ここから本文です

リストラされた大企業の社員が、ハローワークに行くと給料が半減する理由。(野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー

3/2(木) 5:40配信

シェアーズカフェ・オンライン

■速く走ることが富に変わった日
厚生労働省の「同一労働・同一賃金ガイドライン案」(2016年12月20日、以下「案」とする)を読んで、能力と市場の需給関係について、つい考えてしまった。

前の東京五輪(1964年)、陸上男子100m走で10秒00の世界記録タイ(当時)を出して優勝したボブ・ヘイズ。その速さに人々は熱狂した。世界一速く走る男を人々は見たがっていた。人より速く目的地に着く? それが何の得になるのか。それでも人は、人類最速で走る人間を見たがった。しかし五輪後、ヘイズはプロフットボール選手となった。

ヘイズから30年、カール・ルイスは最速で走ることがお金になることを証明した。ロスアンゼルス五輪で100m、200m、4×100mで優勝、おまけに世界で一番遠くに跳ぶ走り幅跳びでも金メダル。この大会から五輪は商業化し、莫大な額のスポンサー契約が付き、最速の男は走ることで富を得ることになった。その後、ウサイン・ボルトに至るまでのストーリーは誰もが周知のことだ。

■需給市場は「客観的・具体的な実態」である
需給市場(マーケット)の賜物として、すべてのサービスがお金で買えるようになった。「最速の足」もだ。労働力もまた卓越した力であれば、もちろん高い値が付く。力のない者でさえ、マーケットの中にいれば値付けがされる。簡単に言えば、儲かる会社という「場所」にいれば、そこにいる社員も儲かる(高給を得る)。その中で正規の位置にいるか、そこから外れた非正規の位置に居るかで値付けが違うということだ。

そもそも、正規雇用労働者(正社員)と非正規雇用労働者(非正社員)で賃金格差が出るほど能力や技術に差があるのか。「案」においても賃金や賞与について、「正規」と「非正規」の待遇には一応、曖昧さを残すなとされている。

「案」の注意書きには次のようにある。

『「無期雇用フルタイム労働者と有期雇用労働者又はパートタイム労働者は将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる」という主観的・抽象的説明では足りず、賃金の決定基準・ルールの違いについて、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして不合理なものであってはならない。』

1つの能力や技術がお金になるかどうかは市場の需給関係による。どれだけ優れた超人技であっても、人々がそれを求めなければ、お金にはならない。50数年前、五輪で速く走ることがまだお金にならなかったように。これは、「主観的・抽象的説明」ではなく、「客観的・具体的な実態」である。

1/3ページ

記事提供社からのご案内(外部サイト)

シェアーズカフェ・オンライン(SCOL)

シェアーズカフェ株式会社

SCOLはマネー・ビジネス・ライフプランの
情報を専門家が発信するメディアです。
現在書き手を募集しています。特に士業や
大学教授、専門家を歓迎します。