ここから本文です

「禁煙化で小規模飲食店が潰れる」は大ウソだ

ダイヤモンド・オンライン 3/9(木) 6:00配信

 建物内禁煙としたら、小さな飲食店は本当に潰れるのか――。受動喫煙防止法案を巡って、反対派は小規模飲食店の存続危機を理由にしているが、世界の禁煙先進国を見ると、この攻め方はいかにもまずい手だということが分かる。(ノンフィクションライター 窪田順生)

● 渡邊美樹氏の発言では 禁煙化を食い止められない

 厚労省が「飲食店は原則禁煙」を打ち出している受動喫煙防止法案を巡って、反対派が「禁煙になったら小さな店が潰れる」というストーリーを強く打ち出し、攻勢をかけている。

 今月3日、「日本経済新聞」で「受動喫煙防止法案、外食産業に8400億円の打撃」という報道がなされた。ちなみに、この8400億円は、富士経済が居酒屋やレストラン1020店の責任者たちの「売上予測」を聞いて試算したもので、禁煙学会などは「フェイクニュース」だと厳しく批判をしている。

 ただ、そんな報道よりネットで注目を集めているのは、自民党・渡邊美樹氏の発言だ。5日に自身のブログで、「現実問題として10坪以下の飲食店で禁煙にしたら、間違いなくお店は潰れます」と断言したのである。

 ご存じのように、渡邊氏はワタミの創業者。「居酒屋経営を極めたプロ」という立場から、10坪以下の飲食店を規制の対象外にすべきだと提言していらっしゃるのだ。

 ただ、規制を緩めていくという目的を考えると、このメッセージはあまりよろしくない。世界的なタバコ規制の流れを見ると、「禁煙にしたら小さい店が潰れるぞ」という攻め方は、完全に「負けパターン」となっているからだ。

 しかも、もっと言ってしまうと、現実としては渡邊さんが主張されることと逆で、「小さな店を例外にした方が経営難に追い込んでしまう」という側面もあるのだ。

● 禁煙ファシズム先進国に見る 禁煙化で店は儲かる事実

 愛煙家や飲食業のみなさんは、「おお、この国ではなんとも恐ろしい禁煙ファシズムが台頭してきている」と天を仰いでおられることだろうが、実はこの程度の規制というのは、先進国ではもうすいぶん昔から行っている。

 もちろん、どこの国でも渡邊氏のようなことを主張する方はたくさんいたし、「バーでタバコが吸えなくなったら商売あがったりだ」という飲食業の方たちもたくさんいた。

 しかし、「飲食店でタバコが吸えなくなったことで、ロンドンには潰れるパブが続出しています!」とか「パリで禁煙に反対するカフェ経営者のデモ隊が警官隊と衝突しました!」なんて海外ニュースは出てこない。ほとんどの国で大きな社会混乱を引き起こすことなく「飲食店全面禁煙」へと移行しているのだ。

 たとえば、フランスあたりがわかりやすい。

 イスラム教を茶化してテロ攻撃を受けても、「表現の自由を守れ!」と、さらにイスラムを茶化した風刺画を持ってデモ行進をする人たちが多いことからもわかるように、かの国の人々は「権利」や「自由」を日本人以上に主張する。

 バー、レストラン、ナイトクラブなどを対象とする喫煙禁止令が2008年に敷かれる前に「フランスが世界に誇るカフェ文化が衰退していく」というような反対意見は出たが、「カフェやバー経営者を殺す気か!」なんてことを叫ぶ大規模な反対デモは起こらなかった。

 なぜかというと、準備期間の間に、「全面禁煙」と「店が潰れる」ということに、なんの因果関係もないということが、先に規制をやっている国や自国の調査で明らかになったからだ。

 《カフェやレストランではすでに、禁煙を実行しているところもあり、中には、顧客が増えた店舗もある。フランス政府は、イタリアがバーとレストランを禁煙にした結果、売り上げが20%増加したことを強調している》(2007/12/30 AFP通信)

1/4ページ

最終更新:3/9(木) 6:00

ダイヤモンド・オンライン

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊ダイヤモンド

ダイヤモンド社

17年4月1日号
発売日3月27日

定価710円(税込み)

特集 美術とおカネ 全解剖
アートの裏側全部見せます。
画廊儲けの裏側
芸大美大の末路

Yahoo!ニュースからのお知らせ