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「東芝不正会計」はなぜ起きたのか? メディアやアナリストが企業不祥事を見抜けない理由

3/15(水) 16:20配信

HARBOR BUSINESS Online

 次の“東芝”はどこだ?我々ビジネスパーソンは日々、さまざまなニュースを目にする。そのなかには粉飾決算、企業不祥事などショッキングなものも多く、明日は我が社か、我が身かと不安に思う人も少なくないだろう。

 3月12日に発売された『東大式 スゴイ[決算書の読み方]』では、現役東大生の著者、大熊将八氏がネットに公開されている有価証券報告書を読むだけでわかる大企業の”意外な一面”や、自分の会社が将来どうなるのか分析するためのノウハウを披露。ビジネスパーソンはもちろん、就活生にも有益な一冊だ。

 今回はその大反響の一冊から冒頭の「はじめに」の部分を、一部加筆のうえで特別に公開。今、なぜ決算書を読む力が求められるのか? 著者の鋭い視点でその理由を端的に説明しています。

◆過去最多の企業不祥事

 企業不祥事および企業倫理が問題となる事例が後を断たない。2016年はシャープの3500億円にものぼる偶発債務の発覚に始まり、三菱自動車やスズキ自動車の燃費不正、ピーシー・デポによる高齢者への高額請求問題、電通の広告費水増し請求と従業員過労死問題が紛糾した。

 DeNAの買収子会社による著作権侵害が野放しにされたメディア運営も大いに話題になったし、昨年末から、2015年に不適切会計で問題になった東芝が、突然買収子会社に対する巨額の減損損失を計上する恐れが発覚して株主を震撼させた。その総額は7000億円を超え、会社が解体する危機に瀕している。

 政府は2015年6月から成長戦略の柱として「コーポレート・ガバナンスの強化」を掲げ、適切な企業統治が行われることが企業の成長ひいては国家の成長に貢献するというビジョンを打ち出したが、まだまだ、実態が追いついておらず、日本企業は過渡期にあると言える。数字で見ても、企業による不適切な会計・経理の開示件数が過去最多(東京商工リサーチ調べ)となっている。 軽微な粉飾もあるが、会社を倒産させるものも多々ある。

 自分が勤めている会社、これから勤めようという会社でこのような事態が起きてしまうと、大惨事だ。経営破綻してしまえば、それまでどんなに優良企業と呼ばれていたところでも社員のクビを切るし、そうなったらまともな退職金も与えられない。就職ランキングで必ず上位にあったJALの事例を見ても明らかだ。

◆メディアやアナリストが機能しない理由

 ところで、上にあげた不祥事は、なぜもっと早く明るみに出て、報じられることがなかったのだろうか?それは、企業について取材・分析して世の中に伝える役割を担っている経済メディアや、顧客向けに企業情報を配信していく証券会社がそれぞれに欠陥を抱えているためである。

 まず、経済メディアは、企業に対して独立的な立場で論じなければいけないのに企業からの広告収入に経営が支えられている、という大きな矛盾を孕んでいる。「広告と編集の分離」という原則があるものの、大手経済新聞が東芝や電通の不祥事を余り積極的に報じられなかった例を見るにつけ、それが少なくとも部分的には建前であることが伺い知れる。また、大手雑誌・新聞メディア自体が業界の縮小というトレンドに飲み込まれつつある。それによって、コストがかかる、深く1つの事件を掘り下げる調査報道よりも低コストな記事を大量生産する方向に少しずつシフトしている。

 昨年はDeNAやサイバーエージェントなどのIT企業が運営する「キュレーションメディア」が、他の書き手のコンテンツをパクることを推奨して安価なライターに記事を大量生産させていたことが問題になったが、記事の粗製乱造は多かれ少なかれ伝統的メディアでも起きつつあることだ。私の友人の元経済記者は、1週間に何本記事を書けという「ノルマ」を課せられ、ひねり出すように記事を執筆していたそうだ。これでは、質が高い、深い追及はできない。

 結果、企業広報の意見をほぼそのまま載せてしまうようなケースが頻発する。「Fintech」や「AI」などバズワードを多様してやたら壮大なビジョンを語る社長を「イノベーター」だと持ち上げて無批判にインタビュー記事を載せるところもある。さらに、そもそもメディアはその特性上、「何があったか」「何が起きているか」という過去と現在のことは語れても、未来を見通すことはほとんどない。

 連日、「東芝はなぜこんなことになったのか」という発信が様々なメディアからなされるが、読者が本当に知りたいのは「次の東芝は存在するのか、存在するとしたら、どこがそんなことになってしまうのか」ではないだろうか?

