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『逃げ恥』原作者・海野つなみインタビュー【前編】「あんな台詞、石田ゆり子さんに言わせられません……!」

3/13(月) 12:00配信

otoCoto

昨年の社会現象にもなった“逃げ恥”こと、『逃げるは恥だが役に立つ』。ファン待望のコミック最終巻となる「第9巻」の発売を控えた原作者の漫画家・海野つなみさんに、作品が生まれた背景、大ヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)と原作との意外な関係性、そして最終巻にも掲載されている番外編などについて、じっくりとお話をお伺いしました。


■どうしてこの人たちが描かれないのか、ずっと不思議だったんです

──昨年は“逃げ恥”がコミック・ドラマ共に社会現象になるほど大ヒットしましたが、どんなお気持ちでしたか。

まさかここまでのヒットになるとはたぶん誰ひとりとして想像していなかったので、本当にビックリしました。ほとんど他人事のように、「ドラマってすごいな」という感じで、自分も関わってはいますけど、当事者というより、一歩距離を置いて、眺めていた感覚でしたね。

──まず作品が生まれたきっかけから、教えてください。

最初は、担当編集者の鎌倉(ひなみ)さんとの打ち合わせで「次の連載(内容)どうしましょう?」という話からはじまりました。その頃は、描きたい話は、ほぼ描いてしまった気がしていて、「どうしよう」と思っていて。でも、私は普段からいろんなことを妄想しているのですが「草食系の男子と付き合うにはどうしたらいいんだろう?」と考えていたことを思い出して、「契約結婚した男女が家族というより雇用関係として付き合っていくネタがあります」と話したことがはじまりでした。鎌倉さんはすぐに「それでいきましょう」と言ってくれたのですけど、まだ最後のオチまでは考えられていなくて。とりあえず「このシチュエーションで描き始めたら二人はどうなるんだろう?」という感じで、自分でも先がどうなるのか分からないまま、描き進めていきました。

──その段階で、契約結婚をするのが<草食系のIT男子>と<高学歴・職ナシの20代女子>という設定は決まっていたのですか?

その後ですね。「契約結婚」というテーマは少女マンガにありがちですが、「お金持ちの家ではなく“一般の家庭”が舞台だったらどうなるんだろう?」と想像しました。その思考実験を展開していけば、結婚や仕事というものがクリアになるのではないかと思って。

──それは狙い通りでしたね。みくりちゃんたちの契約結婚を見ていると「江戸時代には、結婚ってこれが普通だったのかもしれない」と思いましたし、そうすると<恋愛結婚>という物語が生む弊害も見えた気がしました。

「昔のお見合い結婚みたい」という感想も言われましたが、確かにそれはあると思います。今は恋愛結婚が当たり前という世の中でみんな育ってきているから、「ドラマチックな恋愛をしなければいけない」という雰囲気がどこかでありますよね。例えば、ずっと付き合ってきて、一緒にいてラクだし、一生添い遂げても全然かまわないと思える人がいるのに、「私は本当の恋を知っているのだろうか?」とか「燃えるような恋をしないまま一生を終えていいのだろうか」という事を考えたりしてしまうことってあると思うんです。でも、漫画を描いていて思うことは、<大恋愛=障害が多い恋>なんです。障害が多ければ多いほど、普段だったらあきらめてしまうところを、あきらめないように頑張るので盛り上がる。けれど実際自分の身に起こったら、障害が多い恋よりも穏やかな恋の方がいいですよね。

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最終更新:3/13(月) 12:00
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