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「アメリカとは多様性である」とラフ・シモンズは言った──カルバン クライン 2017年秋冬コレクション

3/2(木) 17:52配信

GQ JAPAN

ラフ・シモンズによる初のカルバン クラインのコレクションが発表された。アメリカらしさが随所に散りばめられ、アメリカの多様性の讃歌がファッションを通じて表現されている。

【カルバン クライン 2017年秋冬コレクション すべてのルック】

1970年代後半から90年代前半にかけて放映され、世界でもっとも製作費をかけたクイズ番組としてギネスブックに登録されている『アメリカ横断ウルトラクイズ』。ラフ・シモンズが、自身のブランドとチーフ・クリエイティブ・ディレクターを務める「カルバン クライン」のショーをニューヨークで発表すると聞いたとき、私はこの番組の司会者・福留功男のことを思い出した。「ニューヨークへ行きたいかーっ!」という彼の煽り文句を反芻し、「行きたーいっ!」と心の中で叫んでいたのだ。残念ながら生で見ることはできなかったのだが、やはりラフのカルバン クラインは示唆に富むものだった。

コレクションには、想像以上に“アメリカ”が散りばめられていた。ファーストルックの女性が着たカラフルなシャツは、アメリカの美術家、ピーター・マックスが手掛けた70年代のラングラーのシャツをアレンジしたものだろう。ベルトレスで穿いた細身のノータックパンツには、スポーツジャージのようなサイドラインを配置。Tシャツの胸元には、スクールマフラーの一部がめくれ上がったような装飾が施されている。

警察官が着るような分厚いレザーのポリスマンジャケットは、レーザーカットで花の模様が描かれていて、部分的に銀色に箔押しされている。モッズコートの内側には、アメリカの一般的な家庭のソファーにかけてありそうなアメリカンキルトをイン。足元の主役は、つま先が少しだけスクエアになった西部劇さながらのウエスタンブーツだ。

カルバン クラインは80年代から90年代にかけてジーンズで一世を風靡したが、デニムも見物である。シャツ×ジーンズ、ジージャン×ジーンズのセットアップで提案していて、ぱっと見は素っ気ないものの、少しだけシルエットを現代的にすることで新鮮に見せているのだ。

ワンウォッシュのデニムのジージャンとジーンズのセットアップは、ジージャンの袖とパンツのシルエットを程よい太さのペッグトップに統一することで、野暮ったさを回避。ウィメンズのちょっと太めのジーンズは、往年のリーの200を思い出すようなウエスタンなシルエット。でも、なんかその感じが新しく映るのだ。

そうした“ワイルドなアメリカ”に合わせるテーラードは、いかにもラフらしい洗練されたラインを描く。ニューヨーク・メンズコレクションで発表したラフ・シモンズの2017年秋冬コレクションは、丸みを帯びた太めのラペルが特徴だったが、そうしたラインもあるものの、全体的には細身のシルエットでラペルも細めである。ほとんどのルックが身体に沿った細身のラインなのもトピックのひとつで、流行中のオーバーサイズとはおさらばしている。

今回のコレクションは「アメリカへのオマージュだ」と、ラフは説明している。そしてこう付け加える。「様々な個性、様々な個人が一体となったものが、アメリカという国であり、アメリカ特有の美しさである」と。様々なテイスト、時代のアメリカが散りばめられたコレクションは、アメリカの多様性への讃歌だったのである。

会場で流れたデヴィッド・ボウイと、ジャズギタリストのパット・メセニーによる『The is not America』は、1985年に公開されたジョン・シュレシンジャー監督のスパイ・サスペンス映画『コードネームはファルコン』のサントラとして作られた曲である。70年代に軍需産業のTRW社に就職したアメリカ人の青年が、国防総省やCIAのダーティなやり方にショックを受け、ソ連に機密を売り渡していたという実際にあった事件を映画化したものだという。

今回のコレクションは、ファッションデザイナーが様々な形でドナルド・トランプ大統領に対して異議を表明した。洋服ではアメリカの多様性を賞賛し、音楽では「こんなのアメリカじゃない」と流す。なんとも知的でラフらしいトランプへのダメ出しではないか。

Words: Kaijiro Masuda Photos: InDigital

最終更新:3/2(木) 17:52
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