、非製造業はそもそもの欧米との生産性格差が大きく、2009年における対米比水準は53.9%であり、欧州各国にも劣後している”とある。

 通商白書では、企業の生産性と海外市場への進出、R&D投資や情報化投資といったイノベーション活動の間には正の相関関係が見られ、外資系企業は我が国企業よりも生産性が高いことが明らかとなったとしている。

 また、IT投資と生産性との関係では、IT投資を積極的に実施しているほど生産性が高いという関係が示されている。我が国のIT投資の水準は、国際的に比較してみると、IT投資の対GDP比率(名目フローベース)は低い水準である。また、ストックベースの日米比較では、日本はITを生産する産業では比較的米国に近い水準でIT資産を蓄積しているが、ITを導入する側の産業では1990年代後半以降、米国がIT資産を急速に拡大し、日米の差が開いていると記されている。

 したがって、日本のサービス業の生産性向上が進まないひとつの要因として、IT活用が遅れているからとするのも十分考えられることだろう。

◆経済産業省が後押しするIT導入支援

 となれば、である。企業によるIT活用を進めて、日本のサービス業の生産性向上を図るというのが一つのソリューションだと言える。そのため、国もサービス業のIT導入を支援しようという動きになるのもよくある流れだ。それが、経済産業省が進めている「サービス等生産性向上IT導入支援事業」である。

「サービス等生産性向上IT導入支援事業」は、中小企業・小規模事業者等がITツール(ソフトウエア、サービス等)を導入する経費の一部を補助することで、中小企業・小規模事業者等の生産性の向上を図ることを目的としている。“中小企業・小規模事業者等が行う生産性向上に係る計画の策定や補助金申請手続等について、ITベンダー、サービス事業者、専門家等の支援を得ることで、目的の着実な達成を推進する制度となっております。”としている。

「サービス等生産性向上IT導入支援事業」のIT導入補助金を利用すると、システム導入費用の3分の2(上限額:100万円 下限額:20万円)が補助される。補助対象者は、日本国内に本社及び事業所を有する中小企業者等で、大企業の子会社等は対象外。補助金の申請は、1補助事業者あたり1回のみ。締切は2月28日(火)17時までとなっている。

 次に、重要な点であるが、この際、事務局から認定を受けた「IT導入支援事業者」から、ITツールの導入支援を受ける必要がある。ITツールの導入による生産性向上の目標を設定して、その目標を達成するための事業計画の作成が必要で、補助事業開始から2021年3月まで、毎年3月末にITツールの導入による生産性向上の成果報告(後年報告)が必要となる。

 したがって、ITベンダー、サービス事業者、専門家等にとっても、提供するITツール(ソフトウエア、サービス等)がサービス等生産性向上に寄与するものだという評価のお墨付きをもらい、また、売上の貢献にもなる……ということらしい。

◆認定支援事業者にもうまみ

 事業計画に沿う「IT導入支援事業者(ITツール)」は、検索すると、該当する全データは655件あった。営業エリアを「全国」とする「IT導入支援事業者(ITツール)」は416件である。IT導入の補助対象となる中小企業は、多くの選択肢の中からITツールを選定できるといえる。

 例えば営業エリアを「全国」、生産性の向上を行いたい業務機能を「顧客管理」として検索すると、該当するデータは307件で、検索結果のトップページの中に、株式会社セールスフォース・ドットコムが出てくる……と言った具合だ。

 2016年9月にマザーズ市場に上場したNEW‐ITトランスフォーメーション事業の「チェンジ」社は、“生産年齢人口2000万人減少を迎え撃つための『生産性革新プログラム』対象拡大のお知らせ~経産省『サービス等生産性向上IT導入支援事業』において当社取扱い製品・サービスが登録されました~”というプレスリリースを公表するなど、認定支援事業者になることは支援事業者にとってもビジネス拡大には最適なチャンスになっている。

 ただ、中小企業の生産性向上にはIT活用以前の労働環境などの構造的な問題があるのもまた事実。

 この支援事業が単に新たな「利権」で終わるのではなく、IT活用を促進させることで、企業側がそうした構造的な問題をも改善し、当初の思惑通り日本のサービス業の生産性向上に貢献することを期待したい。

<文/丹羽唯一朗 イラスト/geralt via pixabay(CC0 Public Domain )>

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