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金子千尋を巡る三角関係に終止符を。伊藤光の座を狙う若月健矢の責任感。

Number Web 3/1(水) 8:01配信

 12球団の捕手のうち、昨年、規定打席を満たしたのは、巨人の小林誠司ただ1人。パ・リーグには1人もいなかった。

 扇の要としてシーズンを通してどっかりと座り続ける捕手は年々少なくなり、現在は複数の捕手を併用する球団がほとんどだ。

 そんな中、「今年は全試合出場を目指します」と宣言する若き捕手がいる。プロ4年目の21歳、オリックスの若月健矢である。

 昨年は7月以降先発に定着し、チームの捕手陣で最多の85試合に出場した。バッターの反応を読み取る洞察力と、それを活かしたリードを首脳陣に高く評価され、信頼をつかんでいった。

エース金子の女房役を伊藤から奪わなければ。

 ただ今年、若月が全試合出場という高い壁をクリアするための1つ目のハードルは、開幕戦にある。

 オリックスの開幕投手は、エースの金子千尋と決まっている。昨年まで、金子が登板する試合はほとんど伊藤光がマスクを被った。金子が沢村賞を獲得した2014年には、金子と伊藤が最優秀バッテリーにも選出されている。若月が開幕スタメンを勝ち取るためには、そこに割って入らなければならない。

 若月が初めて金子とバッテリーを組んだのは、昨年8月19日の楽天戦、0-1で迎えた9回表だった。この時は3本の長打や守備の乱れで2点を失った。若月は、悔しそうにこう振り返った。

 「金子さんだからって、気を使っちゃいました。それに、『こう行かなきゃダメなのかな』って、光さんの真似をしようとしてしまった。いくらスーパーピッチャーでも、ピッチャーですから……もしまた組む機会があったら、嫌われてもいいので、自分が思っている通りにやりたいなと思います」

捕手によって、サインの出し方の癖が違う。

 次のチャンスは、本拠地最終戦となった9月29日の楽天戦。先発した若月は、引退試合となった小松聖(現オリックス二軍投手コーチ)が打者1人と対戦した後、マウンドに上がった金子を6回途中までリードした。

 1回表の金子は、しかめっ面で、マウンドから若月のサインをにらみつけるように見ていた。新参者のリードが気に食わなかった、というわけではなかったらしい。

 「単にサインが見づらかったんです。ずっと、光の指のサインで慣れていたので。人それぞれ指の長さも違うかもしれないし、出し方の癖がありますから」と試合後、金子は明かした。

 ベンチに戻ってから若月に伝え、改善されたため、2回以降しかめっ面は見られなくなった。

 回の途中から登板したこともあり、初回こそもたついたが、2回から5回までは、金子が普段あまり使わないカーブを多用して打者を翻弄し、少ない球数でアウトを重ねていった。ただ、6回は1アウトから連打や四球で4点を奪われ、金子はマウンドを下りた。

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最終更新:3/1(水) 8:01

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