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黒字なのに突然、倒産!? スカイマーク、東芝、シャープ…粉飾より危険な「巨額損失リスク」とは?

3/14(火) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 原子力事業で7000億円以上もの減損損失を計上し、債務超過に陥った東芝。将来の収益の柱になるはずだった虎の子の半導体事業も完全売却すると見られており、いよいよかつての超名門企業は解体に向かっている。

⇒【資料】引当金計上/資産の評価損による損失発生

 同社はもともと、2015年にPC事業での押し込み販売など、総額2000億円以上に上ると見られる粉飾決算が明らかになったことで赤字転落。さまざまな事業を売却してなんとか2016年度の黒字化が見えてきたところに、巨額の減損損失でトドメを刺されてしまった形だ。注目すべきは今回の減損損失は粉飾の類ではなく、ある意味正当な手続きを経て、潜在的なリスクが顕在化した結果生じたものだということである。

 このように粉飾でなくとも多額の損失が発生して会社の経営が傾くケースは珍しくない。昨年の今頃、世間を騒がせていたシャープについても、鴻海との買収交渉に入った後で「偶発債務」が数千億円発生するかもしれないということが問題となった。ある種、粉飾よりも危険なこうしたリスクについて解説していきたい。

 まずは掛売りの代金や貸したお金が回収できなくなったことによって引当金を計上するケースと、保有している資産の価値がなんらかの理由で毀損されて評価損を計上するケースについて見ていこう。

 この場合、引当金や減損損失は「損益計算書(PL)」上の損失として計上され、その額の分だけ資産が減ることになる。当然のことながら、純利益の額を上回る額の損失が出た場合、企業は赤字転落する。また、引当金や減損損失によって減った資産の総額が負債を下回った場合は「債務超過」と呼ばれる状態になる。これは資産を全部売り払ったとしてもこれまでの負債を返せなくなることを指し、こうなった会社は倒産寸前の状態にあると言える。すぐにこの状態を抜け出すためには出資を募るしかない。そのためシャープは鴻海に身売りし、東芝は半導体事業を売ろうとしているのだ。

 とはいえ、引当金や減損損失はあくまで「会計上の損失」だ。これらを計上することによって新たにキャッシュが社外に流出することはない。

 貸していたり、掛金にしていて将来的に回収できると思っていたキャッシュが回収できなくなったり、将来キャッシュを生むと見込んで投資して得た固定資産や被買収企業が、想定していたほどのキャッシュを生めなくなったと「認識」したということに過ぎない。

 危険な状態ではあるのだが、企業の手元にキャッシュが残っている限りは、即座に倒産するということはない。東芝にしてもどの事業をどれぐらい売るか、という経営判断をする時間がギリギリ残されていたわけだ。

 一方で、取引先との契約が履行できなくなり違約金を支払う必要が出てきたり、敗訴によって賠償金の支払いが命じられたり、急なリストラによって年金債務が膨らんだりといった「潜在的債務」が顕在化するのはより危険だ。

 これらの債務は一見、先ほどの引当金や減損損失の計上と同じように費用の増大をもたらす。当期純利益の額を上回れば赤字転落、資産ー債務の額が負債を下回れば債務超過というのも同じだ。

 ただし、引当金や減損損失があくまで「会計上の損失」であるのに対して、賠償金や違約金は「これからキャッシュの支払いが求められる損失」である。そのため、会社に支払う分だけのキャッシュが残っていない場合は一気に経営破綻してしまう。黒字だったのに、取引先のエアバス社との間で多額の違約金が発生し、経営破綻したスカイマークの例は記憶に新しい。

 引当金や減損損失、そして潜在的債務の発生はこうして非常にリスキーなものなので、有価証券報告書上の「注記」事項に必ずその可能性について記載することになっており、怠った場合は粉飾となる。例えば東芝と並んで原子力事業に力を入れている三菱重工も巨額の訴訟を起こされ、8000億円近くの損害賠償を請求されている。

 この件について、三菱重工は「平成25年10月16日、当社及びMitsubishi Nuclear Energy Systems, Inc.は米国Southern California Edison Company及び米国Edison Material Supply LLC(後に米国San Diego Gas & Electric Company及び米国City of Riversideも参加)から、米国サンオノフレ原子力発電所向け取替用蒸気発生器供給契約について、当社らに契約上 の義務違反があったなどとして、損害賠償を求める仲裁を申し立てられた。 平成27年10月23日現在、本件仲裁における請求額は、75.7億米ドルとなっている」と、有価証券報告書に明記している。こういったリスクが顕在化しないか注意が必要だ。

 ここまでは損失の計上に関するリスクについて見てきたが、現在の計上されている純利益が会社の実態以上に膨らんでいて、継続性がないというリスクについても確認しておきたい。本業で稼いだ利益ではなく、自社の保有する土地や子会社の株式を売った特別利益や、企業を安く買い叩けたことによる「負ののれん発生益」に頼っているケースがこれにあたる。

 下の図はある企業の半期決算報告書だ。

 これを見ると、営業利益が約64億円に対して、「その他の収益」というのが47億円近くと7割以上を占めている。「その他の収益」の正体は、主に前述した「負ののれん発生益」である。

 赤字を垂れ流していて倒産の懸念もある企業ばかりを安値で買い漁っていることで、こうした利益を計上できているが、そうしたやり方に継続性があるのかには疑問符がつく。他には、土地や自社の事業の一部門、子会社の売却によって利益をかさ上げしている場合もあまり継続的に使える手ではないので、差し引いて考える必要がある。

 このように一見の営業利益や純利益の数値に惑わされるのではなく、その「利益の質」にまで目を向けると危ない企業の兆候を見抜くことができる。東芝などさまざまなニュースな企業の実例とともに、怪しい企業を見分け方を解説、”次の東芝”を探っていく拙著『東大式 スゴい[決算書の読み方]』もぜひ参考にしてほしい。

<文/大熊将八>

おおくましょうはち○国内外の企業分析を行い、「週刊文春」「現代ビジネス」「東洋経済オンライン」「ハーバービジネス・オンライン」」などに寄稿。東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。3月12日には新刊『東大式 スゴい[決算書の読み方]』を発売予定。twitterアカウントは@showyeahok

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最終更新:3/14(火) 17:34
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