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土地に付いた「宅地抵当権」、抵当権者不明でも抹消できる?

3/14(火) 17:00配信

オトナンサー

 法律の専門家である弁護士が、私たちの暮らしに身近な事象についてわかりやすく解説します。今回のテーマは「自分の土地に付いた宅地抵当権は抹消できるのか」、取材に応じてくれたのはアディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士です。

「数年前、地籍調査をしたところ自分の土地に宅地抵当権が付いていることがわかりました。60年以上前に借金の返済は終わっているはずです。相手が個人だったので、調べてもらったのですが、抵当権者が生きているかどうか、また相続人がいるかなどはわかりませんでした。すぐに土地を売却する予定などはありませんが、自分の代でこの問題を解決したいと考えています。相手が見つからない場合、解決する方法はないのでしょうか。また、抵当権が付いたままでも土地を売却できるのでしょうか」

「住宅用の土地」に対する抵当権

Q.そもそも宅地抵当権とは何でしょうか。

岩沙さん「抵当権とは、通常は不動産に対して、担保権者に不動産を引き渡さないまま、その不動産の有する経済的な価値を、ある債務に対する担保とするものです。債務が返済されない場合に、抵当権者は抵当権を実行し、不動産を競売にかけ、競売代金から優先的に自分の債権の回収にあてることができます。宅地抵当権とは、住宅用の土地に対する抵当権ということになります」

Q.抵当権の付いた土地を売却できますか。

岩沙さん「売却できます。しかし、抵当権は売却によってもなくならず、売却による権利移転に伴ってついていきます(=随伴性)。抵当権の対象となっている債務が返済できなくなった場合には、抵当権者が優先的に自己の債権の回収にあててしまうことから、抵当権の付いた土地は、付いていない土地と比べて相当低い価値しかなく(土地の価値が債権額を下回ってしまう場合もある)、そもそも売れないことや、新たに抵当権を設定してローンを組めないことも多いのです。抵当権はできる限り抹消しておきましょう」

所有者と抵当権者が共同申請する

Q.どのような手続きで抹消できるのですか。

岩沙さん「抵当権の抹消を行うためには、原則として、登記権利者(土地の所有者)と、登記義務者(抵当権者)が共同して申請しなければなりません(不動産登記法60条)。今回のように、古い時期の登記である場合、抵当権者が既に亡くなっており、その相続人全員が登記義務者ということもあり得ます。相続人が全くわからない場合は、共同申請を行うことはできません」

Q.抵当権者や相続人が所在不明の場合はどうするのですか。

岩沙さん「抵当権者や相続人が所在不明であると証明することを前提として、公示催告という手続きを用いる方法もあります。1つ目は、抵当権が担保していた債務が消滅していたことを示す書類を登記所に提出することで、単独で抹消申請できます(同法70条3項前段)。しかし、60年以上前に完済した場合、完済証明書などの書類が残っている可能性は低く、この方法を使える可能性は低いでしょう」

岩沙さん「2つ目は除権決定を得ることで、単独で抵当権の抹消を申請できます(同法70条2項)。しかし、除権決定を得るには、抵当権が消滅していることを示す資料の提出が求められるため、結局完済の事実を示す資料を提出する必要があります。したがって、この手続きを使うメリットはほとんどありません」

岩沙さん「3つ目は、抵当権が担保していた債務の弁済期から20年が経過していることを示した上で、その借入額と利息、遅延損害金のすべてを供託する方法です(同法70条3項後段)。この方法は、登記などから債務の額がわかり、かつ遅延損害金まで含めた金額が支払える範囲であれば有効な手段といえます。しかし、そもそも債務の額がわからず、供託すべき金額が特定できない場合や、遅延損害金を含めた総額が高額になってしまう場合は使えないデメリットがあります」

Q.今回のケースに関してまとめをお願いします。

岩沙さん「今回のように抵当権者の相続人の所在が判明しなかった場合、とりあえず債務の消滅に関する証拠を探す必要があります。もっとも、現実的にはそのようなものが発見される可能性は低いため、公示催告と供託の方法を検討することになるでしょう」

オトナンサー編集部

最終更新:3/14(火) 17:00
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