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師匠から受け継ぐ“粋”をまとう――。横綱・稀勢の里、紫の着物を着る時。

Number Web 3/10(金) 17:01配信

 新横綱・稀勢の里のお披露目場所となる大相撲春場所が、浪速の地で始まる。

 心も新たに場所入りする稀勢の里が、その身にまとう着物は、彼の地元でもある茨城の伝統工芸「結城紬」のものになりそうだ。

 これは、今は亡き先代師匠、元横綱隆の里の「形見」の品でもある。隆の里が現役時代に後援者から贈られた、結城紬の羽織と着物。時価800万円とも言われた最高級の紬だったという。この時に余った反物が関係者によって30年以上も大切に保管されており、このたび晴れて、新横綱となった稀勢の里のために仕立てられるのだ。

派手な着物が増えている中、稀勢の里だけは違った。

 力士のユニフォームでもある着物やゆかたについて「信念」と「こだわり」を持つのが、稀勢の里だ。

 たとえば、大関時代の2014年夏に新調した、鼠色に白い龍の絵をあしらった「染め抜き」。裾の部分に大きく四股名を染めるのが一般的なのだが、稀勢の里はいう。

 「あえて四股名は入れず、家紋を大きく入れました。龍の絵も『猛々しくカッコよすぎないような龍で、やさしめに描いて下さい』と業者さんに頼んだんです。白い線だけで描いてもらったんですが、何度も直してもらって、ちょっとうるさく言い過ぎたかな(笑)」

 季節ごとの着物の着分け方や袴との色合わせ、着付け方法など、“粋”に着こなせない外国人関取の姿もしばしば見受ける。出世の早い大学相撲出身力士たちのなかには、着物や袴の畳み方もおぼつかない若者が多いとも聞く。

 年々、関取衆の着物の色が、オレンジやピンク、黄色などカラフルで大胆になっていくなか、稀勢の里だけは違った。

「上の者は若い力士たちに見せなきゃいけない」

 「思い切って明るい色の着物を着てみようと思っても、どうしても茶系や紺色系に走ってしまうんです。お洒落は我慢じゃないけれど、着たくないものも着なければいけないことってありますよね」

 すべてが番付順の角界では、三段目になると下駄からエナメル製の雪駄を履くことが許される。さらに十両以上の関取となると畳敷の雪駄を履ける。

 「これは滑りやすいんで、あまり履きたくないんです。でも、あえて畳の雪駄を履いた姿を、上の者は若い力士たちに見せなきゃいけないと思っています。自分も、三段目で初めて雪駄を履いた時、幕下で初めて博多帯を締め、外套を着られた時――本当に嬉しかったものです。今でも持っていますよ。

 暑い中でもわざわざ外套を着ている幕下の力士がいて『お、我慢してるな。でも、着られることが嬉しいんだろうな』と思えます。それでいいんですよ。若い衆が、『いつか僕も』と目標にするために」

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最終更新:3/10(金) 17:01

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