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どうなる?マレーシアと北朝鮮

3/7(火) 9:49配信

Japan In-depth

北朝鮮が再び弾道ミサイルを発射。一方、マレーシアは在クアラルンプール北朝鮮大使を「ペルソナ・ノン・グラータ(PNG)」として国外追放した。おかげで本日は夜までメディアからの取材に忙殺された。

幸い筆者はPNGとなった経験がない。久し振りに外交・領事関係に関するウィーン条約を読み直した。

マスコミの質問は様々だ。次は国交断絶なのか、北朝鮮大使が出国しなかったらどうなるのか、大使がいなくなったら大使館はどうなるのか、敷地内に隠れている二等書記官は逮捕できるのか、航空会社職員の逮捕はどうか、大使が国外退去期限ぎりぎりまで大使館にいたのはなぜか・・・。

国交といっても、外交関係を維持しながら臨時代理大使を置くことから、領事関係への格下げなど、様々な段階、態様があり得る。初めから「大使国外退去」か「国交断絶」か、の二者択一ではない。人と人との関係と同様、国と国の関係も様々な段階があるのだ。まあ、こんなこと知らなくても良いことだが。

更に、外交特権が派遣国と接受国との合意の産物であることも意外に知られていない。だから、接受国はPNGをいつでも一方的に、理由を明示せずに発動できる。PNG通告を受けた場合、ウィーン条約上、派遣国は「本国へ召還又は外交官任務終了」を行う義務がある。今回北朝鮮もこれに従ったのだろう。

派遣国がこの義務履行を拒否した場合、または「相当な期間内」にこれを行わなかった場合、接受国は対象者がもう「外交特権」を持たないと看做すことができる。その場合、違法行為などがあれば、一般の外国人と同様、接受国当局はその「元外交官」の身柄拘束などが可能となるはずだ。

ちなみに、PNGは「名誉」にも、「恥」にもなり得る。例えば、日本人の外交官が近隣の独裁主義国家でPNGとなった場合、マスコミは「恥ずかしいこと」と書くかもしれないが、筆者はそれを「勲章」と考える。その人物は相手が嫌がるほどの情報収集活動を行った立派な外交官だからだ。さて、今回の北朝鮮外交官の場合はどうだろう。他人事ながら、実に心配だ。



〇欧州・ロシア

EU関係では今週は国際会議が目白押しだ。6日は外交理事会、7日は一般理事会、9日には欧州中銀理事会がそれぞれ開かれるのだが、筆者が関心を持ったのは9日の英連邦貿易相会合だ。イギリスはEU離脱後に英連邦加盟国との経済関係強化を図るのだろう。当たり前だが、英国のEU離脱は本気である。

〇東アジア・大洋州

7-8日にジャカルタで環インド洋連合首脳会議が開かれ、豪首相が参加する。オーストラリアがインド洋国家であることは例のマレーシア航空機消失事件で分かっていたが、実際に豪州はこの枠組みに積極的に参加していることが良く分かる。インド洋は重要であり、日本からは岸外務副大臣が参加する。

7日に中国の商務部長がフィリピンを訪問する。40もの共同プロジェクトに署名するという。比大統領の戦略は、今の中国とは戦わずに、経済的利益を取れるだけ取るというものだが、果たしてうまくいくのか。台湾も似たようなやり方で中国経済に取り込まれていったが、フィリピンは大丈夫か。心配だ。

〇中東・アフリカ

6日にインド・オマーンが共同軍事訓練を実施する。場所は不明だが、恐らくインド洋だろう。ここでもインドのインド洋に対する拘りが感じられる。一方、12日にはトルコ大統領がロシアを訪問する。最近のトルコの対露傾斜は顕著であり、中東地域での力のバランスを微妙に変える可能性がある。要注意だ。

〇南北アメリカ

先週火曜日に格調高い対議会演説を成功させたトランプ氏だが、土曜日には再び暴発した。何と「大統領選前に、オバマ大統領の指示でトランプタワーの電話が盗聴された」とツイートしたのだ。根拠は不明だが、米国大統領にはそのような権限はないという。やはり、トランプ氏は変わりそうもない。

〇インド亜大陸

6-8日にニューデリーで第19回「アジア安全保障会議」が開かれる。インドが主催する有名な国際会議だが、実は「アジア安全保障会議」はもう一つある。英シンクタンクIISSがシンガポールで開催する会議で、通常は「シャングリラ会議」と呼んで両者を区別している。



今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

最終更新:3/7(火) 9:49
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