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これからの戦略人事にどう「自律的キャリア開発」を位置づけ、活用するか~リコー×博報堂×慶應義塾花田教授<日本の人事部「HRC2016-秋-」>

3/2(木) 7:30配信

日本の人事部

平成28年4月に職業能力開発促進法が改正され、自律的キャリア開発が法制化された。社員のキャリア権が確立した状況において、企業はいかに自律的キャリア開発を行っていくべきか。キャリア開発に詳しい、慶應義塾大学名誉教授の花田光世氏が現状を解説。キャリアの自律支援を実践するリコー・加藤直子氏、博報堂・田村寿浩氏が加わり、現場で考慮すべき点や今後の方向性について議論が行われた。

花田氏によるプレゼンテーション:安易なキャリア自律への警鐘

花田氏はまず、キャリア自律の法制化による懸念について語った。「私は企業内でのキャリア支援が重要と言ってきました。しかし、今回の法制化で一つ懸念されるのは、労働者が安易にキャリア自律に進もうとするのではないか、という点です。そのようなスタンスでは、制度そのものが崩壊してしまわないか。これは実に重いテーマです」

法改正については「そこにインセンティブを設けないと、自律は進まないのではないか」という意見もあった。花田氏は「それでは、温室育ちを進めてしまうことになる」と語る。

「私は、場合によって、就業規則の中にキャリア自律を明記することが必要ではないかと考えています。明記することで、従業員は当事者意識と責任を持たなければなりません。私たちはキャリア自律の精神にのっとって、仕組みづくりを行わなければいけないはずです。しかし、法改正によって企業への負担が一方的に増えてしまった。もっと、自己責任で対応することのウェイトを強くする仕組みが必要です」

その手法として有効なのは、日常業務の中で想定外の出来事や修羅場にぶつかりながら、自分の可能性を切り開いていく仕組みを作り込むことだ。組織のインフラや風土づくりにつながる一連のプログラムとして、しっかりと作っていく。

「私たちはこれまで、組織がライフステージとキャリアステージの間を緩やかに調整してくれることに慣れてしまっていました。しかし、これからは自分たちで変化に対応し、バランスを調整しなければなりません」

次に花田氏は、キャリア発達論とキャリアストレッチ論の違いから見たキャリア自律について述べた。

「キャリア自律の時代となって、私にはキャリア発達論がしっくりこないんですね。もしかしたら温室育ちに通じる解釈を、一人ひとりの社員に与えてしまう危険性があるのではないか」

キャリア発達論では、仕事を選択できることが前提としてある。適性やスキルをわかって、自分で自分にマッチした仕事を選べることを出発点としている。そして、私たちは自身を優位にするために、合理的な判断をし続ける。変化成長では環境が変わることに対して適応し続けていく。こういう考え方がキャリア発達論のベースにはある。

「しかし私から見れば、仕事を選べるなんてとんでもないことです。仕事は選ぶものではなく、基本的には与えられるもの。自分で選べる前提に立つと、間違えてしまいます。でも、与えられたものを自分なりに工夫する能動性は取れます。自分らしさを発揮できる努力は払えるのです。キャリア自律の中で、合理的な判断ができると思ったら大間違いです。私たちは、主体的な決断を行い続けなければならない。そうすると、決断に対して寄り添って支援するスタッフがどうしても必要になってきます。それがキャリアコンサルタントです」

花田氏は、環境に適応することよりも、環境を切り開いていく能動性こそが大事だと語る。花田氏はこれをキャリアストレッチングと呼ぶ。

「自分で自分の力を拡大する。自ら変化することが、生涯にわたり自分たちのキャリアを自律的に作り上げるうえで、非常に重要なポイントになると思います」

では、そのときのキャリアコンサルタントの支援とはどういうものなのか。カウンセリング系なら、悩みに寄り添うことは非常に重要だ。組織が求める人材像を考えながら、自分を律する状況の中で「本当はこれをやりたいができない」と思いつつ、組織の期待に積極的に応え、一生懸命に仕事をすることで自分の可能性を開いていく。その人をどう支えるのか。

「仕事への真剣な取り組みを支援することを、私は第一次ラポール(心の元気)、第二次ラポール(一歩の踏み出し)、第三次ラポール(組織の中における役割や居場所づくりを一生懸命つくることへの支援)と呼んでいます。これらを支援することが大事だと思います」

花田氏は最後に「私たちを取り巻く環境は不条理、理不尽、困難。そういった中でも自分のキャリアづくりに責任を持つこと。これは勝手し放題ということとは全く異なる世界観の中で、キャリア自律を進めなければならない、ということです。今日はこのことを問題提起したいと思います」と語り、プレゼンテーションを締めくくった。

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最終更新:3/2(木) 7:30
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