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「仏版トランプ」ルペンとトランプ大統領の決定的な違いは“カネ”!?

3/19(日) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 4~5月にかけて実際されるフランス大統領選が異様な熱気を帯びている。その台風の目となっているのは、ご存じ、極右政党「国民戦線(FN)」の党首であるマリーヌ・ルペン氏だ。

 3月上旬に行われた世論調査で27%の支持率を獲得して、首位を快走。「仏版トランプ」とも称されるほど、トランプ大統領とそっくりの政策を掲げて人気を博しているのだ。在英ジャーナリストの木村正人氏が話す。

「ルペン氏が掲げる反EUとユーロ圏からの離脱は、トランプ氏の反グローバリズムと一緒。トランプ氏の『アメリカ・ファースト』と同様、フランス第一の自国民優先政策も打ち出しています。『イスラム教国からの入国禁止』とまでは言っていませんが、反イスラム・反移民というスタンスも、親ロシアという点でも一致している。大手金融資本を中心としたエスタブリッシュメントを批判し、メディアを敵視しているところもトランプ氏とそっくり。弱者救済を主張しているため、自然と支持層も共通しています。

 アメリカ大統領選では経済成長から取り残された中西部の“ラストベルト”に暮らす低中所得層の白人労働者がトランプ氏を熱烈に支持したと言われていますが、フランスでも北東部のアヤンジュがそのラストベルトと言われているのです。かつては製鉄の町として栄えたアヤンジュは、国際競争力の低下に伴い衰退の一途をたどり、過去10年で失業者が75%も増えました。職を失った白人労働者階級は自分たちの職を奪っていったEUと移民に不満を募らせ、国民戦線とルペン氏を信奉するようになっていったのです。

 アヤンジュの町長も2010年に国民戦線に加わり、2014年の町長選で当選した人物。その政策は露骨に白人労働者階級を優先しています。移民・難民を支援する市民団体に立ち退きを迫り、事務所の電気を止めたりもしているんです。ルペン氏自身は大統領選の本格化を機に反イスラム、反移民のトーンを抑えてきていますが、局地的にはトランプ氏以上に露骨な排外主義が顕在化しているのです」

 ルペン氏も、トランプ氏同様、問題行動が物議を醸すこともしばしば。2015年にはイスラム教徒が路上で礼拝する様子をナチスによるフランス占領に例えて大バッシングを浴びたほか、イスラム国(IS)による処刑写真をツイート。「暴力的なイメージの流布」に当たるとしてフランス当局の捜査対象となり、今年3月2日には欧州連合(EU)議会がルペン氏の免責特権を停止する決議を採択している。

◆浮上するスキャンダルもそっくり

 また、浮上するスキャンダルまでどこか似通っている。トランプ氏は大統領選の最中に無届の慈善団体「トランプ財団」の寄付金を流用していた疑惑が報じられたが、ルペン氏には欧州議会の資金を内政に関する業務の支払いに流用した疑惑も浮上。国民戦線本部は家宅捜索を受け、ルペン氏の個人秘書は欧州議会から4000万円をだまし取った疑いで訴追されている。

「米大統領選ではロシアがヒラリー陣営にサイバー攻撃を仕掛けたことが明らかになっていますが、フランスではルペン氏に次いで、2番手につけている中道路線の独立系候補であるエマニュエル・マクロン元経済相に対してロシアが執拗なサイバー攻撃を仕掛けているとされています。フランス大統領選は1回目の投票で過半数を獲得する候補がいなければ、上位2人による決選投票に持ち込まれます。そのため、決選投票では中道路線で支持のすそ野を広げているマクロン氏のほうに票が集まる可能性が濃厚。EU支持派でメルケル独首相との距離を縮めているマクロン氏が大統領となれば、ロシアに対する経済制裁は解除されないでしょう。だから、ロシアはサイバー攻撃や『マクロンは同性愛者と不倫している』といったフェイクニュースを流したりして、ルペン氏を後方支援しているのです。現在、『米大統領選の二の舞はゴメンだ』とフランス当局はサイバー攻撃の対応に追われています」(木村氏)

