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スズキカップの熱狂から3か月。“無気力試合”が起きたベトナムサッカーの意外な実情とは

3/3(金) 18:27配信

SOCCER DIGEST Web

川崎、水戸、横浜FCなどがベトナム各地で交流活動。日本との接点は少なくない。

 2月19日の日曜日、東京の自宅でベトナムリーグ(以下、Vリーグ)の「ホーチミン・シティ(以下、HCMC)対ロンアンFC(以下、ロンアン)」戦をストリーミング観戦していた時だった。たまたま観ていたこの試合で珍事は起きた。以後、メディアで“無気力試合”と騒がれた試合である。
 
 試合を通して審判の判定に不満を貯め込んでいたロンアンの選手たちが、同点で迎えた79分に取られたPK判定に激高、残り時間をプレー放棄したのだ。試合はそのPKを含む3点を追加したHCMCが勝利したのだが、翌日からメディアの話題の中心になったことは想像に容易いだろう。
 
 ロンアンの会長は自軍の行為を恥じて引責辞任、クラブは監督及びキャプテンの契約解除を発表する。またベトナムサッカー連盟はロンアンに対して1億6000万ドン(約80万円)の罰金と、相手を侮辱する行為を行なったGKへは2年間の出場停止処分を科したのだ。
 
 昨年末に現役を引退し、HCMC会長に就任したベトナムサッカーの英雄、レ・コン・ビン(コンサドーレ札幌でもプレー)が試合中断中にたびたびテレビカメラに抜かれていたのだが、何とも言えない面持ちで手持無沙汰に携帯を弄る姿が印象的であった。
 
 結局、これらはすべてにおいて“アジアあるある”な話なのだが、このザワつくタイミングで現地を訪れてみるのも面白いと考え、思い立ったが吉日とばかりに早速取材のためにベトナムはハノイへ飛ぶことを決めた。
 
 ここで簡単にVリーグをおさらいしておきたい。1980年に創設されたリーグは、2007年にプロ化され、リーグ冠スポンサーには“TOYOTA”が付いている。
 
 Jリーグともリーグ間提携を結び、川崎フロンターレ、水戸ホーリーホック、横浜FC等のJクラブはベトナム各地で交流活動を行なっている。
 
 日本人選手では、昨季からホアン・アイン・ザライ(以下、HAGL)に所属する井手口正昭が唯一なのだが、日本とスイスの血統を持ち、幼少期を日本で過ごしたフェアー・モービー(東京ヴェルディの下部組織出身でSC相模原でもプレー)が今季から井手口のチームメイトになっている。
 
 また昨年までは男女のベトナム代表を指揮していたのも日本人監督であり、近年ベトナムサッカーは日本との接点が多いのだ。
 試合を通じて感じたことも幾つか挙げたい。まずは外国人助っ人について。フィジカルが強くがっちりしたアフリカ人選手が多く、6、7年前のタイリーグを観ているようだった。
 
 また、前節のアウェーチームによる無気力試合を観たせいかも知れないが、ホームチーム贔屓な判定が多いように感じて仕方がなかった。
 
 スコアレスドローに終わった試合への虚しさもあり、ネガティブな部分に目がいきがちになるが、明るい発見もあった。特にこの試合で目立ったのが、ハノイの左サイドでプレーする、ファム・タイン・ルオンとグエン・クアン・ハイのコンビだ。彼らが奏でるレフティ独特なハーモニーは実に心地が良かった。おそらくは、Jリーグでプレーしても違いを生み出せる個性溢れる選手たちだ。
 
 AFC主管大会への出場枠確定にも利用される「AFC・クラブ・コンペティション・ランキング」で、今日現在ベトナムはアジア15位(日本は5位)。ライバル国の飛躍の中で順位を下げ、今季はアジア・チャンピオンズリーグへの直接出場クラブ枠が無くなってしまった。
 
 試合後にスタジアム前でこじんまりと営むカフェでひとり、コンデンスミルクいっぱいのベトナムコーヒーを飲みながら、彼らの未来を妄想させられた夜となった。
 
取材・文・写真:佐々木裕介(フリーライター)

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最終更新:3/3(金) 18:27
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