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カジノ誘致の本命、神奈川と大阪で決定か? 同時誘致の可能性も

3/10(金) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 昨年12月15日に成立(26日施行)された「IR推進法」。1月26日には、政府が「IR区域整備推進本部」の立ち上げに向けた準備室を内閣官房に設置した。

 今年の秋の臨時国会では「IR実施法」が審議され、成立する見込みが高い。いざ「実施法」が成立したら、ではどの地域にカジノを設置するのかの議論が始まり、概ね1年程度の期間で「場所」が決まるといわれている。

 カジノ誘致に積極的な地域では、「実施法」の成立を見越して水面下での誘致活動が積極的に行われている。勿論、カジノ設置による懸念事項はあるものの、それに増して観光客の劇的な増加や地域への税収アップを見込めるのが魅力。北海道、愛知県、和歌山県、長崎県、徳島県などがカジノ誘致に積極的であると言われているが、その中でも本命と目される神奈川県と大阪府での動きが活発だ。

 本稿では神奈川県と大阪府の活動に焦点をあて、カジノ誘致合戦の現状を分析する。

◆県知事の全面バックアップ宣言、横浜市長選がカギ

 2月17日に行われた、神奈川県議会本会議において黒岩知事は県内自治体が誘致を決定した場合は、県として全面的にバックアップする旨を明言。

 2月23日の横浜商工会議所の定例会見では上野孝会頭が「横浜全体が成功させたいという意欲を示すことが大事。いろんな経済団体と連携してオール横浜の体制づくりを進めていきたい」と、カジノ誘致に前のめりな姿勢を見せた。

 神奈川県横浜市が目指すのは、山下ふ頭における「ハーバーリゾート計画」。

 市はすでに、山下ふ頭の56の事業者との移転交渉を始めている。既に策定されている「横浜市中期4か年計画」(2014年~2017年)や「横浜市都心臨海部再生マスタープラン」などとの整合性を図りつつ、IR設置の実現度を高めていく予定だ。

 一点、憂慮されるのは、横浜市・林文子市長の発言から「カジノ誘致」のトーンがダウンしていること。

 市長は1月25日、「(IR誘致は)選択肢の一つ」としたものの、「積極的に踏み込むことが考えられない状況」と、「導入に非常に前向き」との従来の姿勢から一転、慎重な態度を示した。これは8月頃に予定される横浜市長選を意識した発言である可能性が高い。

 行政や商工会議所は積極姿勢ではあるが、地元住民の民意形成には至っていない現状で、「カジノ積極派」のレッテルは選挙の足枷になりかねない。仮に8月頃の市長選で再選を果たすようなら、横浜市も「カジノ誘致」へと一気に舵を切る。そうなれば、横浜市が誘致レースの先頭を走るだろう。夏場の都議選における「小池派」の議席数も気になるところであるが、横浜市長選もまた注目である。

◆大阪府が狙う、カジノと万博のダブル誘致

 神奈川県・横浜市よりも積極的な動きを見せるのが大阪府だ。

 大阪府は2月17日、2017年度当初予算案を公表し、IR関連の「統合型リゾート大阪立地推進」予算として、前年度の2136万円から2倍以上にもなる4770万円を計上した。(横浜市の予算は1000万円)また、大阪におけるIR施設の機能や交通アクセス、ギャンブル依存症等の課題への対応などを含んだ大阪IR構想(素案)の作成や、IRへの府民理解を促進するための説明会も実施している。

 大阪府は、何が何でも「夢洲」にカジノを誘致したい。大阪オリンピック誘致の負の遺産とも言われている「夢洲(ゆめしま)」に、2025年国際博覧会(万博)の誘致に合わせ、IRも同時に誘致する。まさに「ドリームランド計画」である。

 大阪市は、2月6日には「夢洲まちづくり構想(案)」を取りまとめており、8日、大阪府松井府知事は、2024年に予定するIR開業を1年前倒す方針についても言及した。

 神奈川県が「オール横浜」であるなら、大阪府は「オールジャパン」の体制である。

 2月7日には、2025年国際博覧会誘致委員会のトップに、経団連の榊原定征会長(東レ相談役最高顧問)の就任が決定、4月頃には、万博の、日本における候補地を閣議了解、来年末には、博覧会国際事務局(BIE)総会で開催地が決定するスケジュールとなっている。

 カジノと万博。その両方を誘致できれば、大阪は世の春を迎えるかも知れない。ちなみに、大阪府市は仮に万博が誘致出来なかったとしても、カジノ誘致は進める方針だ。

◆大事なポイントは地域住民との合意形成

 カジノ誘致に奔走する神奈川県・大阪府の両地域ではあるが、最終的な難関は地域住民との「合意形成」である。これは「IR推進法」が参議院で可決される際に、付記されたものであり、どういう形をもって「合意」とみなすのかは、「実施法」検討のなかで議論されることになる。

 カジノを誘致したい自治体にとって、実はこの問題が一番やっかいでもある。

 朝日新聞社と朝日放送(ABC)が、大阪府民を対象に電話による世論調査を実施した結果、大阪府と大阪市が目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致への「反対」が60%だった。その理由は「治安の悪化の懸念」と「依存症者の増加の懸念」。

 ギャンブル依存に関する報道が先行すれば、否が応にも地域住民の反発は強くなる。カジノを誘致したい自治体は、ギャンブル依存対策やIR設置のメリット、デメリットについて地域住民と真摯に向き合い、説明し、「合意」を取り付けなくてはならない。

 逆に市民の立場からすれば、メディアが煽る「負の側面」にのみ反応するのではなく、IRが本当に必要なのか、IRが地域にもたらす恩恵はどの程度なのか等を、しっかりと見定める必要があるだろう。

 政府は、当面カジノの設置は2~3か所の地域に留めるとの見解を示している。東の横浜、西の大阪。同時に誘致する可能性も決して低くはない。

<文・安達 夕/写真・とし>

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