 今回のフランス大統領選では当初、中道右派・共和党のフランスワ・フィヨン元首相が最有力候補と目されていた。だが、フィヨン氏には秘書と偽り、妻や子供に計1億2000万円もの給与を支払っていた疑惑が浮上。釈明に追われる結果となり、大幅に支持率を落とした経緯がある。早くもスキャンダル合戦の様相を呈しているのだが、「ルペン氏に関しては、欧州議会の資金流用疑惑が浮上しても支持率が下がらない。女性スキャンダルなどが報じられても、根強い人気を誇ったトランプ氏と、その点でも共通する」(木村氏)とのこと。

 ただし、ルペン氏とトランプ氏には決定的な違いもあるという。

◆ルペンのアキレス腱

「細かく言えば、トランプ氏は妊娠中絶に反対で、ルペン氏は容認。『同性婚は違憲』と主張していたトランプ氏に対して、ルペン氏は同性愛についても容認派という違いがあります。しかし、決定的に異なるのは、資金力です。不動産王のトランプ氏に対して、ルペン氏にはお金がない。父であるジャン=マリー・ルペン氏が国民戦線の党首を務めていた時代に、反国民戦線運動が巻き起こって以来、フランス国内の銀行が資金を貸してくれなくなったのです。

 きっかけはジャン=マリー・ルペン氏の、『ナチスのユダヤ人虐殺は第二次世界大戦における些末事』といった悪魔的発言です。2002年にはシラク大統領(当時)とともに大統領選で決選投票にまで進みはしましたが、反ユダヤ主義と人種差別主義のイメージから、その後、猛烈なバッシングを受けることになりました。それで、党の資金はどんどん枯渇していったのです。娘のルペン氏は“脱・悪魔化”を掲げて、負のイメージの払しょくに努めてきましたが、国内の金融機関はいまだ総スカンの状態。そのため、国民戦線はロシアの金融機関から多額の借金をしている状況なのです」

 過去の英ガーディアン紙の報道によれば、国民戦線はKGB(旧ソ連国家保安委員会)出身のロシア人が所有するキプロスの会社から200万ユーロ(約2.5億円)、さらにモスクワのファースト・チェコ・ロシアン銀行(FCRB)から940万ユーロ(約11.5億円)を借り入れていたという。ところが、FCRBは昨年7月にロシア当局から銀行免許の停止措置を受けることに。貴重な資金源を失われてしまったがゆえに、ルペン氏は欧州議会の資金を流用するに至ったのでは?とも言われているのだ。

◆どちらが勝っても大きく変わる

 さらに、大統領選そのものを比較すると、フランスの特殊性が浮かび上がってくる。

「米大統領選はどこまで行っても共和党vs民主党という既存政党の戦いでしたが、今回のフランス大統領選は今やルペン氏の国民戦線vs無所属のマクロン氏という構図。共和党のサルコジ政権、社会党のオランド政権という、二大政党の政権下で一向に生活がよくならなかったため、国民は既存政党に愛想を尽かしてしまったのです。今後、フィヨン氏(共和党)が巻き返してくる可能性もありますが、フランス政治の主流は、完全に“非主流派”に移行している。ルペン氏、マクロン氏、どちらが大統領選を勝ち抜いたとしても、フランスの政治は大きく転換するわけです」

 なお、フランス・パリで生まれ育った20代男性によると、「フランスの同級生はSNS上でしきりに、『みんなで投票に行こう』と呼びかけている」とか。背景にあるのは、イギリスのEU離脱。国民投票で離脱派が過半数を占めた一因として、若者の投票率の低さが指摘されたため、「フランスは同じ轍を踏むまい」と行動する若者が増えているという。当然、目的は“ルペン大統領”の誕生を阻止すること。その反ルペン運動の延長線にあるのか、「オバマをフランス大統領にしよう」と呼びかけているグループも出てきているとか。

 スキャンダル続出なうえに、レースをけん引する候補者はいずれも非主流派。ロシアも介入してきて、まさかのアメリカ前大統領の参戦? EU離脱にも繋がりかねない重要な選挙である点を差し引いても、フランス大統領選がさらに熱を帯びることは間違いない。

<取材・文/HBO取材班 photo by Rémi Noyon via flickr(CC BY 2.0)>

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最終更新:3/19(日) 12:49
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