 1社あたりに何ヶ月もかけて企業の現在価値や将来性を分析して発信する証券会社のアナリストレポートにも「歪み」が存在する。全アナリストレポートのうち8~9割が「買い」もしくは「中立」の推奨なのだ。それも当然で、証券会社の仕事は株をセールスすることだからだ。アナリストレポートはある種の販促資料である。

 また、企業について厳しい意見を書けば、該当企業からアナリストが出入り禁止にされるリスクもある。こうして、仮にアナリストが企業の危険な兆候を分析によって掴んでいても、それが世に出回らないことが多々あるのだ。また、証券会社もメディア同様、「短期志向」であるという致命的な弱点を抱えている。アナリストは半年やせいぜい1年後の未来しか予測しない。

「来年のカメラの出荷台数はいくらか」のようなことばかり調べるクリエイティビティがない仕事だ、と証券会社のアナリストをやめた筆者の知人もいる。企業経営はもっと長期目線に立って、5年、10年かけてどのように業界が変わっていくか、自社を成長させていくかという観点から論じるべきだが、一般消費者にまで降りてくる情報の中にそういったものはほとんどない。

◆企業は「利益」と「期待値」を膨らませる

 一方、企業側はどうか。上場企業は常に株式市場からのプレッシャーに晒されていて必死だ。株価は「利益×期待値」でつく。株価を上げるためには、高い利益を作り、かつそれを成長させ続けるか、企業に対する期待値を高める必要がある。それが、まっとうに事業によってお金を稼ぎ、その分を新たな事業に投資して成長させていくというサイクルの中で実現されればいいが、必ずしもうまくいくときばかりではない。

 その時に企業はどうするのか。実は「利益」も「期待値」も、実態を超えて作り出せるということに気づくのだ。将来の利益を先取りして計上したり、逆に損失をなかなか認識しない。さらにはリスクを十分に見積もらず、引き当てなかったり、買収を繰り返して会社の規模を膨らませたりすることも、有価証券報告書に記載する「純利益」を大きく、伸びているように見せることはできるのだ。

「期待値」もまたコントロール可能だ。壮大な事業構想を語り、大型の買収をほのめかしたり、従来からあったインターネットサービスを「Fintech」や「AI」と言い換えるなど見せ方を変えたり、立派なオフィスビルを構えることで、投資家に「この会社はもっと大きくなるのだ」という幻想を見せられればよいのだ。

 投資銀行をはじめとする外部のアドバイザリーは、成長に苦心する企業にこれらの知恵を授ける。そうして、企業はどんどん膨らんでいく。しかし、実態が追いつかなければ、やがて先送りしていた損失と向き合う必要が出てきたり、立派な名前の事業や買収子会社がキャッシュを生まないことがバレれば、期待は失望に変わる。先延ばしにすればするほど、落差は大きい。会社が傾き、結局は社員のクビを切らざるを得なくなる、というところは決して珍しくない。

◆学生レベルでも、正しく分析すれば必ず、重要な事実がわかる

 我々の多くは消費者として、あるいは従業員として日々、様々な企業と関わることなしには生きていけない。しかし、企業は無理して自身を実態より大きく見せるインティブがあるのに、新聞やアナリストレポートは機能不全で、企業についての肝心な情報は世にきちんと流通していない。これほど恐ろしいことはない。

 そんな状況の下、社会で生き残っていくには企業分析力を身につける必要がある。いかにも難しそうだし、かけられる時間なんてないと思う人も多いかもしれないが、心配は不要だ。実は決算書を読むポイントを幾つか押さえておくだけで、企業の意外な実態はすぐ、見つけ出せるのだ。例えば「資産の回転期間」や「営業キャッシュフロー」という概念を知っているだけで、東芝やライブドアの不正の兆候は発見可能だ。現に、ただの大学生である私にも、できる。

 申し遅れたが、私は東京大学経済学部の大熊将八という。もともと様々な大学・学年の学生が集まって作ったサークル「瀧本哲史ゼミ」の初期メンバーとして幾つもの企業について分析し、発表していた。当時私が所属していたゼミでは、所属する学生が決算書や各種統計データを読み込み、企業の広報担当に熱心に電話し、店舗に何度も実地調査を行うという分析を時には100時間かけることで、企業の意外な実態を暴き出していた。

 その中にはなんと、ゼミでの発表から約1年後に粉飾決算疑惑が報じられた企業もあった。公認会計士や大手証券会社のアナリストでもない、一学生でも、目のつけどころを間違えずに公開情報を読みとければ、怪しい企業を見抜くことができたのだ。

 拙著『東大式 スゴい[決算書の読み方]』では、東芝、電通、三菱自動車、シャープなど最近話題になったさまざまな企業の実例を挙げて、そのエッセンスをつぶさに解説している。現代社会をサバイバルするための必携書として、ぜひ読んでほしい。

<文/大熊将八>

おおくましょうはち○国内外の企業分析を行い、「週刊文春」「現代ビジネス」「東洋経済オンライン」「ハーバービジネス・オンライン」」などに寄稿。東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。新刊『東大式 スゴい[決算書の読み方]』も発売中。twitterアカウントは@showyeahok

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最終更新:3/15(水) 16:52
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