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国がiDeCoやNISAに力を入れるホントの狙い

3/20(月) 21:46配信

会社四季報オンライン

 1月に始動した個人型確定拠出年金(DC)、「iDeCo」のテレビコマーシャルがついに登場したそうな……。筆者はまだ見ていないが、厚生労働省もかなりの力の入れようだ。一方、金融庁は少額投資非課税制度(NISA)存続に一所懸命で、2018年からは積立NISAが誕生する。

 この手の非課税制度を導入するのは、とても大変なことと察する。iDeCoは所得控除に加え、長い運用期間中に発生する運用益が非課税で、受け取り時には各種控除の対象になる。

 NISAにはiDeCoほどの税制メリットがないが、運用益に対しては非課税だ。18年からスタートする予定の積立NISAは、20年間の非課税期間が認められるという。毎年の積立限度額は40万円なので、合計で800万円の投資元本から生じる運用益が非課税対象だ。

 iDeCoだと最も拠出限度額の高い自営業者(第1号被保険者)の場合、毎月の同限度額が6万8000円。30歳から60歳までの30年間、毎月6万8000円ずつ積み立てれば、拠出金の総額は2448万円に膨らむ。

 これだけの非課税枠を認めるのは、国にとって大盤振る舞いのはずだ。なにしろ巨額の財政赤字を抱えている日本だけに、政府は少しでも多くの税金を国民から徴収したいと考えているだろう。

 にもかかわらず、このところNISAやiDeCoなどを通じて投資の運用収益から税金を取らない制度を前面に押し出している背景にはいったい何があるのか。いうまでもなく、日本の公的年金を始めとする社会保障制度が持たなくなってきたからだろう。

■ 1.3人で高齢者1人を支える時代が38年後到来

 下のグラフは今後、日本の社会保障制度がいかに厳しい状況に直面するのかを示す数字の推移だ。65歳以上の高齢者1人を、何人の生産年齢人口で支えることになるかを示す。生産年齢人口とは15歳以上65歳未満の人々のことで、「生産活動に従事する中核となる年齢」だ。

 取得可能なデータが5年ごとだったため、少し数字が荒くなってしまった点はご了承いただきたい。それを踏まえたうえで生産年齢人口の推移を見ると、最も高かったのが1935年。当時の数字は12.55である。12.55人の生産年齢人口で、高齢者1人を支えているという意味だ。グラフを見てもわかるように、この数字は年々低下。1945年に大きく低下したのは、戦争の影響とみられる。

 戦後の回復は一時的で、日本が高度経済成長に入るのとともにこの数字は加速度的に低下した。子供の数が減る一方、医療の発達で平均寿命は飛躍的に伸びた。その結果、少子高齢社会が深刻な状態になり、現在にいたっている。

 2020年には東京五輪・パラリンピックという国を挙げての一大イベントを控えているが、その時の数字は推計値によると2.03だ。ほぼ2人の生産年齢人口で、1人の高齢者を支えることになる。さらに、38年後の2055年には1.30まで低下。1人とちょっとの生産年齢人口で、高齢者1人を支える社会が到来するのだ。

 「38年後ってまだ先のこと」と思っている人も多いだろう。ストレートで大学に入学し、留年せずに大学を卒業して今春めでたく就職する人たちが、定年を迎える時期だ。しかし、時の流れは残酷で、そんなに長い時間があると思っていたのに、実際にその年数を歩むと、実はあっという間だったことに気づく。油断をしていると、あっという間に定年目前になり、しかもそのとき、自分の老後を支えてくれる若い人たちがおそろしいほど減っていることに愕然とするはずだ。

 これだけ生産年齢人口が減ると、公的年金制度は今以上に厳しい状況に直面するのは必至だ。公的年金を満額受給できるのは現在、65歳以降だが、2055年にはこれが70歳、あるいは75歳になっているかもしれない。内閣府は昨年末、高齢者の定義を「70歳以上」に引き上げることを提案。日本老年学会も今年に入り、高齢者の定義を「75歳以上」にすることを提案した。これらもうがった見方をすれば、公的年金の支給開始年齢引き上げへの布石とも見て取れる。

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