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村野藤吾の幻の”猫耳工場”へ、潜入!

3/4(土) 12:00配信

Casa BRUTUS.com

九州の八幡製鉄所で発見された、村野藤吾が76年前に設計した工場。村野研究で知られる笠原一人さんと、早速、現地に行ってきました!

“村野藤吾、幻の工場みつかる─昭和の名建築家、八幡製鉄所で設計”。1月9日、そんな見出しの新聞記事が登場。ネットにも公開され、建築ファンの間で広く共有された。村野藤吾といえば20世紀の国内の建築界を牽引した巨匠のひとり。大建築家が手がけた工場建築というのは貴重だ。それが現存し、なんと現在も使われているとのこと! そこでカーサは村野藤吾の研究を行っており工場の設計図の存在を確認した建築史家の笠原一人さんと共に、早速見学に行ってきた。

JR小倉駅から車を北西に20分ほど走らせゲートをくぐると赤茶けた建物が並ぶ広大な工場の敷地に入る。その中にネコの頭部が3つ並んだような、ひときわ特徴的な“顔”の建物がある。戦時中の1941年築。当時の表記は日本製鉄株式会社八幡製鉄所戸畑ロール旋削工場。現在は新日鉄住金の子会社の日鉄住金ロールズが管轄、ロール加工工場と呼ばれている。

「工場という制約が多い施設ですが、機能性を追求しながら村野独自の工夫もなされています」

笠原さんは建物の魅力を語る。そのポイントは屋根。

「屋根の構造体をハサミ形に交差させ、その端に斜めの開口部を入れています。部材の数を減らすためでしょう。また開口部を斜めに入れたのも、垂直にする場合より多くの光を内部に取り入れることができるからだと考えられます」

ネコ耳のように屋根の一部が付き出すデザインは合理性にのっとったものだと笠原さんは考える。3つの棟は中央が最も高く、南、北の順で低くなる。笠原さんは高さの差をつけた理由にも着目。

「各棟は両端の柱にクレーンを渡しているのですが、隣のクレーンと当たらないように棟の高さをずらしたのではないかと思います。そのズレを生かしてさらに開口部を設け、中を明るくする意図もあったのかもしれません。棟の高さの違いがどんな効果をもたらしているのか確かめたいですね」

さてここまでは笠原さんが図面から読み取った分析である。実際に訪問するのは今回が初。きっと新発見があるはずだ。早速工場の内部へと潜入してみよう。

内部では、直径1メートル前後あろうかという円柱状の金属の塊が機械で削られている。これらは「ロール」といって厚板やH形鋼といった鋼材を生産する機械の一部だそう。この建物ではロール製造の仕上げを担う。工場は24時間稼働。できてから76年もの間、ほぼ休みなく動きつづけているという。

「つくられているものがH形鋼のような普遍的な建築材料の源となっていることも面白い」と笠原さんも興味深そうに観察する。

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最終更新:3/4(土) 12:00
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