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たかがカミソリと侮れない。「ジレット」が1世紀以上も世界で勝ち続ける理由

3/6(月) 18:30配信

HARBOR BUSINESS Online

 ビジネスマンが身だしなみに気を使うことは当たり前。特に毎日のヒゲソリは欠かせない、重要な作業だ。ビシッと決まれば一日のモチベーションが上がる一方で、カミソリ負けで傷でもできれば、周囲から視線も気になってしまう。

「ジレット」はそんなカミソリの世界で長年、君臨し続けているトップブランドだ。1901年にアメリカでキング・キャンプ・ジレット氏がT字カミソリを生み出してからなので、すでに1世紀を超えている。

「ジレットが長年トップでい続けられている理由は、イノベーションの力と消費者のトレンドに応えられているからでしょう。研究開発部門では毎日、革新的な技術を生み出すために研究員が働いている。イギリスのレディングという街にも研究所があるのですが、そこでは毎日研究所に来てヒゲを剃って、いろんなプロトタイプを試すのが仕事の人もいます。それと別のグループの人たちは、とにかく消費者のトレンドを聞くのが主業務だったり。そういうさまざまなグループの力が組み合わさっているので、長年の地位をキープし続けているのではないかと思います」

 そう話すのは、P&Gジャパン・シェーブケア部門ブランドマネージャーのチャンリーユン ステファニー氏だ。2007年にP&Gアジアに入社して以降、アジア全域のシェーブケア部門ブランドマネージャーなどを務めてきた。そんな彼女曰く、T字カミソリに対する消費者の要望はどんどん変化していっているという。

「これまではみなさん、求めているのは“深剃り”だけでした。そこからだんだんと新しい物を求め始めて、今では肌への優しさや、感触、デザイン性など、常に新しいことが求められるようになっている。私たちはそれに応え続けていかないといけません。この『ジレットプロシールド』は、ある意味そういった高付加価値のついたプレミアムな商品の最たるものでしょう。『深剃り』と『肌への優しさ』というのは、これまでは両立しないものと考えられてきました。それをベストコンビネーションで成立させています」

 新製品「ジレット プロシールド」は、刃の周りをジェルスムーサーという緩和剤で覆うことにより、肌への負担を和らげながらシャープな剃り心地も再現している。完成品を見れば「ただ緩和剤を付けただけでしょ?」と思いがちだが、そこにはジレットの高い開発能力が潜んでいるという。

「実は見た目ほど簡単な技術ではなく、開発までに4年がかかっています。というのも、スムーサーを上に載せているだけのように見えても構造上すごく大変なハードルがあって、しかも他の機能も損なわずに両立させなくてはいけないし、さらに簡単に外れてしまうようでもいけない。だからいろんなやり方にトライして、ようやく今の形になったのです」

◆日本市場はプレミアム商品をPRしやすい

 また、そういった高性能な製品が次々と日本で登場するのは、お国柄と言えるかもしれない。ジレットにとっての日本市場のポジションについて、ステファニー氏が続ける。

「日本はジレットの中で15の重点市場のなかの一つですが、なかでも特に位置づけが高い。それは市場規模が大きいことと、消費者の洗練度が高くて、プレミアムな商品が好まれるからです。日本は教育水準も高いですし、消費者の方のタイプとして、みなさん技術的なことを理解したいという欲望を持っています。反対に、国によっては『そんなことはどうでもいい』という反応のこともあります。そうなると説明がすごく大変だったりしますから」

 アジア全域のヒゲソリ市場を見てきたステファニー氏が言うには、「広いアジアでは、国によってヒゲソリの文化から好まれる商品まで、さまざまな違いが出てくる」という。

「例えば、中国ではT字カミソリよりも電気カミソリのほうが人気ですし、インドネシアやインドでは昔ながらの一枚刃のカミソリのほうが人気です。インドネシアの農村部だと、もともとそんなにヒゲが濃くないということがあって、コインを二枚重ねて、ヒゲを挟んでグイッと力を入れて抜いたりするんですよ(笑)。痛いと思うんですが、それだけ慣習が違うんです」

 そういったバックグラウンドの違いも視野に入れつつ、さまざまなマーケティング手法を並行して行うことによって、ジレットは世界での地位を築いてきたのだ。

「まず、商品ラインナップにも変化をつけます。日本だとプレミアムな商品により力を入れますし、途上国ではそれがシンプルな商品、例えば使い捨てのカミソリや昔ながらの二枚刃のカミソリだったりします。宣伝方法も同様です。消費者やメディア状況も違うし、インターネットの普及率はそれなりに各国とも高いのですが、そうはいっても日本はよりスマホの普及率が進んでいるけど、途上国の中にはまだノキアのスマホじゃないケータイが主流の国もあります。インドだとテレマーケーティングがまだ力を持っていたりします。国によってどのメディアを使うのかも変わるのです」

 たかがカミソリと侮れない創意工夫が世界中でなされているからこそ、世界のトップブランドで居続けられるのだ。<取材・文・撮影/HBO取材班>

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