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新感覚の日本料理を発信する〈傳〉が移転リニューアル。

3/9(木) 19:00配信

Casa BRUTUS.com

世界一、予約が取りづらいコペンハーゲン〈ノーマ〉のシェフ、レネ・レゼピさんとも交流のある日本料理〈傳〉が神保町から神宮前・外苑西通り沿いに移転した。

3月はパリから10月のブラジルやペルーまで、毎月のように海外でのイベントで料理をつくる。〈傳〉主人、長谷川在佑は今、世界から最も注目を浴びる日本料理のシェフといっていいだろう。実際、2016年12月に店を神保町から神宮前に移転してからもほぼ毎日、海外からの予約が入る。日々、キャンセル待ちのプラチナシートは満席。そんなにも人を惹きつけるの魅力とは?

おまかせコースは、茶目っ気たっぷりのメニューの連続だ。紙パッケージを開けると、先付のフォアグラ入り「最中」が登場したり、「すっぽんのスープ」を入れた器のふたが化石のようなすっぽんの甲羅だったり、常に笑が潜んでいる。

圧巻なのは肉の焼物の後に供されるサラダ「畑の様子」だろう。千葉、靜岡の農家から届く25種類前後の無農薬野菜を使った一品。実は〈傳〉が移転してくる前に、この場所で長年、人気を博したフレンチ〈ル・ゴロワ〉のスペシャリテ「ゴロワサラダ」へのオマージュだ。

「〈ル・ゴロワ〉が大好きで、ずっと通わせていただいていたんです。北海道にお店を移転されると聞いて、絶対にほかのひとに渡したくないと思い、場所を譲り受けました。実はこれが神保町から移転した最大の理由でもあります。多少、手は入れましたが、入り口のドアや大きなテーブル、もちろん床も〈ル・ゴロワ〉のものを残しています。「ゴロワサラダ」はお肉のパテやローストも入っていましたが、「畑の様子」はその名の通り、そのときの畑の状態を表す野菜だけを使ったサラダです」(長谷川シェフ)。

漢方にも使われる千葉産の蟻を厳選し、1週間、水だけを飲ませて体内を清らかにしてから、ゆでて冷凍したものを使う。「でも、知人のシェフには生きている蟻を出すこともあります。サラダの上をずっと歩きますよ(笑)。また、蟻が入っているというのではなく、むしろ、入っていないというクレームをいただくことがあります」(長谷川シェフ)。

にっこり笑顔のニンジンは酢漬け、土の風味が詰まったゴボウや紫大根はだしで煮て、ジャガイモはあげてから焼くなど、野菜の種類ごとにひとつひとつ調理したものをひと皿にまとめた「畑の様子」は、見た目はフレンチのようでも、確かに和食。「炊き合わせをイメージした」というのも頷ける。であると同時に花の上に添えられた蟻に衝撃を受ける一品でもある。

蟻は『世界のベスト・レストラン50』の常連、サンパウロ〈ドン〉のシェフ、アレックス・アータラがアマゾン産の蟻を料理に用いたことをきっかけに、コペンハーゲン〈ノーマ〉のシェフ、レネ・レゼピが、柑橘類の育たない北欧で酸味として利用し、センセーションを巻き起こした食材であり、これまで飽食を尽くしたフーディーズが恐る恐る「食べてみたい」食材の筆頭でもある。そんな蟻を一匹、ちょこんと添えてくれる。海外まで行かなくても、ここで食べられますよ、というサービス精神を感じずにはいられない。ちなみに蟻はカリッとした歯ごたえで、少々酸っぱい。

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最終更新:3/9(木) 19:00
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