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政府や日銀の壮大な無駄遣いが「日本国の寿命」を縮めている

3/13(月) 16:00配信

マネーポストWEB

 新聞・雑誌を中心に「低成長論争」が盛んに交わされている。低成長容認論に対し、「成長をあきらめたら国際競争力を失う」などの反論が相次いでいるのだ。どちらの意見も与しないという経営コンサルタントの大前研一氏が、日本は低成長とどのようにつきあっていくべきかについて解説する。

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 問題は「成長のために」という名目で、景気対策や経済政策として未だに莫大な税金を注ぎ込んでいることだ。政府や日銀が「GDP600兆円」「2%成長を目指す」と言って打ち出している政策は、すべて壮大な無駄遣いだ。本来は買う必要のない国債やETF(上場投資信託)を日銀が大量に買いまくり、借金の山を築いて“国の寿命”を縮めているだけである。

 なぜ、そういうバカげたことが続いているのか? 政治家や官僚が成長期モデルのイメージから脱していないからである。

 その典型はプライマリーバランス(基礎的財政収支)の問題だ。内閣府の試算では2020年度のプライマリーバランスの赤字(国債費を除く)は昨年7月の同試算の5.5兆円から8.3兆円に拡大することが示され、2020年度に黒字化するという目標の達成が絶望的になっているにもかかわらず、石原伸晃経済再生担当相は「やるしかない」と言うだけである。

 しかし、現実には安倍政権は消費税増税を延期したり、毎年毎年、過去最大の予算を組んだりしているのだから、言っていることとやっていることが正反対なのだ。

 政府がゴリ押ししたTPP(環太平洋パートナーシップ)協定関連予算も、トランプ大統領がTPPから「永久に離脱する」という大統領令に署名して発効のメドが立たなくなったにもかかわらず、そのままになっている。安倍政権はTPP交渉が大筋合意した2015年10月以降、すでに合計1兆1906億円もの対策費を使い、来年度も「総合的なTPP関連政策大綱を実現するための予算」として1594億円を計上している。

 これについて政府は「農林水産業の体質強化といった、協定の発効を前提とせずに取り組むべき施策のためのものであり、発効いかんにかかわらず、実施していく必要がある」などと意味不明の説明をしているが、私には全く理解できない。要は農家などに対する選挙目当てのバラ撒きだが、TPPが発効する見込みがなくなった以上、その対策費は最優先で国債返済に使うべきだろう。

 今や農業は、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を使った最新技術によって、ほとんど人間が作業をしなくても生産性が上がるレベルに進化している。むしろ高齢化して生産性の低い農業の保護という「無駄な抵抗」をしなければ、早目にそちらに移行することができるのだ。しかし、そうした潮流に乗ることもなく、平均年齢が70歳を超えた稲作農家などに補助金を払って国の借金を増やし続けているわけだ。

 要するに、いま日本がやるべきなのは無駄な抵抗をやめて、削れる予算をどんどん削っていくことなのだ。とくに公務員や政治家の数は、AIやビッグデータなどを使えば大幅に削減できる。

「夢よ、もう一度」と高成長を目指して無駄なお金を垂れ流すのではなく、もはや日本は成長しえないという現実を受け入れて予算を可能な限り削減し、国債暴落などによって国の“底”が抜けないようにすることが先決なのだ。そうやって政府の無駄遣いをなくせば、この国は“軟着陸”することができ、ずっと住みよい国になるだろう。

※週刊ポスト2017年3月3日号

最終更新:3/13(月) 16:00
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